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落葉の果て  作者: TIO2
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7.正月

 天文十七年(1548年)一月一日。俗にいう正月である。

 織田家各将は古渡城に集まっていた。年賀の宴を行うからである。

 信秀に近い所から一門衆、平手政秀、林光貞、青山新七等の宿老、下与力衆という順で座っており、諸将には酒と食事が振る舞われていた。


「しょっぱい……」


 正月だからか、出てきた縁起物は基本的に味付けが塩辛く、普段の食事に比べてご飯が多く必要だった。


「ここで一献どうですかな? 坊丸殿?」


 掻き込むように食べていると、叔父御(織田信光)が酒を勧めてきた。


「まだ元服をしていないので……」


 そう言うと、驚いた面持ちで徳利を引っ込めて、


「前に見た時は小さかったのですがな。ここまで大きくなっておられると既に元服済みかと。これは失敬」


 お酒に酔いまくって顔は真っ赤だし、僕が今年元服するということがすっぽ抜けているのじゃないかこの人。

 そう思っていると、後ろから「坊丸。こっち来い」と声がかけられた。


「坊丸。今年お前は元服してもらう。末森の方に築城中の城をお前に任せるが、何故儂が末森に築城したかわかるか?」


 優しげな声色で尋ねてきたのは我らが親父殿、織田信秀だ。側女に酒を注がれつつ、機嫌は悪くないようだ。僕が織田信行になってから話すのはこれが初めてだ。

 座学で教えてもらったことを思い出しつつ、


「松平家と今川家の抑えとして築城したと思います」


「ふむ。座学はちゃんとやっているようだな。では、借り物の言葉でなく自分の意見を述べよ。何故、末森なのだ?」


 親父殿の、睨むような眼差しと言葉に気圧された。頭のなかに“尾張の虎”という言葉が浮かぶが、それに負けぬように親父殿の目を見つめる。


「地形的にちょうどいい場所だから、でしょうか。仮に今は織田家の領する安祥城が奪われたとしたら最前線になるのは下社城、末森城、守山城……。援軍を出すにもこの位置に城があれば、織田家としては都合がよく、松平、今川からしてみれば目障りだからでしょうか?」


 頭のなかに城の地図を浮かべながら答えた。親父殿は僕の答えに満足したのかは分からないが、重ねて問いを発した。


「この前の鷹狩では兎を仕留めたらしいな。どういうことを思った?」


 鷹狩という名前の信長にこきを使われる遊びだ。最近は相撲や石合戦に加え、寒いのに水練にも付き合わされている。鷹狩はたまにしかやらない。


「兎といえども殺生するには頭を使わなければならない、と思いました」


「ふむ。どのようにだ?」


「どのようにすれば獲物を狩れるのか、自分の考えた方策が本当にうまくいくのか、と考えることが多かったです。兄者がそのような時機を見分ける術が高いですが、僕はまだまだ」


 親父殿は答えに満足したのか、「戻れ」と一言言って他の将と話し始めた。

 急な問に驚いたが、本当に元服してもよいのかどうかの試験だったのだろう。席に戻り、諸将の様子を見ると皆いい感じに酔っていた。守役の林殿を見れば満面の笑みで頷いていたし、先ほどの回答は悪くなかったのだろうか。

 このまま信長のことを立てて謀反なんて起こらないように行動すれば大丈夫なはずだ。そう思いつつ信長の方向を見ると、正月の席だというのにボサボサの髪でマトマな格好をしていなかった。

 視線に気がついたのか、信長がこちらに寄ってきて、


「坊丸! 宴が終わったら親父の所に向かうぞ」


 理由も言わず要件だけ伝えて席に戻っていった。相変わらず生き急いでいるというかなんというか。頷くことで答えを返して、宴が終了するまで待った。


ほんとはこの後のことも今日書きたいのですが、本日体調が悪い(虫歯治療ではが痛い)ためここまでで。

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