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やさぐれマリア

 マリアとカイはアレフの亡骸が入った棺を引きずりながら、レムリアの城下町へ戻ってきた。

 そして教会の庭にアレフを埋めて墓を作った。


 セーラとアレフを同時に失って落胆したマリアはやさぐれていた。

 酒をかっ喰らい、高価なアクセサリーを買いまくり、暴飲暴食をして持ち金を全て使ってしまった。

 自暴自棄と自堕落を絵に書いたような生活。

 ヤケになりすぎてカイを夜のお供に誘って性行為をしてしまう程であった。

「どうせ世界は終わるんだから、もうどうだっていいわ」


  ───

 今までの苦労はなんやったんや

 やってられるか


 マリアは段々と口汚きガラの悪さが増していった。

 ノースリーブの脇から見えるマリアの巨乳が、ぷるんと揺れてカイを悩殺する。

 カイはマリアとの二度目の性行為を試みたが、叶うことは決してなかった。


 そうして数日が経った。

 オルドのいる塔が瓦解したとの噂を聞き、二人は塔へ向かう。何となく向かう。

「あいつらにかかればオルドだって一溜りもないだろう」とマリアは思った。

 オルドの真の力は見たことがないが、天使長というくらいだから、ヒラ天使のセーラより少し強いのかもしれない。

໒꒱· ゜



 塔に辿り着くと、中はズタボロで、複数の魔物と天使が倒れていた。

 マリアはぺたんとアヒル座りになり、声もなくそれを見つめた。

 カイはショックの余り貧血を起こして倒れた。


 オルドの姿は見当たらず、倒れた天使の一人が血のついた指でダイイングメッセージを残していた。



 開け 天の聖櫃

 主の名において

 その力に満ちよ

 タナトス・サネントゥール



 かつて、魔と天が争った大戦において、劣勢に立たされた戦局をくつがえす為に、熾天使セラフィムが使用したとされる究極の蘇生呪文があった。

 呪文の触媒は術者の命。

 天使の軍勢のために命を投げ売つ覚悟が、生と死の極限たる呪文の成就を可能にした。

 だが、あまりにも危険であるが故にその詠唱はごく一部の高位の天使にしか伝えられなかったと言う。


「床に書かれたその血文字こそが、究極の蘇生呪文の詠唱である」

 倒れていた天使の一人が、むくりと立ち上がった。

「オルド様!」

「ご無事だったのですね」

 カイとマリアが手を合わせて喜ぶ。

「死んだフリをしていたのだ」

 オルドは衣服についた埃をパンパンと払った。

「記録によれば、この究極の蘇生呪文の成就率は二割を切る低さだ。

 成功すれば失った味方全員の命を完全に蘇らせうるが、使えば術者は必ず死ぬと言われる」


「必ず死ぬ……。」

 カイが繰り返す。

「失敗しても成功しても」

「そうだ。そして成就の可能性があるのはクレリックのマリアだけだ」

 オルドはマリアを指さす。

「駄目だ駄目だ! マリアに何かあったらオレは生きていけない!」

 カイが負けじと喚き散らす。

「何を情けないこと言ってるのよカイ」

 捨て鉢な気分でいたマリアに光明が差した。

「でも、ありがとね…」


「少しでも可能性があるのなら、使うわ……私の命」

「駄目だよマリア!」

「強制はしない。よくよく考えてみることだ」

「オルドさんやって下さいよ」

 急に話を振られてドキッとするオルド。

「私は天使長として、この塔と残っている天使たちを護ってゆく使命がある」

「守れてないじゃないすか」

「……」

「……」

「とにかく無茶はやめてくれよ、マリア。お願いだ」

「カイ…」

「オレ達は似てるよ、だからマリアの考えてる事はよくわかるんだ」


 陽はとっくに落ち、いつしかカイもマリアも寝袋の中で眠りについた。

 オルドはそれを見届けると、塔の隠し部屋にこもってノートパソコンを開いた。

 モニター画面には、天使たちの階級、悪魔やモンスターの種類、その能力などのデータが映っていた。

 セーラたちの情報もその中に記されていた。


 塔のてっぺんからは世界の全ての事象が確認できる。

「主よ、その領域を侵す、私の罪をお許しください」

 オルドは十時を切ると、再び画面を見つめた。



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