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決意

 天使長オルドは魔と天が生まれた起源について語り、滅ぼすべき敵は魔の始祖である古の魔導師と、彼が作り上げる魔族の父だという事をまずセーラ達に伝えた。


「そんなとんでもない奴がオレ達の敵なのか…」

 カイが怖気付く。

 ほんの数刻前に死にかけたのだから無理もなかった。


「古の魔導師は、天使たちの血と頭骨からなる怪物を作り上げようとしている。

 唯一の弱点である、『天使属性』による『魔族特攻』を克服した個体、『ニーズ・デス・ヘックス』と呼ばれる悪魔の秘術がそれを可能にしている」

 オルドは悲しげな微笑みを浮かべて語りかける。

「セーラ、お前の記憶に、魂に、恐らくプログラムされているであろう。お前の使命は魔の父を討つこと、その為にお前は生まれ、転生したのだ」

 セーラも何かを悟ったような、迷いのない表情でそれを聞いていた。


「それと、アレフだが、セーラと同じ方法で復活させるしか手はない」

「同じ方法って、まさか」

「すまないな……魔族に殺された人間の魂は、私たち天使の力でも甦らせることが出来ない、他に方法は無いのだ」

「アレフもセーラみたいになるの!?」

「いや、動物や普通の人間は、生前の記憶や善性を消失して、魔族の手先として生まれ変わる。お前たちが戦ってきた魔物は、古の魔導師が魂を削って生み出していた物なのだよ」

「そんな……こと、が……」

 口に手を当ててマリアが不快感を露わに示した。


 途方もない話に、一行は頭の整理が追いつかなかった。

 カイはマリアの分厚く艶っぽい唇と血管が浮き出た白い手をチラチラ見た。

 そのマリアはアルメリアで初めて見たセーラのあの立派な益荒男と魔族の話を思い出していた。

 マリアがずっと触れずにいた話題。

 話せばセーラは遠くに去ってしまうとあえて避けてきた話であった。


 その時、全てを思い出したセーラの姿に変化が起こった。

 聖光気に満ちたこの空間で、セーラの髪は黒色から雲一つない青空のように広がっていき、ぼんやりと透けた身体を彩り、以前より幾ばくか大人びた表情の女性へと変わった。

「綺麗……まるで晴れた冬の朝みたい」

 マリアは目を細めてその姿を眺めた。

「また、行くのだな」

 オルドの問いかけにセーラは頷いた。

 父に会いに、そして全てを終わらせるために。

「セーラよ、魔族の住処で今のお前が力を解放すれば、その身体に再び翼を取り戻すであろう、しかしそれは天使ルーテの羽根ではなく、いや……」

 そこで口篭るオルド。

「聖光気を込めたこの腕輪をお前に授けよう」

 オルドは虹色に輝く腕輪をセーラに渡した。

「腕輪がお前の自我を保ってくれるはずだ」

 セーラはお礼を言いそれを受け取る。

 透き通った身体に天使の腕輪を身につけ、セーラはマリアたちのほうを振り返った。

「二人はここで待っていて」

 コクコクと頷くカイ、しかしマリアは意を決したような表情で言った。

「私たちも行くわ!」

 その言葉に目を見開くカイ。

「アレフを生き返らせてもらうんだから」

「マリア……」

「そ、そうだ、雑魚狩りなら任せてくれ」

 泣き顔のカイが続ける。

「カイ、ありがとう」


 一行は塔を降りて再びデスキャッスルに向かう。

 セーラの身体は再び肉体を取り戻していた。



 その頃、クリムゾン島の遥か上空に浮かぶ浮遊大陸『ドラゴンズヘヴン』では、ヘドロスライムがバルガを駆って大地をくまなく探していた。


「人間になったらその……御力はどうなってしまうので?」

 バルガは期待を込めてヘドロスライムに訊いた。

「無力になってしまったらバルガ、お前はどうする? 去るか? それとも私を殺すか?」

 思考を読み取られたかのような答えに、ギクッとするバルガ。

「あひっ」

 言葉に窮したバルガに、ヘドロスライムは再び身体から出した小針でその背を突き刺した。

「その前にまず、アイテムの守護者を倒さねばな」

 ヘドロスライムの目的である転生アイテムは、この地に住まうエンシェントドラゴンが守っていると言われる。

 かつてアイテム奪取に挑んだ猛者たちは、ことごとく返り討ちにあいその命を散らしていった。


 砂漠の向こうに緑のオアシスが見えてくる。

「主さま」

「あぁ。恐らくあそこだろう」

 近づくとそこには広大な湿原があった。

「戦いの準備は整っているか? バルガ」

 そう言いながらヘドロスライムはまたバルガの背に小針を突き刺した。

「うわひぃ!!」

 バルガは叫びながら返事をした。



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