表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
葉隠メンヘラ〜武士道とは、推しと死ぬことと見つけたり〜  作者: 江戸川竜也


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/25

第十八話:籠絡(翔太)

柊翔太との「デート」が始まった。

一回目は、恵比寿のイタリアン。

二回目は、銀座の寿司屋。

三回目は、表参道のカフェ。

全部、翔太の奢りだ。

こいつ、本当に金だけはある。

「さくらちゃん、今日も可愛いね」

「ありがとうございます……翔太さんに会えて、嬉しいです」

「俺もだよ。さくらちゃんといると、癒されるわ」

嘘つけ。他にも何人も女いるくせに。

でも、顔には出さない。ニコニコしながら、翔太の話を聞く。

 

***

 

翔太は、自分の話をするのが大好きだった。

「俺さ、来月また新しい車買うんだ」

「すごい……何台目ですか?」

「5台目かな。ポルシェ、フェラーリ、ランボルギーニ、ベンツ——」

「すごい……私、軽自動車しか乗ったことないです……」

「マジ? 今度、俺の車乗せてあげるよ」

「本当ですか!? 嬉しい……」

興味ない。

「俺の親父、めっちゃ金持ちなんだよね」

「そうなんですか?」

「うん。不動産とか、いろいろやってて」

「へえ……」

「まあ、ぶっちゃけ俺が遊んでも、全然減らないくらい金あるから」

それ、自慢になると思ってるのか。

「翔太さんのお父さん、どんな人なんですか?」

「親父? うーん、厳しい人かな。仕事一筋っていうか」

「怖そう……」

「怖いよ。マジで。俺も昔、めっちゃ殴られたし」

「えっ……」

「まあ、今は大人しくなったけど。——歳だしね」

翔太が笑った。

歳か。

柊誠一郎は50代。確かに、若くはない。

「お父さんと、仲いいんですか?」

「まあまあかな。仕事の話はあんまりしないけど、金はくれるから」

「仕事の話、しないんですか?」

「しない。親父、秘密主義だから。何やってるか、俺も詳しくは知らない」

秘密主義か。

やっぱり、翔太から直接情報を引き出すのは難しいかもしれない。

でも、別の方法がある。

 

***

 

四回目のデート。

翔太のマンションに、招待された。

「今日、うち来ない? 夜景綺麗だよ」

来た。

普通なら断る。危険だ。

でも、今回は目的がある。

「……いいですよ」

「マジ? やった」

翔太が嬉しそうに笑った。

馬鹿め。

 

***

 

翔太のマンションは、港区のタワマンだった。

40階。夜景は確かに綺麗だ。

「どう? すごくない?」

「すごい……こんな部屋、初めて見ました……」

「だろ? 家賃、月80万だよ」

親が払ってるんだろ。

「座って座って。何か飲む?」

「じゃあ、お水を……」

「水? シャンパンとかないの?」

「お酒、弱くて……」

「そっか。じゃあ、水ね」

翔太がキッチンに向かった。

今だ。

私は素早く部屋を見回した。

リビング。高級そうな家具。でも、書類とかは見当たらない。

翔太のスマホが、テーブルの上に置いてある。

これだ。

私はスマホを手に取った。ロックがかかっている。

指紋認証。顔認証。——無理だ。

でも、通知は見える。

画面に、LINEの通知が表示されていた。

「親父」からのメッセージ。

「明日の会議、15時に変更。場所は例の倉庫」

倉庫?

私は、スマホで通知画面を撮影した。

「はい、水」

翔太が戻ってきた。

私は素早くスマホを元の位置に戻した。

「ありがとうございます」

「どうしたの? 顔赤いよ」

「え、あ、夜景が綺麗で……ドキドキしちゃって……」

「可愛いなあ、もう」

翔太が、隣に座ってきた。

近い。

「さくらちゃんさ——」

翔太の手が、私の肩に触れた。

まずい。

「あの、トイレ借りていいですか!?」

「え、あ、うん。そこ」

私は逃げるようにトイレに向かった。

 

***

 

トイレの中で、深呼吸した。

危なかった。

でも、収穫はあった。

「例の倉庫」。明日の15時。

柊誠一郎が来る場所が分かった。

私はスマホを取り出し、姐さんにLINEを送った。

「情報取れました。明日15時、倉庫で会議があるみたいです」

すぐに返信が来た。

「よくやった。場所は分かるか」

「分かりません。でも、翔太のスマホに情報があるはずです」

「どうやって見る」

「……考えます」

私はトイレを出た。

翔太が、ソファで待っている。

「大丈夫?」

「はい、すみません……」

「無理しなくていいよ。今日は、ゆっくりしよ」

翔太が、優しく笑った。

こいつ、悪い奴じゃないのかもしれない。

一瞬、そう思った。

でも、すぐに打ち消した。

こいつの親父は、何人もの女を地獄に落としてる。

こいつも、その金で生きてる。

同罪だ。

 

***

 

その夜、私は翔太のマンションを後にした。

「また会おうね、さくらちゃん」

「はい……また」

「次は、もっとゆっくり……ね」

翔太がウィンクした。

私は、作り笑いを返した。

次はない。

次に会う時は、お前を潰す時だ。

 

***

 

『葉隠』にはこうある。

「虎穴に入らずんば虎子を得ず」

——虎の穴に入らなければ、虎の子は得られない。

危険を冒さなければ、情報は得られない。

私は今夜、虎の穴に入った。

そして、虎の子を掴んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ