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三題噺もどき5

夏の想像

作者: 狐彪
掲載日:2026/03/03

三題噺もどき―はっぴゃくさんじゅうご。

 




 昨日の雨が嘘のように晴れ渡っている。

 卒業式の当日でない所に何かの悪意を感じなくもない。

 まぁでも、先輩が言うには、毎回何かしらの行事の度に雨が降るなり、地震があるなり、よくあったらしい。先輩方が主役の行事というのが、肝なんだろうな。……確かに、文化祭も雨だったからな……。

「……」

 まぁ、そんな先輩たちも卒業して。

 上の階からの足音なんてものは、全く聞こえなくなった……元からそんなに聞こえていない。ただ、なんとなくいつもより静かに感じてしまう。気のせいだろうけど。

「……」

 明日、明後日は、次の1年生―になるかもしれない、人たちがこの学校にやってくる。

 そのため、今日の授業はいつもよりは短縮授業となっている。

 いっても、普段の6時間授業が5時間になる程度の事なので、たいした違いはない。今日は部活があるかどうかは分からないが……。

「……」

 教室は、いつも通りうるさい。

 短い休み時間は、最低限の移動で済ませて、大抵の人は教室に居座るのだ。

 私もその1人だけど、話す人なんてものはこのクラスに居ないので、本をめくっている。

 もうこの教室で生活するのもあと3週間くらいだろうか。

 何も感慨深いものはないし、惜しくもないのだけど。

「……、」

 口に飴玉を入れていたことを一瞬忘れていた。

 俯いているような姿勢で本を読んでいるから飛び出しそうになったところを、ギリギリで耐えた。今日の飴は、ただひたすらに甘い。甘味料の塊でも舐めているのかというくらいの甘さがある。

「……」

 手元に広げているページは、左にイラストが入っている。

 時期外れの浴衣を着たイラスト。

 現実の時期と外れているだけで、本の中では夏の話なのだから、仕方ない。

「……」

 簡単に言うと夏祭りに行っているシーンなのだけど。

 浴衣を見るたびに思うが、昔の人はこれが寝間着とか普段着だったわけだろう。

 ただ、今この時代、夏祭りに来ている人を見ると、総じて暑そうにしている。

 昔と今じゃ、そもそも温度も湿度も違うだろうから、一概には言えないだろうけど、浴衣を着るメリットとは……。雰囲気のためにはいいかもしれないが、幼い頃私は甚平を着ていたので、浴衣は着たことがない。最近は、普通に私服で行くしなぁ。

「……」

 あぁでも、あの子が着ている所は見てみたいかもしれない。

 お互い、人混みは好きではないので、夏祭りに一緒に行くと言うことはしてこなかった。

 私は、趣味の写真を撮りに、花火が上がる時間だけ行くことにしている。

 今年は、誘ってみるのもいいかもしれない。来年、お互いどうなっているか分からないし。

「……」

 夏祭りの思い出というのも、あまりないが。

 幼い頃の物ばかりだな……記憶に残っているのは、黄色い透明なあひるの水笛だろうか。

 何とも言えない不思議な音を出すあの水笛が割と気に入っていた。あとは、キャラクターの書かれた袋に入っている綿菓子とか、水風船とか。

「……」

 よく子供が持っているような、キラキラと光るものは買ってもらったことがない。

 アレはまぁ、高いし、今になって思えばそのうち捨てるだけのものだから、買わなくてもまぁ、いいものだろう。

 夏祭りの雰囲気というのは、それでも財布が緩む人は緩むからなぁ。

 冷静に考えれば、普通に買った方が安く済むのに、流されて買ってしまう。

「……」

 あーでも、なんとなく。なんとなくの、想像で語るが……多分、私も、あの子に言われたら買う自信がある。ああいうのを欲しがるかどうかは別として。

 普通に、屋台ご飯とかでも、普通に買った方が安いのは分かっているが、あれ食べてみたいとか言われたら、買ってしまう自信しかない。

「……」

 買った、かき氷を食べて、青くなったとか言われたら……ね。

 もうかわいいと言う感想しか浮かばない。

 何の理由もなく、水笛とかあげてしまおうか。

「……」

「……」

 んんっ……。やめよう。

 そろそろ、次の授業が始まる時間だ。

 気付けば、すでに教壇に教師がいて、授業の準備を始めている。

 まだクラスは、ざわざわとしているが、それなりに自分の席についている。

「……」

 この授業が終わったら、昼休みだ。












 お題:甘味料・あひる・浴衣

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