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葉隠メンヘラ〜武士道とは、推しと死ぬことと見つけたり〜  作者: 江戸川竜也


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第二十五話:武士道(終章)

柊グループの崩壊から、一ヶ月が経った。

 

***

 

【その後の柊グループ】

・柊誠一郎:詐欺・恐喝・組織犯罪処罰法違反で起訴。実刑は確実。

・幹部5人:全員逮捕。芋づる式に組織が壊滅。

・汚職警官:3人が懲戒免職。2人が逮捕。

・汚職政治家:1人が辞職。捜査継続中。

・被害者への補償:柊グループの資産を差し押さえ、分配が始まっている。

 

***

 

歌舞伎町は、少しだけ変わった。

柊グループが消えて、街の空気が軽くなった気がする。

もちろん、まだクズ男はいる。詐欺師もいる。女を食い物にする奴もいる。

でも、前より少し、マシになった。

 

***

 

「らむね」

姐さんが、私を呼んだ。

「来い。話がある」

私は、「地獄極楽」のカウンターに座った。

「何ですか」

「お前、これからどうする」

「これから……?」

「葉隠組、続けるのか」

私は、考えた。

柊グループは潰した。

でも、それで終わりじゃない。

歌舞伎町には、まだ戦うべき相手がいる。

「続けます」

「そうか」

「まだ、泣いてる女がいる。騙されてる女がいる。——助けを求める声がある限り、私は戦います」

姐さんが、笑った。

「いい答えだ」

姐さんが、グラスを差し出した。

中身は、ウーロン茶。

「乾杯だ」

「何にですか」

「お前の、武士道に」

私は、グラスを受け取った。

そして、姐さんと乾杯した。

 

***

 

翌日。

「地獄極楽」に、メンバー全員が集まった。

私、ぴえん、ゆめかわ、病み子、もこ。

そして、姐さん。

「今日、集まってもらったのは、一つ報告があるから」

私は、みんなの顔を見回した。

「葉隠組、正式に継続します」

「おおー!」

ぴえんが、拍手した。

「やったー! 葉隠組、永遠に!」

「永遠かどうかは分からないけど」

私は、笑った。

「でも、私たちがいる限り、歌舞伎町の女を守る。——それだけは、約束する」

 

***

 

「それと、もう一つ」

私は、翔太を見た。

翔太は、部屋の隅に立っていた。

「翔太。お前、これからどうする」

「俺?」

「柊グループはなくなった。お前の居場所も、なくなった」

「……ああ」

「よかったら——」

私は、翔太に手を差し出した。

「葉隠組に、入らないか」

翔太が、目を見開いた。

「俺が……?」

「お前は、親父を裏切った。私たちに協力した。——もう、仲間だ」

「……」

「それに、男がいた方がいい場面もある。お前みたいなのが一人いると、助かる」

翔太が、私の顔を見つめた。

そして——笑った。

「……いいのか」

「いい。——ただし、調子に乗るなよ」

「乗らないよ」

翔太が、私の手を握った。

「よろしく、リーダー」

「よろしく、新入り」

 

***

 

窓の外、歌舞伎町のネオンが瞬いている。

ドン・キホーテの観覧車が、ゆっくり回っている。

私は、この街で生まれ変わった。

男に裏切られ、社会に見捨てられ、死にかけていた私が——

武士になった。

仲間を得て、居場所を見つけて、戦う理由を手に入れた。

 

***

 

「らむね」

ぴえんが、私の隣に来た。

「何」

「あたしね、らむねに会えてよかった」

「……急にどうした」

「だって、本当のことだもん」

ぴえんが、笑った。

泣いてない。最近、この子は本当に泣かなくなった。

「らむねがいなかったら、あたし、まだ泣いてた。男に騙されて、自分を責めて、死にたいって思ってた」

「……」

「でも今は、違う。——あたしは、武士だから」

「……そうだな」

「らむねのおかげだよ」

「私のおかげじゃない」

私は、ぴえんの頭をぽんぽんと叩いた。

「お前が、自分で強くなったんだ」

「……えへへ」

ぴえんが、私に抱きついてきた。

「らむね、大好き」

「知ってる」

 

***

 

夜が明けていく。

歌舞伎町に、朝日が差し込む。

私は、窓辺に立って、街を見下ろした。

ここが、私の戦場だ。

ここで、私は生きていく。

スマホが鳴った。

知らない番号からの着信。

「……もしもし」

「あの、姫咲らむねさんですか?」

若い女の声。泣いている。

「……そうですけど」

「あの、友達から聞いて……困ってる女の人を助けてくれるって……」

私は、微笑んだ。

また、新しい戦いが始まる。

でも、怖くない。

仲間がいるから。

「——何があったの。話を聞かせて」

 

***

 

『葉隠』にはこうある。

「武士道とは死ぬことと見つけたり」

——武士道とは、死ぬことだと見つけた。

私は、この言葉を自分なりに解釈した。

死ぬ覚悟があれば、何でもできる。

死ぬ覚悟があれば、誰でも救える。

死ぬ覚悟があれば、どんな敵も倒せる。

それが、私の武士道。

令和の、歌舞伎町の、地雷系メンヘラの——

私だけの、武士道だ。

 

***

 

歌舞伎町の朝。

ネオンは消え、陽の光が街を照らしている。

私は、仲間たちと一緒に、街に出た。

新しい一日が始まる。

新しい戦いが始まる。

でも、大丈夫。

私たちは、葉隠組だから。

 

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