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彼方

 カイとアレフは懸命に手掛かりを探していたが、未だに何も掴めないでいた。

「次はどこへ行けばいいんだ」

「残り時間を考えると、洞窟や塔を探している暇はないな」

「街や村ってことか。そう言えば、ハムルの街にあった開かずの蔵にあるということはないか?」

「たとえあそこにあったとしても、蔵を開けられない以上はないのと一緒だ。あそこは除外しよう」

「くそー、後はしらみつぶしか! 間に合うのか!?」

 そのうち空が白んできた。

「夜が明けたか」

「遅くとも昼までには見つけないとセーラが危ない!」


 朝になったので、二人はエルフの里に向かった。

 そして女王に会い、聖光気の指輪のことを聞いてみた。

「聖光気の指輪と魔光気の指輪のことは知っています。しかし私は聖光気の指輪が天使の持ち物であったということしか聞いたことがありません。おそらく他の天使の装備と一緒に保管されていたのではないかと思います」


 二人は女王に礼を言いその場を去ろうとすると女王に呼び止められた。

「お待ちなさい。以前エルフのルビーを返していただいたときに、お礼をしていませんでしたね。これをお持ちなさい」

 エルフの女王から賢者の石を渡された。

 丁重にお礼を言うと二人はエルフの里を後にした。


「天使関連の装備があった街は四つしかないが、どこから行くか」

「それなんだが、アルメリアの天使の斧があった倉庫って、オレたち中を確認してないよな」

「確かにそうだな。忘れていた」

「魔物は天使の斧しか眼中になかった。もしかしたら他に何かあるかもしれない」

「よし、あたってみよう」


 二人はアルメリアに飛んだ。

 アルメリアに着き天使の斧があった倉庫に行くが、扉は閉まっている。

 カイの解錠呪文とアレフは魔法の鍵で倉庫の扉を開け、中に入って行った。

 二人で中を探していると、カイが叫んだ。

「おい! あったぞ宝箱が!!」

「おお、開けてみよう!」


 中には指輪が入っていた。

「これが聖光気の指輪か? 光っていないからよくわからんが」

「一緒に手紙が入っている」

 カイは手紙を読み始める。

「『聖なる指輪は聖なる力なり。聖なる力宿りし物その力とならん』 なんだこりゃ」

「とにかくセーラのところへ戻ろう」

 二人は急いでミラへ向かった。


 宿屋に着くと、カイはマリアに手紙を見せた。

「どう思う?」

「これはやっぱりあたしが指輪をはめて回復魔法を使うんじゃない?」

「そう思うよな」

「じゃあやってみる」

 マリアは指輪をはめてみたが、特に変化はない。

 次にヒールを唱えるが、何も起こらなかった。


「やっぱり碧い珠には関係ないアイテムなのかしら」

「しかしもうこれぐらいしか手掛かりがないぞ」

「カイ、エルフの女王は指輪のことを、天界の装備と言っていなかったか?」

「そういえばそうだったな」


 マリアはセーラの指に指輪をはめてみた。

 指輪がセーラの指のサイズぴったりになる。

「どうやら当たりだな」

 マリアは再度ヒールを唱えた。

 指輪が青く光だし、その光が碧い珠へ吸い込まれていく。

 そのままヒールを唱え続けると、碧い珠はその輝きを取り戻した。

 そしてセーラは目を覚ました。

「セーラ!!」

 マリアがセーラに抱きつく。

「マリア、どうしたの?」

 セーラの戸惑うような表情が、今の三人には限りなく嬉しかった。


「みんな、ありがとう。わたし…思い出した事がたくさんあるの」

「どんなこと?」

 マリアが優しく訊ねる。

「うん……」

「言いたくなかったら無理に言わなくてもいいんだよ」

「カイ!」

 重苦しい沈黙。

「わたしは…一度死んで、魔物の触媒によって蘇った。この身体は魔族から産まれたものなのよ」

「なんだって!」

「そんな…じゃああの敵が言っていたことは…」

「魔族だろうと関係ない、セーラは私たちの仲間だよ!」

 マリアが泣きながらセーラの手を取る。

「しかし、いつかオレたち人間の敵になるかもしれない」

 アレフはそうはならない事を祈りながら呟いた。

「ならないよ! セーラは友達だもん。いつも私たちを助けて…くれ…た」

 言葉に詰まりマリアは嗚咽して膝から崩れ落ちた。

「天使は地上に降りるとき、その力の殆どを失う」

 セーラは泣きじゃくるマリアを悲しそうに見つめ、落ち着いた声で言った。

「だけど、わたしは父を殺さなければいけない」

 セーラの声と表情は厳しい言葉とは裏腹に果てしない慈愛に満ちていた。

「わたし本当の名前も思い出したよ。でも、セーラとして生きたい」

「セーラ!」

 セーラに抱きつくマリア。

「みんな、また一緒に戦ってくれる?」

 母親のように穏やかな、そして消え入りそうに静かな声でセーラは訊いた。

「お、おう! 当たり前じゃないか!」

「セーラはセーラだよな!」

 アレフとカイは疑い恐れる気持ちを心の奥にしまいこみ、とりあえず彼女が味方であることを信じた。

「ありがとう」

 セーラは寂しげに答えた。

 自分の運命を呪うことよりも、マリアたちに出会えたことに感謝した。

 さようなら…その言葉を言っておかなければならなかったが、今のセーラにはまだ言えなかった。

 

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