第四夜 策略
更新です。夜中に書いているので目がしぱしぱしますね。
それでは第四夜お付き合いください。
名簿に書かれている名前を確認する。人数は4人となっている。対象者は4人ではあるものの、それには護衛ももちろん付いているだろう。その護衛を避けて対象者のみを殺すのか、護衛も含めてまとめて殺すのかはその時の流れで変えていくしかない。
この男は裏の世界では有名だ。見た目は浮浪者ではあるが、知っている人は誰もが見た目に騙されず、警戒をする。しかし、知らない人々は怪しいため関わらないようにするか、ストレスの発散元として暴力を振るうか等、どんな行動にせよ舐めた反応を示す。
Sad Barを出た男はそのまま街の中心地へと移動する。中心地に近づくにつれ、道行く人々は減っていく。中心地より端に行くと少しづつ、ならず者も多くなっていくが中心地に近づくと貴族が多くなっていくためだ。貴族は夜に出歩くことは少ない。夜は危険なことも多いためだ。
国の造りとしては、一番中心には王城がおかれている。そこから等間隔で検問所がおかれており、当然一番端は検問も雑で給金が安く雇える一般の者達が検問を担当している。
そのため国に入るだけであれば簡単に入ることができる。そうすることにより、様々な客層を捉えることが出来、様々な商売を行うことが可能だ。大きな商人は中心街では高い商品。端は安いが沢山の量を売ることが出来る物と分けて多額な金額を儲けている。高額なものは頻繁に売れるわけではないため量の売れる安い品も大きな利益となる。そこから国へ税として納めるため、国としても、ならず者達が必要なのだ。
しかし、王城近くには多くの貴族たちが住まうため検問所には正規の騎士たちが駐在しており正式な手続きをし、証明できる身分がなければ出入りできない。
男は国にある一番内側の検問所に近づいていく。正規の騎士2人が検問所に立っているが、男は気にせずその検問所を通り過ぎようとする。騎士たちが反応するかと思ったが、何も見えていないかのように反応しない。そのまま男は検問所を通り抜けた。
そのまま1つの宿屋まで向かっていく。男の歩みに迷いはない。対象者がどこにいるのか分かっているかのようだ。誰にも気づかれずに歩けることや、対象者を見つけ出す速さ等、何かしらの力を持っているようだ。
男が宿屋につくと上を見上げ屋根まで飛ぶ。その動きからは音が鳴らない。静かに屋根に着地をする。そして静かに耳をすませば男には声が聞こえてくる。
「どうする。こんな事して良いのか?」
「こうするしかないだろ。あの国はもうだめだ。根本的に変えていくしかない。助けを求めなければ」
「俺らの話を聞いてくれると思うか?」
「聞く気がないのであれば、今回の様な場は設けられていないだろう。結果は分からないが話は聞いてくれるはずだ」
男達は、中心地では警備がしっかりしているためここでの話を聞かれているとは思っていないのだろう。宿の壁も分厚く、声が漏れないようになっている。さらにそれだけではなく、部屋の中の男達の周囲は歪んで見える。
「それよりもこんな話をここでしてても良いのか?打合せは国で十分にしただろ」
「防音魔法もかけてるため外に聞かれる心配はない。ここの警備も手厚そうだし、貴族が多い街だから、夜中に出歩くような不心得者はいないだろう」
「それもそうか」
「ああ。今のうちに最後の詰めをしておいた方が良いだろう」
少し様子がおかしい。国を売るような貴族には見えない。何かに追われているような印象を受ける。
「俺らの国はおかしい!負の連鎖を止めなければ国がなくなる!体裁なんてものは気にしていられない。この国にかけて助けを求めなければ...」
助けを求める?国がなくなる?国を売ろうとしている者であればそんな言葉は出てきていないだろう。男は今回の任務に疑問を覚える。依頼を斡旋した女は裏切ることはないだろう。男の事を知っているため下手な真似はしてこない。ということは依頼主である王が怪しくなってくる。
男はある目的のため、危険な依頼を行うがそれには信念があった。殺すのは罪人や悪人と言われている者達のみにすること。罪人や悪人の基準は、罪のない者達を殺すことや意味もない殺戮を行う者達と決めている。
「その話、俺にも聞かせてもらおう」
部屋の中にいる男達の前に怪しい姿をした男が現れる。
話していたのは2人の男であるが、その後ろにも2人の男がいた。その男達は手元にある剣を手に取り怪しい男に切りかかった。しかし、怪しい姿をした男は素手で剣を止める。しかし、剣を持った男達は慌てることなく剣を捨てすぐに蹴りを繰り出す。しかし、それをジャンプでかわす。そのまま2人の男に向かって小さな光の球体を飛ばす。男達はそれをかわす事が出来ずに受けてしまい、後方に飛ばされる。壁にぶつかると思いきや、何かクッションのようなものにぶつかったかのように音は起こらない。
「落ち着け。俺は怪しい者ではない」
部屋の中の男達は口をパクパクとさせ、《どの口が...》と心の中で思うのであった。
部屋の中に5人の男が座り、誰かが口を開くのを待っていた。
「単刀直入に聞こう。お前は誰だ?何故ここに入ることが出来た?それに目的はなんだ?他にも聞きたいことが沢山あるが、一先ず答えてもらおうか」
「まずは正体についてだが、それは知る必要はない。そしてここには入るのは簡単だった。気づかれずに入っただけだ。変な魔法がかかっていたが、俺には関係ない。目的はお前を殺すためだった。だがお前らからは悪い気が感じられないため話を聞いてみようと思っただけだ」
「殺すためだと?そんな正直に言って良いのか?」
「問題ない。お前らを殺すのは簡単だからな。後ろ2人は武芸を嗜んでいるだろうが、弱い」
「その話をどこまで信じれば良いんだ。目的は分かったが、いつ殺されるかもわからないのに」
「お前らはそこまで気にしなくて良い。俺の気分だからな。ただ、俺はお前らが国の民を多く殺し、自国を売ろうと考えている悪人だと聞いただけだからな」
男は依頼内容を要約して答える。依頼対象者に簡単に言って良いのかと疑問にも思うが、男にとってはどうでも良かった。対象者の実力は男にとってたいした事もないため、依頼内容を知った者を瞬殺もできるためだ。
「何だと⁉そんなわけあるか!俺らの国が今どんな状況かも知らないくせに!」
「そうだ。俺は何も知らない。だから依頼を達成することがすべてだ。しかし、俺は善人は殺さない。理由次第ではお前らに協力してやる」
男はわずかな殺気を込めた目を男達に向ける。
「これから話すこと次第で殺すということか」
4人の男は冷汗を垂らす。男の殺すと言う言葉が冗談ではないことは目をみて明らかであった。
そして貴族の男はあきらめて話し始めた。
男たちの国では内戦が起こっているのは事実らしい。しかし、内戦の起こった理由は国王による圧政であるという。国の仕組みとして、大きな街が小さな街を管理する。例えば、1つの地域に5つの街があり、その地域で100の税金を納めなければいけないとする。その場合、その中で最も大きな街がその他の街の税も回収して国に納めるのだ。その過程で小さな街から過剰に取り、大きな街は少なくする。そうすることにより大きな街に余裕ができ、貴族たちは国に多く金品を渡し、国は裕福であると周囲に見せることが出来る。大きな街の貴族たちも金品を渡すことにより上位の貴族達と多くのコネクションができるのだ。王は民よりも、自身の裕福さや他国へ自国は裕福だという事を見せびらかすためにしているという。他国に対して小さな街を見せることはなく、国を見せるのだ。自分の身なりや自身の王宮の大きさがすべてを語ると思っているのだろう。その結果、圧政に耐えられなくなった民達はどうせ税に殺されるぐらいなら戦って死ぬことを選んだそうだ。
依頼内容での話や女の話していた噂話とは少し違っている。それとももう少し詳しく聞かなければいけないのか。もっと色々調べる必要がありそうだと男は考えた。しかし、そこで貴族たちが口を開く。
「だが、これ以上民に犠牲を出すわけにはいかない。政府や反政府組織ではなく、戦いに反対している貴族と民の連合派が、国にばれないように抜け出してこの国に助けを求めに来たのだ」
貴族の男が唇を噛みしめながら語る。
「それで国王はそれをすでに知っていて、お前たちを消すために依頼を出したと...だけど、お前らの意見はこの国は聞かないと思うぞ」
「やってみなければわからないだろう!どんな事でも試してみなければわからない!こちらが成功するかもと焦っているから国王も依頼を出したんだきっと!」
「違うと思うぞ。断られることは絶対だが、お前らがどうにか出来るかもと待っている者達に希望を持たせたまま内戦を長引かせようとしているんだ。それが策略というものだよ」
「それでもやる!」
「好きにしろ。だが俺は罪もない人たちが死んでいくのは許せない。この国に助けを求めても受け入れられなければ、俺が助けてやろう。また明日の夜ここに来るからな」
「わかった。お前をまだ信用できないが、考えておこう」
その返答を聞き男は音もなく消えていく。
「何者なんだ。あいつは。まったく動きが見えなかった。とにかくもう少しどうするか話す必要がありそうだな」
そう言い、貴族達はもう一度、新たに打合せすることにして夜が更けていった。
さぁ。徐々に物語が深くなってきました。何を言っているのか分からないですね。ですが、今はそれで良いのです。果たして誰が敵で、誰が味方なのか。誰の言っていることが正しいんですかね。
もうしばし、このわけの分からないお話にお付き合いください。
それでは皆様、また次の更新でお会いいたしましょう。