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ヘドロの末路

 私は全てを手に入れたい、力も、世界も……。

 ヘドロスライムたちが湿原の奥に踏み込むと、蝿と竜を足したような小型のモンスターが多数襲ってきた。

「くっ……こいつら我らの眷属ではないようです!」

 まとわりつかれ狼狽するバルガ。

「鬱陶しい蝿め」


«ナパームデス»


 ヘドロスライムは爆炎流動の呪文を唱えた。

 炎の球が燃えながら周囲に飛び散り、次々と敵を焼き払う。

「すげぇ……」

 凄まじい破壊力とその拡散性にバルガは慄いた。


 更に奥へ進むと、こんもりとした人体の頭部のような草の塊が生い茂る洞窟の入口が見えた。

「あそこか」

 ヘドロスライムを背に乗せたバルガは、恐る恐る洞窟内に足を踏み入れる。

 中には夥しいコウモリの群れが飛び交っていた。


 内部は一本道で、しばらく歩くと視界が開けた広い場所に辿り着いた。

「何者か……」

 地の底を這うような低い声。

 そこには深紅の角を二本生やし、漆黒の鱗が幾重にも重なった動体を持つ巨大な竜が佇んでいた。

 脇にはそれより幾らかサイズが小さい幼竜が二体いる。


(ひええ……でかすぎる!)


 バルガが逃げ腰になり後ずさる。

 ヘドロスライムは小針を突き刺してそれを制した。


「あなたがこの地を守護する竜か?」

 ヘドロスライムが問う。

 漆黒の竜はそれに答えず更に訊いた。

「財宝を狙うものか」


(さすがは伝説の地の主、すぐには襲って来ぬ)


 ヘドロスライムはフッと鼻で笑いながら巨大な竜を見た。

 幼竜の一匹が苛立たしげに翼を羽ばたかせる。


「私はファイアクレストと呼ばれる秘宝を探しに来た。無益な戦いは好まない」

 ガタガタと震えるバルガのせいで、ヘドロスライムの身体は常に上下に揺れていた。

「愚か者め!」

 漆黒の竜は大地が震えるような大声で答えた。

 と同時に幼竜の片方がカパッとその口を開く。

 強い酸性のブレスが煙を立ててヘドロスライムを襲う。


«レジスト・ブレス»


 ヘドロスライムとバルガの眼前に薄いヴェールが出現し、ブレスを無効化する。

「この私に」

 ヘドロスライムは更に呪文の詠唱を始める。

「そんなものが効くと思うか!!」


« エクレールラルム・プリズン»


 幼竜の四方に火柱が取り囲み✕印を切る。

 火柱の中央で大爆発が起きる。


「ポピッ!」

 漆黒の竜が叫んだ。

 さしづめその幼竜の名前か何かだろうとヘドロスライムは哄笑した。


「貴様ら……」

 消し炭と化した幼竜を見て、漆黒の竜はいきり立った。

「何びとたりともこの地は穢させぬ」

 鋼鉄の鱗からなる巨大な翼をバサバサと羽ばたかせ、漆黒の竜は突風を起こした。

 バルガは吹き飛ばされそうになるのを爪を立てて耐える。

「まったく、先に手を出したのはそちらだというのに」

 ヘドロスライムは呆れながら呟いた。

 その刹那、漆黒の竜の巨躯がヘドロスライムの視界から消えた。

「なにっ!?」

 ビュンッと残響音だけがあり、かまいたちのような扇風による切り傷がヘドロスライムの流動的な皮膚を切り裂いた。

 振り返ると、遥か後方で漆黒の竜が着地するのが見えた。

 バルガは身を隠そうと何事か喚きながら素早く岩陰に走った。


「必要ない!」

 ヘドロスライムは一息に呪文の詠唱を終えた。



«エクスプロード»


 ヘドロスライムの前方と後方に印が結ばれ、漆黒の竜と残りの幼竜の周りを囲む。

 地面から天井へと爆風が吹き上がった。


「コ・ノ・鼠ガアァァァァア!!」


 絶叫と共に二匹の竜の巨躯が煙を立てて爆散、そのまま蒸発した。



 静けさを取り戻した洞窟内。

 漆黒の竜が座していた向こうの宝箱には、煌びやかな財宝が入っていた。

 中には小さな十時の紋章があり、これがお目当てのアイテム『ファイアクレスト』であるとヘドロスライムは確信した。


「はははは、ついに手に入れたぞ」

 満悦らしい笑い声を上げてヘドロスライムはアイテムを使用する。

 ゲル状の身体が崩れ落ちると、みるみるうちにヒトの形が作られていく。

 バルガの背の上で彼女は可憐な少女へと変態した。

 そしてバルガに跨った状態で少女は喜びの笑みを浮かべると、ガクンと脱力して地に落ちた。

「な……ぜ……」

 掠れて声にならない落胆の言葉と一筋の涙が彼女の頬をつたる。

 バルガが少女の身体を舐め上げると、脇腹がざっくりと裂けて流血していた。


「相打ちかよ……」

 バルガはそう呟き、元ヘドロスライムであった少女を咥えて再び背に乗せた。



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