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始祖の魔
古の闇に住まう魔導師は静かに語った。
───かつて大地には、高度な文明を築き栄えた国があった。
科学者達は、長く続く争いを無くそうと人々の善と悪の思念を制御する研究を続けてきた。
そしてついに、それらを別の空間に蓄積し隔離する術を生み出した。
しかし、その思念は人の手に負えぬほど膨張、暴走し、二つの異なる次元は全ての生命を飲み込んだ。
我はいつからか生命として闇に居た。
あまりにも長い年月を生きたため、いつ誕生したのかすら記憶は曖昧となっていた。
確かに我は、荒廃した何も無い暗き灰色の大地から、再び水と緑と新たな知的生命が誕生し、ヒトに進化していく過程を見届けた。
ヒトは消滅する以前の、かつてと同様に進化を遂げていったが、ただ一つ違うのは、隔離されたはずの二つの次元から直接干渉を受けていた点であった。
人々はそれらの超越した存在を畏れ、敬い、その言語の一部を解読し、契約を求め、力を借り、争いに使用した。
二つの次元はそれぞれ「魔」と「天」と呼ばれた───。