月極めの関係
文才なくても小説を書くスレで、お題を貰って書きました。 お題:月極め
彼らは一見恋人か、もしくは親友に見えた。
いや、同じクラスになったここ一学期は見る限りずっと、親友だとしか見えなかった。
鳳凰圭というとても華々しい姓名を持つ彼は、その名に相応しくとても知的で朗らかで快活で、でも言動にどこか外れたところがある。その他が完璧すぎるが故に、彼が球にこぼすボケとも下手な駄洒落とも天然ともつかない言動が、いっそう違和感を覚えさせる。
それでも彼がクラスで浮かないのは、圭と互いに腐れ縁と呼び合う普段は物静かな月宮詠のお蔭だ。
彼がその甘いマスクからは思いもつかない変なギャグを飛ばすと、彼女は容赦なく手近なノートで頭を叩く。
彼以外には全くアグレッシヴさの欠片もないのに、彼のボケに対する嗅覚には途轍もない速さで反応する。
甘い空気があったならほかの女子から嫉妬の対象にもなっただろう。
でも彼女が彼の言動を正すときには極めて凛とした空気を放っていて、彼ばかりが苦笑いではしゃぐものだから、周りの人はその二人をして一つのコメディのように見ていた。
つい数分前に彼に手を差し出していた彼女と、「来月もよろしく」とお金を差し出していた彼に、その現場となった校舎裏で囲まれるとは、誰が予想するもんか。
いつもながらの彼女の無表情も、いつもながらの朗らかな表情の彼も、どちらも怖い。
「……もう、分かってるだろ?」
ええ、とっても分かっております。だからそろそろ帰してくれないかとか思っているんですが、無理ですね。
「口外されては困るんだよ」
日々を目撃していた身としては、彼女の方が立場は強いというのも納得できるし、彼女のツッコミがなければ彼はあそこまで人気者になってはいないというのも同意できる。
だけど、これはそれとは別問題だろう。
「俺の……」
そうは思っても、彼はそのままでは帰してくれそうになくて。
「変な言動の方が”素”だなんて」
彼は真剣に悩んでいたみたいなのだ。
「……お金を渡す方じゃないんかい」
「お金?」
呆れてツッコミを入れると、彼は少し目をしばたたかせて「ああ、お駄賃か」と言った。
そして後ろから彼女に全力で蹴られていた。
「うおっふ!」
などと叫びながら彼は大げさに身体を捩ると、また例の如く苦笑しながら「何をするんだい!」と彼女に拗ねた。
「また、とボケてる」
彼女のその言葉を受けて、彼は「あれ?」とあまり良くわかってない様子ながらも、「そっか、ありがとう」と答えた。
「つまりはその、圭君のボケを止める役目が……」
「そう」
彼女はつまらなそうにそういうと、ピラピラと見目鮮やかな一枚の紙切れを振って「これが迷惑料」と答えた。
それはカラフルな色彩とファンシーな絵柄で、中には数字と円という文字も記されていた。
『千円まで食べ放題。カップル限定券』
それはスイーツの店の割引券で、彼の家の店の券でもあった。
ああ、それはつまり……。
「月極めの友達料とかじゃなくて?」
と確認すると、彼はキョトンとした顔を彼女に向けて、思いっきり蹴られた。
そして彼に代わって、珍しく微笑を浮かべた彼女が言った。
「月々の恋人料なの」
と。
甘さ、甘さってなんだー?
うまく、甘い雰囲気にできない。というかジャンル詐欺でもしないと、これジャンルタグでネタバレしてる。
普段の穏やかな空気から、うまく甘い空気に出来ないもんかなあ。
例えるなら、宇治金時の練乳のような。爽やかな中に見事に溶け合う甘い空気みたいなの……。
難しいなあ。
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315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 08:16:07.15 ID:eKjbCD/80
お題ください
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 08:23:41.33 ID:p0hXu3dzo
>>315
月極
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 08:50:56.22 ID:eKjbCD/80
>>316
把握