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バベル大陸  作者: nekorovin2501


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【第10話 魔王の真実と、女神の降臨】

ルミナスの街は、静かな緊張に包まれていた。

教会の鐘が、低く響く。

魔王の軍勢が、国境を越えて迫っているという噂が、街を駆け巡っていた。

カイはギルドの奥部屋で、地図を広げていた。

隣には、リリア、サラ、ゴラン、司祭。

多言語辞典を基にした「輪」のメンバーたち。

「魔王の影……あの声、誤解だと思う」

カイは人間語で話し、辞典のページを指差した。

神聖語の波線。

悲しみの感情。

リリアは歌で応え、サラは唸り、ゴランはハンマーを叩く。

司祭は頷き、聖典を開いた。

「予言じゃ。女神が降臨し、魔王を討つ……と」

でも、カイの胸に、違和感。

女神の声は、優しかった。

魔王の影の響きも、孤独だった。

「行ってみよう。みんなで」

カイの提案に、皆が同意した。

リリアの歌が優しく、サラの尻尾が振れ、ゴランのハンマーが力強く。

一行は北方の森へ向かった。

馬を走らせ、森を抜け、荒野へ。

空は曇り、風が冷たい。

遠くに、黒い影の城が見えた。

魔王の居城。

城の入り口で、影の軍勢が待ち構えていた。

黒いマントの者たち。

彼らは声を上げた。

神聖語の変種。

人間には、不気味な響きにしか聞こえない。

獣人のサラが唸りを上げ、構える。

エルフのリリアが弓を引く。

ドワーフのゴランがハンマーを振り上げる。

司祭が祈りを捧げる。

「待って!」

カイは前に出た。

辞典を開き、ジェスチャーで止まれ。

影の軍勢は戸惑った。

感情が伝わる。

……警戒。

……驚き。

カイは喉を震わせ、神聖語の響きを真似した。

女神の記憶を基に。

ぎこちないが、優しい波。

影の軍勢が止まった。

一人が、マントを脱いだ。

人間のような顔。

でも、瞳は赤く、背に影の翼。

「君が……魔王?」

カイの言葉に、影は首を振った。

神聖語で応える。

意味はわからないが、感情が強く。

……違う。

……私は、ただの生き残り。

カイは辞典のページを広げ、絵を描いた。

女神の降臨。

種族の分断。

言語の呪い。

影は目を潤ませ、神聖語で語り始めた。

カイの「欠片」が、徐々に意味を繋ぐ。

……昔、神々が種族を創った。

私たちは、最初の種族。神聖語を操る者。

だが、神々が言語を分けたとき、私たちは「悪の言葉」と誤解された。

追放され、魔王と呼ばれた。

本当は、女神の仲間だったのに……。

リリアの歌が、驚きの旋律。

サラの唸りが、混乱の低音。

ゴランのハンマーが、沈黙のリズム。

司祭の目が、揺れる。

「誤解……だったんだ」

カイの声が震えた。

地球で、吃音で誤解された日々。

伝えられず、孤立した。

ここでも、同じ。

世界全体が、言語の誤解で戦争を繰り返していた。

影──名はアリア──は涙を流した。

神聖語で、叫ぶ。

……女神よ、なぜ!

その瞬間、空が裂けた。

光の柱が降りる。

女神の降臨。

美しい声が響いた。

誰もが、ただの心地よい響きにしか聞こえない。

伝説通り、「ただ美しい声が響いた」だけ。

でも、カイの胸に、意味が流れ込んだ。

「欠片」が、成長していた。

……アリア、ごめん。

……言語の壁を、作ったのは私。

……種族を試すため。

……でも、君を追放したのは、誤解。

女神の声が、悲しい。

アリアは女神に向かって、神聖語で応える。

……許して。

……戻りたい。

戦いが始まる。

いや、誤解の残党──一部の影の軍勢が、暴走した。

人間の言葉で叫ぶ者たち。

「魔王を討て!」

カイは叫んだ。

「止めて!」

リリアの歌魔法。

サラの咆哮強化。

ゴランの振動鍛冶。

司祭の聖魔法。

カイは、それらを融合した。

人間語の論理を基に、歌を混ぜ、唸りを加え、リズムを叩く。

神聖語の欠片を、繋ぐ。

「みんなの言葉よ……寄り添え!」

ハイブリッド魔法が爆発。

光が広がり、暴走を止める。

誤解の闇が、溶ける。

女神は微笑み、光を強めた。

アリアを抱きしめるような響き。

言語の壁が、少し緩む。

種族の言葉が、ぼんやりと伝わり始める。

カイは膝をついた。

涙が止まらない。

地球の悔し涙。

異世界の希望の涙。

アリアがカイに近づき、神聖語で。

……ありがとう。

……通訳者よ。

カイは頷いた。

言葉が、通じた。

世界が変わり始めた。

バベル大陸の、新しい始まり。

第10話 終わり

(次回、第11話 言葉の橋と、新世界)

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