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異世界誘拐事件録  作者: 明智吾郎
ChapterⅠ 渡来
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遭難

 目が覚めると、古びた小屋の中だった。暖炉の前に横たわっていた俺は、体にかけられた毛布を払い、辺りを見渡す。


「……ここは……」


 ポケットにしまっていたはずの拳銃が見当たらない。あの雪山に放り出されたときに落としたのか。焦って周囲を探すと、机の上に見覚えのあるそれが置かれていた。


 すかさず駆け寄って手に取った、そのときだった。


 ガチャリ――。


 小屋の扉が音を立てて開き、猟銃を背負った男がゆっくりと中へ入ってくる。


「動くな……!」俺は思わず拳銃を構えた。


 だが、男は落ち着き払って言った。


「おぉ、起きたか。早速物騒なもんを持っておるが、残弾は確認したかの?」


「……は?」


 言われるままに確認してみると、弾がすべて抜き取られていることに気づく。俺は舌打ちしながらも拳銃をポケットにしまった。


「諦めるんじゃな。わしには勝てん。まあ、安心せい。敵意はない」


 男は猟銃を壁に立てかけると、やかんに水を汲み始める。


「わしの名はコロウ。このスモーク山で猟師をしておる。……お主の名は?」


「浪野悠だ」


 彼は頷くと、棚からマグカップを二つ取り出し、見慣れない茶葉のパックを入れて沸かした湯を注ぐ。柔らかい香りが立ちのぼった。


「紅茶は飲めるか?」


「ああ、もらう」


 俺がマグカップを受け取ると、コロウも椅子に腰を下ろした。その目が、じっと俺を見据える。


「その身なり……お主、この地の者ではないな? 一体どこから来た? なぜスモーク山道にいた?」


「それが、俺にもよくわからない。……パーティー会場で誘拐された子供たちを見たはずなんだが……あれは夢だったのか……」


 記憶はまだ断片的で、靄がかかったようにはっきりしない。コロウは静かに紅茶を啜ると、低くつぶやいた。


「何やら、訳ありのようだな。……まさか……」


「なんだよ、言いたいことがあるなら言え」


「誘拐された子供、と言ったな。その子供、海賊にさらわれたんじゃないか?」


 その言葉に、あのドクロのマークが頭にちらついた。


「まさか……海賊が犯人だってのか?」


「もしそうなら、思い当たる海賊がいる。奴らの名は――ティード海賊団。人身売買で悪名高く、世界的に危険視されておる連中だ」


「教えてくれ、コロウ……俺は一刻も早く、恋人を取り戻さなきゃならないんだ!」


 だが、コロウは首を横に振った。


「やめておけ。お主が太刀打ちできるような相手ではない。奴らは並行世界を自在に移動し、必要とあらばどこへでも逃げ隠れできる。王国の監視の目すら欺いてきた、狡猾な連中だ」


 そんな馬鹿な話があるのか……と、思いたかった。だが、あの仮面の貴族たち、檻の中で泣き叫ぶ子供たちの光景を思い返せば――すべてが現実だと認めざるを得なかった。



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