1話「magic」
1話「magic」
俺は走っていた、果てしなく遠い距離を走り続けようやく学校にたどり着く
「はぁはぁ…」
疲れていたのか荒い息が漏れる。学校にたどり着いたところでまだ友達の姿はなかった
そこで、俺は屋上のフェンスに登り、この学校の一番高い場所から周囲を見渡す。
校舎棟から一段低くなったところにグラウンド、その左手奥にテニスコート、講堂のようなものまである。
「いないか・・・」
自分のしていることが馬鹿馬鹿しくなり、俺は見渡すのをやめ、屋上から降りようとしたが…
「ドキュン!」
遠くで銃の音がした、俺はその音がすごく気になった
そして、屋上から降り、音のした方向まで行くことにした。
「たしか、この辺りだったよな?」
そう自分に言い聞かせ、恐る恐るその場所に近づく。
そして次の瞬間
俺の近くで銃の音がした!
ドキュン!
「うわぁああああああああああああああああーーーーー……」
「はっ」
気づくと、ベッドに横になっていた。
白で統一された室内。
保健室だった。
隣には茶髪の髪を結っている見知らぬ女生徒。
「なあ…」
「それは、わかっているよ、でもな、助けないと大変なことになってたんだよ!」
その女生徒は男っぽい口調だった。
「なんのことだよ! 言ってやるよ!銃を向けたのはお前か?殺す気かっ!死ぬかと思った。天に昇らなくて良かった。まさに奇跡だ!」
「どういうことだ?俺はお前を助けた、だけだけどな」
「なんだよ、それ?」
「具体的に説明すると、この世界とは別に違う世界があって、その世界でのあなたは危機にさらされているの」
「それでさっきの「魔物」はあなたのことも狙っていたのよ」
態度と口調を変え、何やら説明をしてきた。
「危機に晒されている?なんの話だよ」
「凄夢!こんなところにいたのか!」
保健室の正面から声がした。その声は俺を待たせていた張本人の当麻の声だった。
「厄介なのが来たな…」
その女生徒は呟いた。
「この話しは今度」
女生徒は俺に言い残し、保健室から出て行った。
「当麻、そこで待っとけ、すぐ戻る。」
俺は当麻に命令をしてから、学校中を探し回った。
「ぜぇぜぇ…」
二度も全力疾走をし、さすがの俺でも疲れた。そしてようやく女生徒を見つける。
その場所はさっきまでいた運動場だった。
「ここならいいだろ、続きを話してくれ」
俺の言葉を聞いた女生徒はにっこり笑って、口をひらいた。
「魔物があなたを狙った理由はそれだけじゃないわ」
「簡単に言うとあなたの「能力」が邪魔だから」
見慣れない単語を口にした
「能力って、あれだよな?超能力者って意味だよな?」
「ええ、そうよ。」
女生徒は頷いた。
「その前にお前は誰だよ!どうして俺に付きまとう?」
俺は言い放つ。
「私は西園寺ナオ、それであなたは?」
「俺は、青田原凄夢」
お互いに自己紹介を交える。
「そうそう、あなたの他にもう一人いたわ。」
「それは誰だ………」
俺がナオに訊ねようとした凄夢に、運動場を見渡すと、動物のような影が出現していた。
その影をじっと見つめてみる。するとそれが何なのかわかる。
「猫か…」
正体が分かったところで興味がなくなった。そして再び女生徒に向き直る
「にゃー」
俺の近くで、さっきの猫が鳴いていた。五月蝿くて話しも出来ない。
「猫!?猫!!!!!!!!!」
猫の声に気づいたナオは突然走り出した。
「おい、待てよ!話しはどうなった…」
どうやら声をかけるのが遅かったようだ。ナオは猫を追いかけて夜の闇に消えていった。
「…なんなんだよ!あいつは!」
ナオが消えていった方向に向って大声で俺は叫んだ。
そのあと、運動所をあとにして当麻を探しに行く。
「おーい当麻、どこにいったんだ?」
「ここだ。凄夢」
1-Aの教室にあるゴミ箱の中から凄夢の声がしたと同時に
「凄夢も隠れろ、不良グループの輩がこっちに向っているんだ。」
ゴミ箱のふたがひらき、当麻は真剣な目つきで俺に言った。
当麻に言われるまま、ゴミ箱に隠れることにした。
「お前なにかしたのか?」
「聞いてくれよ凄夢!藤田って奴がいるだろ?」
見られない奴の名前を当麻は発した。
(…誰だよそれ、そんな奴聞いたことないけど)
俺は心のなかで呟いた。そして記憶を辿る。
五年前だっただろうか、中学時代に藤多と言う生徒がいたような気がする。
そいつはこの町のジャイアンと呼ばれ、周囲に恐れられていた、その凄夢は俺も学校をサボり続けだったからあまりしらなかった。
「もしかして、藤多のことか。」
「そうだった。名前間違えていた。藤多だった。」
当麻はビクビクしながら、その名前を言った。
「それじゃあな、俺はここで失礼する、まぁ頑張れ」
俺はその言葉を言い残し、ゴミ箱から出ようとしたが・・・
「今、ここから出たら、凄夢お前も半殺しにあうぞ!」
当麻は慌てて、俺を止めようとした。
狭いゴミ箱の中、少しでも近くに藤多がいたら確実にばれる。
「はぁ・・・それでなんで俺まで狙われているんだよ?」
溜息交じりに当麻に尋ねる。
「それは俺が凄夢シールをバイクに張ったからなんだよ・・・」
(つ・・・なんてことしてくれるんだよ。)
シールと言えば、俺の顔写真がついている。シール・通称凄夢シールだ。
1年の頃、俺が趣味で作って校内に貼り付けて悪戯をしていた。
それが後になってばれて先公になんども咎められた。
それを当麻はいまだに持ち合わせいて、しかもこともあろうことに藤多のバイクにシールを張ったのだ。
「おい、当麻、今度ばかしはゆるさねぇー。つらかせよ!ゴルァ!」
その凄夢だ、俺たちのいたゴミ箱はひっくりがえり、中身がみえみえだった。
「いました、いました、当麻と凄夢です。」
ちょうど傍を通りかかった、不良グループの一人がそう言っていた。
「お願いだ、見逃してくれ。一生の願いだ」
恥を惜しんで、俺たちは不良グループに深々と頭を下げる。
「藤多さん、ここですよ」
その最中に不良グループの一人がまたしても俺たちのところに来て電話をかけていた。
「聞いちゃいねぇーな、こいつら。」
「…当麻、逃げるぞ!」
小さな声で囁き1-Aから出ることにした。
教室から出た俺たちは廊下を猛スペードで走った。
その途中で例の女生徒に足を止められた。
「探してたわ、凄夢って言ったかしら。えっと・・・もう一人は」
どうやら当麻のことを知らなかったのか、女生徒は少しの間考えこんでいた。
「俺か?当麻って言う宜しく。」
自ら名乗りを上げ、女生徒の手を当麻は嬉しそうに握った。
「まぁまぁ落ち着け当麻。それで、ナオさっきの話しの途中がまだなんだが…」
当麻の握っている手を俺は無理やり離し、女生徒が話しやすいようにした。
「最初から順序づけて話すわ」
「あなたちには、護衛をしてほしいのよ」
またしても見慣れない単語を女生徒は口にした。
「護衛?」
「護衛?」
俺と当麻は同時に驚いてしまった。それほど吃驚する言葉だった。
「…おっと、そろそろ時間だったわ。」
そうこうしているうちに最終ダイヤが近づいていた。