第三夜 依頼
皆様熱中症には気を付けていますか?
外は暑い。部屋の中にいるしかない。そんなときに少しばかり小説はいかがですか?
皆様体調にはお気を付けください。
男はNameless Shadowを出てもう一度街へ入る。その際にも街の人々は男を見ることも男にぶつかる事もない。まるでそこに存在していないかの様だ。男は真っ直ぐ歩いているだけなのに皆が避けていく。そうして男は1つの大きな建物にたどり着き中へと入っていく。
誰も男が入ってきたことに気づいていないのか、それとも気にしていないのか振り向くことすらない。そのままカウンターの前まで行く。
「ブラックジャックに集う者」
「トイレまでどうぞ」
そう言われると男はトイレへ向かい中へと入って行く。そしてトイレの壁に手を触れると微かに光、壁が開いていく。開いた壁の向こうは真っ暗であり先が見えない。しかし、男は気にせずそのまま進んで行く。たどり着いた場所は大きくひらけた場所となっており、多種多様な者達が酒を飲んだり会話をしている。
「こんな場所にこんなボロボロな奴が来るなんてどんな要件だ」
酔っぱらった者が品定めをするように男をじろじろと眺める。しかし、一緒にいた別の者がその男に声をかける。
「そいつに余計なことするな」
「なんでだよ!こんなちゃっちい奴にビビってんのか!俺は天下の殺人鬼だぞ!」
そう宣言すると、周囲は嘲笑する。
「ほら見ろ!みんなお前のことを笑っているぞ!いい気味だ!」
「すまない。こいつは酔っているだけなんだ」
一緒にいる者は男の正体を知っているのか酔っぱらいを止めている。しかし、そんな事も気にせず酔っぱらいは男へ殴りかかろうとする。
「女子供も俺の名前を聞いたらビビッて逃げていくぞ。なんたって戦場で雑魚の市民を沢山殺してきたからな!」
しかし、男に拳が当たることはなかった。むしろ酔っぱらいはその場から消えていた。
「そこの連れもあいつと同じか。罪もない女子供を何人も殺してきたのか」
男は一緒にいた者に声をかけた。先ほどの嘲笑は男に対してではなく酔っぱらいに対してであった。
「お、俺はやってない。さっき酒場で知り合っただけだ」
そう答える男の額には汗がにじんでいた。
「そうか、それなら去れ」
そう言うとその者は速足と去って行った。そのまま男は1人の女性が座るテーブルへと向かっていく。
テーブルへたどり着くとその女性へと声をかける。
「今日の依頼は」
「酔っぱらった男はどうしたの?どこかへ送ったの?それとも消したの?」
「消したさ。生かす価値もない」
「さすが死神ね。あなたにはいくつか通り名があるけど、私は死神って通り名がしっくりくるわ」
「早く本題に入れ。お前も同じようになりたくなければな」
女性はやれやれといったジェスチャーをしながら本題へと入る。
「この街に1人の貴族がやってきたわ。それも相当恨まれている貴族よ。隣の国で起こった内戦は知ってるわね?その貴族は、争っていた反政府組織の兵士達数百名を公開処刑したわ」
「内戦なんてどこでも起こるだろ。その国の政府が無能だから反感を買う。その結果市民が旗揚げし政府を叩き潰そうとした。だが、力もない者達が負けて力ある政府が勝ち、負けた者達は弱いから死んだ。それだけだろ」
「それがそんな簡単な話じゃないのよ。貴族達と反政府組織が自分の国の兵力を削りその国をこの国に売るためにやったそうよ。内戦という理由で争い、双方の兵士を減らす。最後に勝った方は負けた方の兵士を多く殺す。内戦と言っても双方国の民であり戦力だもの。数が減れば他国との争いにつぎ込む兵士がいなくなるのよ」
「要は身売りか。貴族と反政府のお偉いさん達は繋がっていたわけだな。より強い国へ簡単に手に入ります売り出し、その国で自分たちは成り上がる。そんなところだろ」
その時店員は何か食べ呑みするか注文を聞きに来るが、男は手を振って断る。
「そうね。まぁ自分の国を裏切っている時点でこの国でも干されるのが目に見えてるけどね。一度裏切るとまた裏切るかもしれないのよね」
そう女性は言うと、男に自分が飲んでいたお酒を差し出す。
「それに気づかない馬鹿だからこんな事を起こしたんだろ」
男は女性が差し出したお酒を、最初は迷いながらも受け取る。
「そうね。そして今回の依頼が、内戦のあった国の王からの依頼よ。その貴族を殺してほしいそうよ」
「王からの依頼ということは王はその話を知らなかったと言うことか」
「そうよ。貴族たちが、その国のいくつかの小さな街から税を搾り取っていたそうよ。そして、没落貴族達が、国の貴族に家門を立て直す方法がそれだと教えられ反旗を翻す者達を集めた」
男は受け取ったグラスに口を付け酒を飲む。
一部の貴族が自分の地位を高め権力を握るため、他国に自分の国を売る。そのために起こした内戦とのこと。長い時間をかけ、まずはその国の貧しい街に重い税をかける。そしてその街の人たちの怒りが高まり限界に来たところを狙い、何人かの仲間を利用し反旗を翻す言葉を持ち掛ける。仲間とは没落した貴族で、いまだに過去の栄光を忘れられない者達だ。誘い出すのは簡単だ。その仲間が多くの民たちを利用し政府に武力での訴えかけするように仕向ける。その結果、大きな被害が出て兵力の減少につながり他国に付け入る隙をわざと作った。そして、計画を立てた者達はこの国に来て自分達がしたことを説明し、今なら簡単に落とすことが可能だと進言する。自分たちの地位を約束させ...
「何にせよ。そこの王も無能だな。気づかないなんて。そこに住む貴族も無能なら上に立つ王も無能だな」
「そう言わないで上げてちょうだい。あの国の王は優しいのよ。貴族、平民関係なく雇用する。そして多くの人に職が与えられるようにしてあげてるの。今回は騙した貴族達が王の優しさに漬け込み、自分たちが貧しい街を豊かにすると言って、うまい具合に報告していたの。気づいた時には手遅れだったけどね」
「どちらも一緒だ。優しさとは毒となり、良薬ともなる。使い方もわからん馬鹿が使うから毒になったんだ」
男は手に持っていたお酒を一気に飲み干した。
「まぁ、王がそいつを殺す理由は分からないが俺はとにかくその貴族を殺せば良いんだな。成功報酬はいつものようにしておいてくれ」
「わかったわ。いつものようにしておくわね。それにできるだけバレないようにお願いね。どちらの国の責任にもできないようににしてくれると助かるわ」
その言葉を聞き、女性から名簿を受け取ると男は出口に向かって歩き出す。
帰りは誰もその男の邪魔をしない。気づいていないのか、それとも酔っぱらいの二の舞にならないようにしているのか。それは本人たちにしかわからない。
ここは依頼を受ける場所。人々の想いを叶える場所。そのためにはどんな手段もいとわない。その場所を使用する人たちからはSad Barと呼ばれている。
今回はセリフが多めです。見にくいし、読みにくいですよね。さらには何を言っているんだ?というような感じだと思います。しかし、この小説のチュートリアルみたいな物ですので大事です。この章に最後までお付き合いしてくださり、その後読むと今より少しばかり楽しんでもらえると思います。
「少しばかり...」ですよ
また近日中に更新します。いよいよ主人公の力が...
というか主人公は誰でしょうね。まだ人物の名前が誰も出てきていないの気づきましたか?
皆様また次回の更新でお会いいたしましょう。
それでは良い夜を...