ヘルキャッスルの攻防
一行はヘルキャッスルに辿り着き中へ入って行く。
入り口でセーラはなぜか違和感を感じたが、それ以上は気に留めなかった。
中は広く迷路のようになっており、次々と魔物が現れる。
さすがに敵の本拠地である。
四人は現れる魔物たちを倒しながら進んでいった。
二階への階段と外気の入る広い露台を見つける。
そこで待っていたのは黄金の騎士であった。
「ようこそ。魔天使とその仲間たち」
黄金の騎士は、全身金色のフルアーマーで、脚がいくつもある灰色の馬に乗っていた。
手には暗い剣を携え、刀身からは血が滴り落ちている。
まるでたった今誰かを斬ってきたばかりのような。
騎士はゆっくりとセーラ達を見回した。
「そして、さようなら。スレイプニル!」
そう言うと騎士は馬を駆り、襲いかかってきた。
目にも止まらぬスピードで距離を詰め、剣でアレフの腹部を貫いた。
「ぐあっ」
「アレフ!!」
「なんて速さなの!」
「マリア、早くヒールを」
騎士は更にそばでヒールをかけようとしているマリアに斬りかかる。
セーラが天使の鉞でその剣を防御する。
背後に飛び退く騎士。
アレフは口から血を流し絶命していた。
泣き叫ぶマリア。
圧倒的な力の差にパーティーは退却せざるを得なかった。
「ガルガルッ! 逃げられると思うなよ!」
しかしアレフを担いだカイが、階段を降りてきた獅子の魔物と鉢合わせ、その鋭い爪で切り裂かれた。
「あぐぅぅ」
防具無視で裂かれたカイの胸から大量の血が吹き出す。
「キャアッ!」
マリアが悲鳴をあげてその場にへたり込む。
(このままでは全滅する……!)
セーラは慄然とした。
以前のような空間転移魔法の魔力も感じられない。
助けは来ない。
セーラは迷わず碧い珠をまさかりの柄の穴に入れた。
天使の鉞が碧く輝き出す。
「ふざけないでよ…」
セーラが呟くと鉞は更に強く光りだした。
気合いとともにセーラは近くの獅子に殴り掛かった。
獅子の魔物は爪で防御する。
(ギィィィン!)
「何だと!?」
獅子の太く鋭い爪が砕ける音が響く。
「あれが…我らを傷つけることのできる武器か」
黄金の騎士は剣を斜めに構え直した。
マリアは大怪我を負ったカイに必死でヒールをかけている。
アレフは倒れたままピクリとも動かない。
「三人目」
騎士は正面、獅子はセーラたちの背後に回り込む。
«インディグネイション»
セーラは雷光招来の呪文を唱えた。
轟音とともに幾筋もの雷が騎士と獅子の周囲に降り注ぐ。
しかし効果が無かった。
(やっぱり、魔法は効かない)
セーラは焦っていた。
早く離脱してカイの治療をしなくては、手遅れになる。
「マ、マリア」
血まみれのカイがマロールリングをマリアに渡した。
「アレフが…呪いを…かぶってくれたようだ」
荒い息使いでカイが話す。
「このリングは…一度だけ、マロールの魔法が…使える」
「カイ、喋らないで! 傷口がまた…」
「マリア! 早く!」
仲間をかばい敵と対峙しているセーラが叫ぶ。
既に黄金の騎士と獅子の魔物は、セーラたちの眼前まで迫ってきていた。
«マロール»
霧のような光が四人を包み球体になる。
「ガルッ! またしても逃げる気か!」
獅子の怒声が遠くなり、球体はその場から消えた。
マロールの座標は天使長オルドの塔を示した。
玉座に座るオルドの前に光の球体が出現する。
マリアのヒールのおかげで何とか一命を取り留めたカイがマリアの巨乳に顔をうずめた。
「マリア! ありがとう。オレ死ぬかと思った」
「カイ。良かった……」
マリアは涙目で微笑みながらカイの頭をどかした。
「でもアレフが」
三人は沈黙する。
「あやつらの身体は強力な魔光気で守られている。人間のお前たちでは荷が重かったようだ」
「オルド様! アレフを助けられませんか」
セーラが縋るように訊ねる。
「残念だが、万物の命は代償なしに蘇ることは無い…」
「代償?」
「セーラ、お前の記憶は全て戻ったわけではないのだな」
「はい」
「お前の身体は天使ルーテと闇の魔導師の魂が融合して産まれたものだ」
「闇の……」
「今こそ明かそう。お前の出生と敵の正体を」
オルドは玉座から立ち上がった。




