【第8話 融合の言葉と、最初の橋】
北方の森から戻ったカイは、ギルドで報告した。
「魔王の影……敵じゃなかったかも」
リアは目を丸くした。
「え? でも、村が襲われたって……」
カイは地面に絵を描きながら説明した。
影の祈る姿。
獣人たちの誤解。
神聖語の悲しい響き。
リアは頷き、
「カイさんなら、信じられるわ。
でも、教会に知られたら……異端よ」
カイは胸のざわつきを抑えた。
次の日、
カイは森へ向かった。
リリアに会うため。
エルフの村の近くで、
美しい歌が聞こえた。
リリアが、木の上で弓を構えていた。
カイを見て、歌で話しかける。
感情が伝わる。
……驚き。
……喜び。
カイはジェスチャーで、
北方の出来事を伝えた。
魔王の影の絵。
誤解の絵。
リリアは首を傾げ、
歌で応えた。
彼女の感情。
……知ってる。
……魔王は、昔の仲間?
カイは目を見開いた。
リリアは地面に降り、
カイの手を取った。
そして、歌い始めた。
エルフの魔法。
旋律が、森を優しく包む。
木々が揺れ、
花が咲く。
カイは喉を震わせ、
人間の言葉を混ぜてみた。
「森よ……育て」
ぎこちない。
でも、何かが起きた。
旋律と言葉が融合し、
小さな芽が地面から生えた。
リリアは驚きの歌を上げた。
カイの胸が熱くなった。
融合の魔法。
種族の言葉が、混ざった。
初めての橋。
リリアはカイを抱きしめた。
言葉じゃなく、
温かさで伝わる。
ありがとう。
カイは涙を拭った。
地球で、詰まって伝えられなかった想い。
ここで、少しずつ繋がっていく。
二人は森を歩いた。
歌と言葉の、最初のハーモニー。
第8話 終わり
(次回、第9話 多言語の辞典と、広がる輪)




