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3/3

俺、少しだけ信じてみようと思う。大切な人たちのことを。

夜明け前、屋敷に緊急の鐘が鳴り響いた。


「盗賊だ!女性たちを屋敷の奥へ!」


目を覚ましたユウトは、騒然とする中庭へ駆け出した。屋敷の壁は一部破られ、武装した盗賊たちが押し入ってきていた。


「ユウト様、下がって!危険です!」


執事の制止も聞かず、ユウトは一人の盗賊の前に立ちはだかった。

誰かが悲鳴を上げた瞬間——

鈍い音がして、ユウトは地面に倒れていた。


 


◆ ◆ ◆


 


気づくと、天井が揺れていた。


「ユウト様っ!」「……目を、覚まして……!」


泣きそうなセリア、叫ぶリリア、ミーナもいつになく眉を下げていた。


「あ……俺、生きて……る?」


「……はい。傷は浅いです。あなたが庇ってくれたから、私たち、無事で……」


ユウトは黙って目を閉じた。数日前までなら、自分が他人のために傷つくなんて、想像もできなかった。


でも今は違う。


「……前の俺なら、怖くて逃げてた。全部、見ないふりして」


「でも今は——大切な人ができたから」


 


◆ ◆ ◆


 


翌日、ユウトは屋敷中を歩き、備品と配置の見直しを始めた。自分が守れなかった悔しさと、守りたいという気持ちが、初めて行動に変わっていた。


「次また来たら、今度はちゃんと追い返す。俺が、みんなを守る」


皆もその言葉に応えるように、警備や避難ルートを一緒に整えていった。


そして数日後——

予想通り、盗賊たちは再び現れた。


 


◆ ◆ ◆


 


だが今回は、違った。


ユウトは冷静に指示を出し、隠し扉を開き、リリアが仕掛けた火薬罠で敵を分断。セリアが剣を構え、ミーナは書庫から魔術書で援護。


全員が、自分の意思で動いていた。


盗賊たちはあっけなく撤退。屋敷に勝利の空気が流れる。


「……今のあなたは、昔のあなたじゃないわね」


セリアが微笑んだ。ユウトは少しだけ、照れくさそうに目をそらす。


「まぁ……成長期ってやつかも」


 


◆ ◆ ◆


 


事件の後、ユウトの部屋には一通ずつ、手紙が届いた。


セリア:「私は、あなたの隣にいられるだけで嬉しいです」

リリア:「ずっと友達でいてほしいなっ!」

ミーナ:「……私にとって、大事な“はじめて”です。あなたが」


そして、三人とも最後に同じことを書いていた。


「一夫多妻でもいい。でも、まずは“あなたの友達”になりたい」


ユウトは手紙を胸に、窓の外を見た。風が春の匂いを運んでいた。


「……ありがとう。俺、ちょっとだけこの世界を好きになれそうだ」


 


——おわり。



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