三話
「ここに行ってくれ」
ライカさんが真剣な眼差し、声でそういい、目の前にはある学園のパンフレットが置かれた。
「なんで……今更」
驚いた表情。
今更、いく必要がない。
「お金をかけてまで……どうして」
相当、お金がかかる。
行く必要にないような学園に通ってどんなメリットがあるのだろうか。
「君は、戦士としては完璧だよ。でも人としては……あまりにも未熟すぎるよ」
悲しそうな表情をしている。
人としての力?
どういう力なのかよく分からない。
「でも……それでもさ」
反論しようとするが、その時間もくれない。
「でもじゃない!もう決定事項だから」
パンフレットには『グレモール学園』と記されていた。
「しかも、グリモール学園って……。騎士を育てる学校じゃないか」
「そうだね……でも、もう前に進もうよ」
すごく神経に衝撃が走った。
確かに俺はずっと逃げてここまできた。
騎士だった時の仲間は今どこにいるか知らないがその人たちにもすまないと思っている。
「わかったよ……」
俺は、ライカさんの決定を受け入れ、前に進もうと決意する。
そして、現在。
俺はライカさんとの日々を思い出していた。
『編入式を始めますので、編入生は体育館に集まってください』
集合の放送が鳴り響いた。
もう時間のようだ。
俺は決意して校門から学園の中に入った。
流石この辺でトップクラスの実力を誇ると言われているだけあって相当の大きさだった。
「体育館は……」
俺が最後かと思っていたが案外まだ、全員揃っていなく、今から体育館に向かっているだろう人たちが見受けられる。
パンフレットには丁寧に体育館の場所までが記されていた。
「ここか……!」
その時にはもう誰も体育館に向かい入って行く人はいなかった。ただ、俺を除いては……。
「やっぱり多いな……」
俺はやっとの思いで自分の席に着いた。
俺の席は体育館から見ても端っこにある。
個々の出席番号は強さによって決まっている。その強さを決めるのがランキング戦だ。
そのランキング戦に勝つことにより、クラス、出席番号が決まってくる。
俺が編入試験で取った成績によるとFクラスでそれも最下位らしい。
「これより……編入式を行います。それではまず開会式の挨拶をキイチくん。お願いします」
そう言うとステージの前に立った男子生徒がいる。見た目は超体育会系の彼ははっきりとした声で宣言をした。
「これより、編入式を行います」
そう言うとすぐにステージから降り、司会者の副会長がいるところまで戻っていく。
「続きましては、生徒会長の挨拶」
副会長がその言葉を言った瞬間、会場は拍手の渦に巻き込まれていった。生徒会長はそれに慣れているかのように挨拶を始めた。
「編入生……いや、新入生のみなさん。ようこそ!グリモール学園へ……」
生徒会長が話し終わり、声を張ってそう言うとシーンとしていた体育館は再度拍手の渦に巻き込まれた。
さっきまでの静かな体育館が嘘のようだった。
「では……15分間の休憩をとります」
編入式の半分が終わったところで休憩の時間になる。
この時間にトイレに行っといたほうがいいと判断した俺は立ち上がり体育館の出入り口に向かい、トイレを探し始めた。
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