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二人の天使

 東の大陸に着いた一行は、近くにある祠に入り中の人に話を聞いてみた。

 するとこの近くのセテロという街に、エンシェントアイテムに数えられるエデンの盾があるという。

 さらにその街には天使のような人外がいるらしいということがわかった。

 セーラたちはセテロに向かった。


 しかし、魔物たちもエデンの盾がセテロにあることを知り、街に攻めてきていた。

だがこの街は、回りを山あいに囲まれた城塞都市であるため守りが固く、魔物たちの侵入を許さなかった。


 街へ着いた一行は門兵に中に入れてもらった。

だが既にこの街に魔物の一味が入り込んでいたことを、セーラたちは知る由もなかった。


 中に入りあたりを見渡すと、街の一角に盾を持った少年がいる。

彼が天使と呼ばれる人物のようであった。

首から下げた珠は赤く輝いている。

「あちらの天使さんは朱い珠なのね」

「私の碧い珠と何か関係があるのかな」

「まあまず情報収集してみよう」


 一行は彼のことを街の人々に聞いてみた。

 最近までは気の弱い普通の少年だったようである。しかしある日天使として目覚め、呪文やエデンの盾が使えるようになったという話であった。


 人々に話を聞いているとき、一人の男が走ってきてセーラにぶつかった。

「おっとごめんよ!」

そう言うと男はにやりとして去って行った。

「なによ、失礼な男ね。セーラ大丈夫?」

「うん、大丈夫」

「一通り聞き終わったから彼に話を聞いてみるか」


 一行は少年に話しかけてみた。

「わての名前はレイ。わてこそが魔王を滅ぼす天の使いや」

レイはセーラの方を向いて話しかける。

「君も天使と呼ばれている女の子やね。でもヒーローは二人もいらないと思わんか? そこで君が本物の天使であるかどうか試させてもらうよ。このエデンの盾を装備できるかな?」


 レイは盾をセーラに渡した。

 見ると古ぼけた盾である。

 本当に天界産の盾なのか半信半疑ながらも、盾を装備しようとした。

 しかし盾は岩のように重く感じられ、装備することができない。

 そして碧い珠は何の変化もなかった。


「やっぱり装備できないようやね。あとわいはこういう呪文も使えるんや」

 レイが呪文を唱えると、あたりに電撃が走る。

それは人外の物だけが使える電撃系の魔法、ライオットであった。

「君はこの魔法を使えるかや?」

 セーラはうつむいて黙っている。

「さあみんな、これでどちらが本物かよくわかったやろ。偽物の天使は追放や!」


 セーラは兵士たちの手で、すぐさま街の外に放り出された。

「セーラは天使じゃなかったのか……」

「あれだけ違いを見せつけられちゃなあ」

「でもたとえ天使じゃなくたってセーラはセーラよ! あたし連れ戻してくる! それに彼女の身体のことが気になる」

 マリアは街の外に向かおうとしたが、兵士たちに回りを取り囲まれた。

「な、なんなの?」

「君らは今後わいの仲間として、魔王退治の旅に付き合ってもらうで。ええな?」

 そう言い、レイは三人に笑いかけた。


 街を追い出されたセーラは途方にくれていた。

 彼女は天使であることにこだわってはいなかったが、自分の存在理由を否定されたようで悲しかったのである。

 誰か相談できる人がいればと考えながら、ふと以前碧い珠の呪いを解いてくれたオルドを思い出した。

(そうだ、あのおじいなら助けてくれるかもしれない)

 セーラはそう考え、オルドの家が近いミラの街へ飛行魔法で飛んで行った。


 オルドに会ったセーラは、セテロの街での出来事を話した。

「ふむ、事情はわかった。ちとその碧い珠を見せてくれんか」

 セーラは珠をオルドに渡す。

「ふうむ。よく見ると珠にくすみが見えるのう。多分魔物に細工をされたんじゃろ」

「細工?」

「以前の呪いのようなものじゃ。この細工をした魔物の近くにいると、碧い珠の力が封印されてしまうようじゃの」

 そう言うとオルドは再び碧い珠を浄化してくれた。

「ほれ」

「おじいさんありがとう!」

「あとお主は電撃の呪文を、不完全な形で覚えたようじゃな」

「え?」

「ちとじっとしておれ」

 そういうとオルドはセーラに喝を入れた。

 セーラの頭の中で不完全な呪文が消え去り、新しい呪文が浮かび上がる。

「これでお主も電撃系の魔法も使えるはずじゃ」

「それじゃ私、天使なの?」

「そういうことになるかのう。まあ自信を持つことじゃ」


 だがセーラには以前から気になっている疑問があった。

 それをオルドに聞いてみる。

「私、以前の記憶がないの。これも何かの封印なのかな」

「おそらくそうじゃろう。だがわしにはその封印の正体はわからぬ。残念ながらわしにはお主の記憶を戻すことはできんのじゃ」

「そうなんだ……」

 セーラは肩を落とした。

「それよりお主の仲間が気になる。早く行ってやるのじゃ」

「はい!」

 セーラは礼を言って再び飛行魔法を唱えて飛んで行った。

「なぜあやつらが動き出したのじゃ」

オルドはそう呟いた。


 そのころマリアたちはレイと話をしていた。

「この街にあるエデンの盾を狙って、以前から魔物たちが攻めて来てたんや」

「この街には城壁があるじゃないか」

「ああ。ただいくら周りに壁があるといっても、魔物たちを迎え撃つのは大変でな。ちょうどその住処がわかったんで、君らと一緒にやっつけに行こうと思うのや」

「その前にセーラを返して!」

「セーラ? ああ、あの偽物のことか。彼女のことはいまさらもうどうでもいいやないか。君らは力を買われてわてに選ばれたんや。光栄やないかい?」

三人が呆れて黙っているので、レイは話を続けた。


「ここに攻めてくる魔物のボスをやっつけたら、次は天使としての務めを果たすため、魔王退治の旅に出るつもりや」

「俺たちが断ったらどうするんだ?」

「断ることもできるけどな。その場合にはしばらくここにいて兵士たちに自慢の戦術や魔法を伝授せえ」

「なんでオレたちがそこまでしなきゃならないんだ!」

「君らが行かないんなら、君らの代理を育ててもらいたいということや。まあええわ、もう一度聞くで。わての仲間になるかや?」

「ちょっと相談させて」

 マリアが即答を避けた。

「マリア、何かいい案があるのか?」

「ここは一度仲間になって、魔物の住処に行ってからまたここに帰ってくる間に逃げ出すの」

「うまくいくかな」

「仲間になったふりでもしないと、多分この街から出られないと思う。セーラが心配だし」

「よし、それで行こう」

レイの方を振り向いてマリアが言った。

「わかった。仲間になるわ」


 かくしてマリアたちはレイとともに魔物のボスを倒すことになった。

「そんじゃ魔物を退治して来るでー!」

レイが声を張り上げる。

すると街中の人々が見送りに来た。

「きゃー、レイ頑張ってー!」

「兵士はもうかなり消耗している。なんとしても倒してくれよ!」

一行は出発した。

「人気あるのね」

「わいは天の使いやからね」

「見送りの時、兵士が消耗しているとか聞こえたが、そんなに魔物の攻撃は激しいのか」

「兵士たちは交代で一日中街を守っている。魔物はいつ攻めてくるかわからんからな。だけどもうみんなの疲れが限界なんやで」

「そうなのか……」

「だからどうしてもやつらのボスを倒さなあかん。そこでわいは経験豊富な君らの力を借りることにしたんよ」

 レイの話を聞いたマリアたちは複雑な気持ちであった。


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