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魔天й開祖  作者: 4時間移動の無職
第一章
2/28

セーラ

 気がつくと彼女はそこにいた。

 ふとあたりを見渡す。


(ここはどこだろう)


 そこは広々とした草原であった。

 だが見渡す限り人がいそうなところはない。

 彼女は見覚えのないこの土地で、どこへ向かって歩いて行けばいいのか迷っているうちに、ふと自分が何者かすらわからないことに気がついた。


(私…誰?)


 だが、彼女の記憶のどこにも自分の名前はなかった。

 自分が何者か、なぜここにいるのかが抜け落ちている。

 思い出せるのは薄暗い城で自分の親らしき闇に包まれた魔と争い、負傷し、逃げ出したこと。

 それだけであった。


(うんち)


 催した彼女は自分が持っている物を調べてみた。

 しかし黒い珠が一つあるだけで、手掛かりになりそうなものは何もなかった。


 自分のことを思い出すのをあきらめた彼女は、長く美しい黒髪をかきあげてとりあえず歩き出した。

 そこに居続けることに耐えられなかったのである。

 ところが運悪く三匹のももんじゃに遭遇してしまった。

 ももんじゃはある程度の武具さえ装備していれば、それほど恐ろしい敵ではない。

 だが彼女は何の武器も防具もなく、ただの布の服すらない全裸というありさまであった。


 彼女は危険を感じ逃げ出そうとしたが、ももんじゃに回りこまれてしまった。

 ももんじゃたちは彼女に容赦なく攻撃を加える。

 彼女のHPが徐々に減って行く。

 しかし彼女にはなす術がなかった。


 彼女が死を覚悟した瞬間、何者かが戦闘におどり出た。

 一人は剣を持った大柄な戦士風の男、もう一人の男は魔術士のいでたち、そして三人目は法衣をまとった女性であった。

 三人は瞬く間にももんじゃたちを倒してしまった。

「あなた大丈夫?」

 法衣を着た女性が話しかけてきた。

「このあたりは弱い魔物しかでないけれど、その装備じゃ一人で出歩くのは無謀ね」

 そう言いながらその女性は彼女にヒールをかけてくれた。


「あたしはマリア、この魔術士はカイ、そしてその剣士がアレフ」

「あ、あの…助けてくれてありがとうございます」

「君の名前は?」

 彼女は事情を説明した。

「えー! 記憶喪失で自分の名前も思い出せないの?」

「だったらオレたちの村に来て、ゆっくり思い出せばいい」

「ああ、そうだな」

「じゃあ名前が必要ね。あたしがつけてあげる。えーとね、セーラってどうかな?」

「ありがとうございます。いい名前ですね」

「それじゃセーラ、オレたちの村へ行こうぜ!」


 かくして彼女はセーラという名前をもらい、彼らの村へ向かうことになった。

 村に向かいながら一行は話をしていた。

「何か思い出すような物は持ってないのか?」

「ええ、唯一持っているのがこの黒い珠だけなんです」

「黒い珠…いったい何に使うものなんだ?」

「それが…全然わからなくて…」

「うーん、まあ気長にやるさ」


 やがて一行は目的地についた。

「ここがオレたちの村、アルメリアだ。旅立ちの村とも呼ばれている」

「旅立ちの村、ですか?」

「そう。この村にははるか昔魔王を倒すため、勇者がここから旅立っていったという伝説があるんだ」


 みんなが入り口で話をしていると、マリアがセーラを街の中に引っ張って行った。

「さあ、中に入りましょう。セーラ、村を案内してあげる!」

「やけに張り切ってるな」

「マリアは年の近い女友達がいなかったからうれしいんだろう」


 セーラはマリアの家に滞在することになった。

マリアは村長であるジムラの孫である。

 その大きな屋敷にセーラは驚いた。

 屋敷の中を見て回るうち、ある部屋の壁に大斧が唐突に飾られているので眺めてみる。

「その斧、あたしたちは家宝の斧って呼んでるんだけど、今まで誰も装備できた人がいないんだって。だからどのぐらいすごい斧なのかわからないの」

 興味がわいたのかセーラはしばらくその斧に見入っていた。


「さてこのぐらいで大丈夫ね」

「え?」

「セーラの装備を一通り用意したの」

「マリアさん…いろいろありがとうございます」

「マリアさんじゃなくてマリア! なんか他人行儀で悲しいな」

「あの、いえ、そんなことは…」

「くすくす、冗談よ。それより本当に友達として接してくれるとうれしいわ」

「は、はい!」

「それじゃお風呂にでも入りましょうか」


 そのころアレフとカイが話をしていた。

「おい、アレフ。彼女、何者だ?」

「セーラか? そんなことわかるわけないだろう」

「だけど何か引っ掛かるんだ」

「カイ、おまえは心配性だな。そんなに心配ならずっとセーラを見張っているか? ついでにマリアも見張れるぞ」

「な、何バカなこと言ってるんだ! とりあえず何事も気をつけた方がいいと言ってるんだよ」

「わかったわかった。俺も気をつけるよ」

だが二人が予想だにしないことが、この平和な村に起こるのであった。


 それからカイはいつものようにマリアの風呂を覗きに行った。

 覗き穴から見える脱衣所にはセーラも一緒にいて、マリアだけが全裸であった。

 カイはますらおを握りしめてマリアの股間を凝視した。マリアは隠毛が濃かった。

(たまんねぇなあ…マリア)


「あら、どうして服を脱がないの? セーラ」

「そ、その…」

「女同士なんだから恥ずかしがることないわ」

 マリアは巨乳をぶるんっと震わせながらセーラの衣服を剥ぎ取ろうとしていた。

「マリアさん、やめてください~!」

「いいから脱ぎなさい!」

「ああっ」

 服を破かれてしまったセーラの股間には、ますらおが猛々しく屹立していた。

 胸と隠部をサッと手で隠すセーラ。

「セーラ、それ…」


 カイは射精しながら思った。

「やはり。あの女は何かある」


 その頃、部屋で映画を観ていたアレフはただならぬ気配を感じていた。

「なんだ? やばいモンスターが街に入ったか?」

 画面を一時停止してパンツを履き、装備を整える。

「ちっ! 珍しくカイの予感が当たったのか? まさかな…」

 ドアを蹴破って勢いよく外に飛び出すアレフ。

 平和で暖かな陽はもう暮れかけていた。



 脱衣所では全裸のままのマリアが目を血走らせてセーラに詰め寄っていた。

「あなた、男の子だったの!?」

「……」

「でも胸もあるわね」

「あ、あんまり近くで見ないで」

「無駄よ。乳もちんこも手からはみ出して隠し切れてないわ」

「みんなには内緒にしてください…」

 涙ぐむセーラ。

「セーラ。あなた魔族ね。抱いて」

「ごめんなさい…私わからんのです。何も覚えてないんです…えっ?」

「内緒にしてあげるから、あたいを抱いて」


≪メイス≫


 ガチャリと鍵の開く音がして、ノックもせずカイが普通に入ってきた。

「そこまでだ。仔猫ちゃんたち」

(もう少し覗いていたかったが仕方ない)

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