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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ニッチでエッチなダンジョンが生まれました

◆あらすじ◆

ダンジョンは『魔物』である。我々人間と同じように魔力コアを持ち、生きる糧を己の体内に招き入れる待ち伏せ型の魔物である。人間に多様性があるように、ダンジョンもまた場所やその周辺に住む魔物によって千差万別に変化、成長する。ところでとある辺境の森に小さなダンジョンが生まれた。それは他のと比べて一癖も二癖もある特殊な罠が仕組まれているようだ。今そこへ二人の初々しい冒険者が調査に赴いている。果たしてどんなダンジョンなのだろうか……。




・魔力コア

 魔力コアの歴史は長い。端的に言えば世界中に充満した魔素に適応するために進化した生物"魔物"が体内に持つ結晶体。

※昔はごく一部でのみ適応した生物を魔物と称し、それらの被害による戦いが沢山起きていた。しかし魔素は広がる一方で生物は全滅しかけたが突然変異と進化の繰り返しで環境適応に成功した。

 魔素の源であり固有情報の塊でもある。全ての魔物に存在し、人間だと胸の中央(心臓の右隣)にある。コアは融和性が強く他人のコアを捕食すればそのコアの一部を手に入れることができる。だがコアは吸収したとしても内部で独立しているらしく、持ち主より吸収したコアの比率が多くなれば乗っ取られる場合がある。過去にそれらで事件が多発し、いつしか人間の間では魔力コアの吸収は禁忌とされてきた。しかし中にはその法を犯すものがいて、獣化した者たち、その子孫含めて亜人と呼んだ。

ドラゴンなど数多の魔物の頂点に立つ絶対者は自身の持つ魔力コアがあまりに大きいため、格下の小さい魔力コアを吸収しても影響はなく、ただ強化されるだけという。



◆用語解説◆

・魔力コア

魔物が内蔵する結晶体。生物が魔素に適応するため進化したその産物。空気中の魔素を取り込み中和し蓄積する。

・魔素

世界中に存在する不可思議な物質。耐性の無いものがこれを取り込むと即座に汚染され死亡する。

・魔物

魔力コアを持つ生物。知性がある魔物は魔法を駆使する。遠い昔は魔素に侵された生物のことを指し駆除対象だった。

・魔法

魔素をコントロールすることで起きる超常現象。魔力コアを介して様々な現象を引き起こすことが出きる。ただし魔力コアに蓄積された魔素が無くなれば使えなくなる。

・魔力コアの吸収

生きている魔物は死んだ魔物のコアを吸収することが出来る。すると取り込んだ魔物は力を得る。その代わり大量に取り込むと元の人格より吸収したコアの情報量が勝ることで乗っ取られる可能性がある。知性の低い魔物は本能でコアを食べず。人間は禁忌として法律で禁じられている。

・亜人

法を侵し大量のコアを吸収した人間の成れの果て。取り込んだ知性の無い魔物に人格が乗っ取られ獣のような行動をする。ただ近年は亜人同士の交配による突然変異で知性を取り戻した例が多くなり地位は下だが人間社会に馴染めるようになった。

・ダンジョン

魔物の中でも特異な存在。周囲に擬態し口を開けて何かが入るのを待ち続けタイミングを見て捕食する。祖先は動物だったのだろうが大量の魔力コアの吸収と何世代もの時を経て生物でありながら多数の人格を有しても崩壊せず、ただ貪欲に魔力コアを求める魔物となった。繁殖方法だが、単一生殖のようで一定量の魔力コアを有した後、それを分離させ侵入してきた魔物に吸収させて追い出す。そして別の場所に移動した魔物はダンジョンの魔力コアに侵され自害し、その地に新たなダンジョンを形成する。

・ダンジョンの構成物

擬態しているだけで表面を削れば内臓が露になる。魔物だけあって内臓を傷つけると血が出る。ただし魔力コアによる自己修復で瞬時に元に戻るので殺すにはコアを直接破壊するしかない。



















◆『ダンジョン攻略指南』◆



 第一項第一節

『ダンジョンは非動物型魔物の一種である』


 読者がこの本を取るにあたってまず知って欲しいのは、魔物には多種多様性があると言うこと。特に我々人類を基準に比較してはいけないこと。この二つを留意して欲しい。

 始めに魔物とは何かを軽くおさらいすると、厳密には魔物とは魔力コアを擁する生き物であり、我々人間や亜人もこれに該当する。だが言葉を介さない魔物とそうでない者と区別するために我々は敢えて自分達を除外し彼らを魔物と呼ぶ。

 筆者はその価値観に憤りを覚えるが、話を戻そう。つまり何が言いたいかと言うと、ダンジョンにも存在するのだ、魔力コアが。


 第一項第二節

『ダンジョンは口を開け、獲物を誘う』


 君たちの思うダンジョン像はおそらくこうではないだろうか?

「なぜか宝が無尽蔵に置かれ、来る者を罠に掛けて殺す場所」と。

 ある意味正解だ。しかしそれは客観的に過ぎず本質を語れていない。正確には、

「先駆者の遺品を擬似餌として生産し、来るものを罠に掛けて捕食する」だ。


 では捕食する理由は?と思うかもしれないが、それは至極単純で我々が魔物の魔力コアを利用すると同じように、ダンジョンも魔物の魔力コアを糧に生きているのだ。そのダンジョンが食すモノの割合で一番多いのが我々人間だったと言う訳になる。

 君たちは海底に住む提灯アンコウを知っているだろうか。もしくは樹海などで見かける食虫植物はどうだろうか。あれらは皆同じように罠を仕掛け、獲物がかかるまで待つ、待ち伏せ型の生物だ。

 そう、ダンジョンはそれらの大型かつ知能的な魔物と言うわけだ。


 ではダンジョンが魔物、生物だとしてその存在理由はなんだろうか?

 哲学的な話と思われそうだが、我々人類がこの世界の食物連鎖の一部なら、ダンジョンはどういう位置付けなのだろうかと言う疑問のことだ。

 この問いを求め我々は十数年の調査をもってある仮説を立てた。この自然界の"浄化装置"ではないかと。

 浄化装置とは簡単に


「他の動物や人のように生まれ、他者を喰らい成長する。その生体は世界の浄化装置といわれ、過剰繁殖した種などを減らすためといわれている。

コアと呼ばれる丸い水晶があり、それを壊されると形成したごと死ぬ。食虫植物のように獲物を引き寄せるエサを用意し、誘われダンジョン内で生き物が迷い混めば壁に引きずり込み糧とする。ただし取り込むのに時間がかかるため、死に体や拘束されて動けないモノなどがターゲットとなる。なのでダンジョン内では随所に動けなくする罠が張り巡らされている。

そんな危険な場所へなぜ入り込もうとするのか。その引き寄せるエサというのはダンジョンや環境によって千差万別である。

まずダンジョンは生まれながらにして迷い込むような複雑な地形を生成することはない。生まれたばかりのダンジョンは小動物しか入れないような小さな縦穴なのだ。この縦穴にそのちょうど入れる動物が住みかにしたり、あるいは落とし穴のようにハマって中に入る。そうするとその動物は寿命を迎え、やがて死体となる。あるいは死に体の餌を持ち帰ってくる。それをダンジョンが喰らうわけだ。

そうして小さなダンジョンは成長し、やがて人が入れるくらいの大きさとなる。となると動物程度の食料では到底コアを維持することはできない。できないと、やがて衰弱し形成したダンジョンごと自壊する。そうならないためにはもっと大きな獲物が必要になる。そこで人……ではなく魔物が次のターゲットととなる。魔物とは魔力を宿した生き物であり、動物よりも生命力が高い。一応人もその種に該当するが希に魔力を持たない人が生まれ劣等人種と呼ばれたりする。

魔物も動物と同じような狩り方、とはいかない。魔物は動物よりも賢くまた多少魔力を感知することができる。魔力のか溜まりであるコアは当然魔物たちに気づかれば忌避される。

ならどうするか、疑似餌だ。魔物が分かっていてもなお抗うことができない魅力的な餌を、ダンジョンに配置するのだ。その場所の環境は得てして食物連鎖がある。最初に喰らい続けた動物たちの断片を模倣することで、その動物を主食とする魔物が、そしてその魔物を主食とする上位の魔物が連鎖的に釣れるわけだ。

では人はどうだろうか?人は食物連鎖から唯一逸脱した種族でダンジョンをただの宝物庫程度にしか思ってないようだ。その人を誘う疑似餌は様々だ。ある場所では希少な鉱石を、またあるところでは希少な魔物を。人の欲は計り知れなく、とにかく希少で誰もが手に入るような弱い餌では食いつかないのだ。

こうして人すらも喰らう強力なダンジョンに成長する個体がでてくる。こうしたダンジョンの周りには自然と人が住み着き街となる。獲物が獲物を呼ぶのだ。端から見れば滑稽だが、ダンジョンにとっては都合が良く、コアさえ壊されなければ対応しない。





◆話◆

・新米冒険者の二人

生まれたてのダンジョンの調査は新米卒業に欠かせないクエストだ。ギルドからの指名で渋々従う者(処女)と淡々とこなす者(経験済み)が最近見つかった若いダンジョンを調査することに。するとダンジョンの前に少女が倒れている。冒険者は少女からダンジョンの奥に友達が逃げ遅れていると聞き、二人はそのまま入っていった。しかし二人は既に体が蝕んでいたことを知るよしもなかった。半日後、快感の嵐に見舞われた二人は体液を拭うことなくフラフラと帰還した。


・環境による突然変異

このダンジョンも元々は他のと同じように小型の魔物を喰らい生きてきた。だがある日、二人の子供がダンジョンに入ってきた。以前の失敗を反省しターゲットが油断した瞬間を狙おうと様子をうかがうことにした。しばらくすると、二人は何かを話し始め、挙げ句に交尾し始めた。始めて知る行動にダンジョンは慎重にそのいきさつを見届けた。しばらくして二人は体を振るわせ何かを放出した。それは魔力コアに似たような感覚で、獲物を喰らっていないのにその充実感を味わったことに驚いた。ダンジョンはその原因を知るべく、放心状態の二人を喰らった。後日、ダンジョン内に二人の少女が現れるようになった。


・ギルドのランク付け

新米冒険者の不可解な調査報告により新たな冒険者が調査にきた。しかしダンジョンは入口を閉ざし内部にはいれなかった。その後別の冒険者に依頼したところ、新米と同じような報告が来る。どうやら女性だけが入れるダンジョンらしい。それを聞いて更に調査するべくベテラン冒険者を派遣する。調査の結果、偏食型のダンジョンと認定。人間に害を成さないため以後クエストに載ることはなくなった。


・スライム活劇

ダンジョンは人間以外の魔物も呼び寄せる。強さに貪欲なスライムは辺りの魔物を食らいつくしついにダンジョンへ入り込んだ。しかし最奥まで進んだスライムに待つのは二人の人間による無慈悲な吸収だった。その後、メニューの中にスライムプレイが追加された。


・噂と興味と油断

新米冒険者がその話題を口にする度に赤くなる。例の無害で不可解なダンジョンだ。なんでも命を取らず快楽による精気を糧に生きている偏食家のようだ。そして新米二人はあれからもダンジョンに通っていると話した。どこのサキュバスだよと鼻で笑う戦士、興味深いと考え込む魔術師、苦笑いを浮かべる聖職者。ある日、クエストを受けていた三人は例のダンジョンが近くにあることに気がつく。魔術師が調査しようと提案し、戦士が乗り、多数決で渋々同意する聖職者。そして三人はダンジョンへと赴いた。翌日からは女々しくなった三人の姿をギルドで見かけるようになった。


・女騎士のワガママ

噂には尾ヒレが付くもの。入り口で噂と違うと(のたま)う彼女の話を聞くに、自分より強い男に組敷かれて抵抗できずに犯されたいらしい。娼館に近いがなんでも客の要望に答えられる訳ではない。ダンジョンは悩んだ末、勝負に持ち込んだ。次の日、自分よりか弱い子供に蹂躙される性癖を開拓した女騎士が生まれた。新たなロリコンの誕生である。


・サキュバスの矜持

近くに豊潤な精気が少なくなったと異変に気づき、調べていたら原因がダンジョンだと知る。己の糧を横取りされ、更に人間から定期的に供給されている事への憤りにダンジョンへ赴く。魔力コアを取り込めば競争相手がいなくなり、更に強くなれると挑んだが、想定外の強さに逆に取り込まれることになる。その後、看板娘にツンデレサキュバスが選ばれた。


・欲求不満の妻

魔力コアの成長により子機のような要領でダンジョン外へ活動できるようになった。そこで冒険者以外の人間を招き入れるように出張所を設けることにした。その第一号が、小さな村に住む若い妻。夫は出稼ぎで不在が多く子作りも録に出来ないと嘆いていたところをキャッチした。結果はご覧の有り様である。依存症になった妻を帰って来た夫はどんな目で見るのだろうか。


・街の外に佇む馬車

馬の交尾を見るのが密かな趣味な、とある街の住民。そんな彼女が街外で馬車を見つける。正確に言えば馬が繋がれていない状態の馬車だ。破棄されているかと思えば外装は新しくおそらく逃げた馬を探しているのだと納得し帰路に着く。そして別の日、市場でフードを被った娼婦が売り子をしていたのを見かける。ただ男には一切なびかず、ずっと女性に呼び掛けていることが気になりつい声をかけてしまう。娼婦の話だと女性限定の娼館があり、金は必要ないと言う。あまりに怪しい話だが、彼女は同性愛の気がないのに娼婦の姿が目が離せなかった。結果興味が勝り娼婦に付いていくことに。そこであの馬のいない馬車と再開する。馬はどうしたと聞けば、私がそうですとフードを脱ぐと、馬の耳が露になった。次の日から彼女の趣味が娼館通いになるのは必然だった。


・町の誕生

とある住民の噂によりダンジョンの存在がギルド以外にも広まった。ある者は忌避し、ある者は興味を持ち、ある者は鼻で笑った。ある日、常連客がダンジョンにある提案をする。移動が不便なのと日帰りが大変だから、それを改善したいらしい。どうするのかと聞くと、ダンジョンの近くに町を作ろうと計画表を見せてきた。町が出来れば利便性が生まれ、果ては観光地としてさらに活気づくと言う。こうして世にも珍しいリスクを伴わないダンジョンの町ができあがる。


・奴隷市場で大人買い

この世には金で買える命がある。町が出来たことで客が増えたのはいいが、人手が足りなくなってきた。そこで、町で稼いだお金で奴隷を買うことにした。奴隷の種類は豊富でそのほとんどが亜人を占めていたが、客の好みに合わせらるように女性を買える分だけ買った。その後、奴隷だった彼女たちはそれまでの調教とは比べ物にならないほどの快感を得て、ダンジョンの一部となった。


・ドラゴンの襲来

客の出入りが多ければ、それ相応の糧を得ているわけで。ともすればそれに釣られて強大なドラゴンが襲来するのも時間の問題だった。ドラゴンは傲慢に言う、魔力コアを差し出せばこの町の被害は出さない、と。だが妙案が浮かんだ。自慢のサービスを受けてから差し出しても遅くはない。しかし彼の大きさではサービスできない、と。ドラゴンは鼻を鳴らし万能と言わんばかりに自力で人型の姿になった。その後は言わずもがな。快楽墜ちされたドラゴンは新たな看板娘として働くとこになった。サキュバスの白い目線がドラゴンに突き刺さる。


・ギルドの再認定

ドラゴンの一件は瞬く間に周辺地域へ知られた。それはギルド協会も例外ではない。噂によるとダンジョンに惹かれた魔物がそのドラゴンによって駆除されていると言う。当時は攻撃性がなかったために無害と断定されていたが今は違う。町が出来ているのも、その戦力の盾として住民を利用しているのではないかと憶測が飛び交い、不安は募るばかりだった。そこでギルドは国宝とも呼ばれる剣聖に依頼を出す。相手はドラゴンすら取り込んだダンジョン、不足はないと判断だ。剣聖はそれを承諾しドラゴン殺しの箔を付けるため威風堂々とダンジョンに向かう。その数日後、ギルドに一通の手紙が送られる。内容は……快楽墜ちした剣聖の馴れ初めだった。


・強行手段

女性では無力と判断したギルドは男性で組んだパーティを派遣した。しかしダンジョンは入口を閉ざしている。ダンジョンの外殻は生半可な攻撃では突破できないのだ。しかしパーティの一人が分かりきったかのように液体の入ったビンを取り出し投げつけた。それは研究により生まれた対ダンジョン用のアイテムだった。そう、彼らはギルド認定のダンジョン根絶パーティ。危険と判断されたダンジョンと言う魔物を殺すための特殊部隊だった。今までとは違う明確な殺意を持つ相手にダンジョン内では動揺が広がる。ダンジョンは侵入する彼らに立ち向かうが次々と倒され、あのドラゴンも地に伏せられた。どうやらダンジョンが形成した物はどれだけ強かろうとあの薬液の前では無力だったというわけだ。そして幾重にも塞がっていた最深部へとうとう侵入されてしまう。むき出しの魔力コアを前に男はダンジョン特効の薬液で浸した短刀をコアに振り下ろした。が、なんと弾かれてしまった。驚く男にダンジョンが答える。ここまで来るまでに急ぎで薬液の抗体を作った、と。頼みの綱である薬液が効かないと知るや否や男たちは撤退した。後日、ダンジョンは子機を使いギルドに赴いた。ギルド長に直談判するためだ。側には常連客の冒険者が付いている。彼女たちの弁解も含めてダンジョンの無害を説明した。ギルド長は納得してはいないが、今は打開策がないため保留と判断された。


・姫様の好奇心

ダンジョン存続の騒ぎは王国のところまで届いた。対ダンジョン部隊が失敗に終わったことは珍しく、そのダンジョンを保有している貴族にはかなりの衝撃だったそうだ。貴族の話をちょうど小耳に挟んだのは国王の愛娘。彼女はその珍しいダンジョンに興味を持ち始めた。猥談に花咲かせる年頃らしいむっつりスケベな姫は、従者を連れてお忍びでダンジョンに向かう。その後噂に違わぬサービスを堪能し、ダンジョンの出入口に向かうところでなんと従姉妹である剣聖と鉢合わせした。驚くのもつかの間、その後姫は剣聖と秘密を共有し度々お忍びで楽しむ間柄となった。


・母娘共に堕つ

娘の顔が以前より艶やかだ。母である王妃は娘に問う。曰く特別な場所でマッサージを受けたらしい。娘の話す様子がどことなく恍惚なのが気になるが、母親が知らないとなればいつか恥をかきそうなので今度連れていってと頼む。娘は大層な笑顔で了承した。後日、国王は一段と美人になった王妃にドギマギすることとなった。


・好奇心は信頼を壊す

冒険者は基本的に根なし草だ。金のために放浪すれば、ダンジョンの宝を求めて国を跨いだりする。ギルドに訪れた男一人、女三人のパーティは受付嬢から警告される。無害なダンジョンがありますがあなた方は近づかない方がよいでしょう、と。地元の冒険者なら察するが、彼らは他国からの来訪者。ナメられていると勘違いし、その警告を無視して件のダンジョンに赴いた。翌日、男は悲壮な顔で、女たちは皆想いに耽るような表情でギルドに訪れた。


・別れの時

常連客である姫からの密告にダンジョン内は騒然となる。国の権威で行われ、あらゆるダンジョンで試行しついに強力なダンジョン用の破壊兵器が開発された。それはつまり、打開策が無かった故に生き延びていたこのダンジョンの死刑宣告でもあった。ギルドも汚名返上で乗り気らしく、すぐにでも行動を起こすらしい。常連客も止めようとしたが国の命令の前では無力だったと沈んだ表情を浮かべる。どうしようかと皆が悩んでいるとき、ダンジョンが言った。逃げればいい、と。その言葉に理解できない皆を納得させるためにダンジョンは魔力コアを、そしてダンジョンそのものを変化させて一人の少女に納めた。その姿は最初の二人を合わせた感じに見えた。驚いている皆に、ダンジョンはこの地を離れる前に別れの挨拶をしようと提案した。皆は頷き、すぐさま行動に移した。


・暁の亡命

共に逃げる人を馬車に乗せ、いよいよ出発する。全員で300人余り。ダンジョンの一部となった魔物たちは皆ダンジョンに還っている。つまりここにいるダンジョン以外の者は死ぬリスクがあるのだ。それでも彼女たちはダンジョンと共に逃げると決意を露にする。理由は様々だが確かなのは彼女たちはダンジョンの虜となっていることだ。いよいよ出発の時、目指すは隣国の国境線。そこを越えれば越権扱いとなり、手出しできないだろうと判断した結果だ。そして夜明けと共に、逃亡劇の幕が上がった。相手は殺すつもりで魔法を駆使するが、こちらは不殺を徹底した。共に逃げる王妃と姫のお願いだった。ダンジョンは殿を務め、馬や騎乗者を驚かせたり、威嚇の咆哮や土砂降りの雨を降らせたりと、とにかく相手の士気を削ぎ落とす。そうして敵が下落して残りがあのダンジョン根絶部隊となった時、彼らは切り札を取り出した。それは魔法ではなく銃と呼ばれる物で、弾丸にはダンジョン特効が含まれていた。照準がダンジョンに合わせられ、放たれた。弾丸が正確無比にダンジョンの胸を貫く。倒れるダンジョンに同席していた仲間が悲鳴を上げる。そして敵は追撃をやめない。ダンジョンのコアを回収するつもりだろう。仲間がどうするか迷っている時、死んだと思われたダンジョンが起き上がる。


・新たな大地へ

実はコアは頭の方にあったのだ。つまり死んではおらず、先ほどまで体内に入り込んだ弾丸の解析をしていた、と言うことをダンジョンが明かす。仲間は歓喜の声を挙げ、敵は驚愕の表情を浮かべる。そして遂に国境を越えた。国を越えての戦闘は他国への宣戦布告に同義する。男たちは苦虫を噛み締めたかのような顔を浮かべながら撤退した。相手に死者を出さず勝てた喜びに皆が声を挙げる。さてこの後はどうしましょうか。展望に花を咲かせようとする姫様にダンジョンはとりあえず糧を求めてどこかに根を下ろさなければいけないと答える。すると根なし草の冒険者がこの国で隠れるのにちょうどいい場所があると言う。続いて剣聖が退けた相手の動向が気になると呟く。活動すればいずれ知られる。その時にまた襲われる可能性は否定できない。なら妾の同胞を取り込めばいいとドラゴンが鼻を鳴らしながら答える。ドラゴンの住む谷へ向かう予定が出来た。すると魔術師が手を挙げる。魔法使いの里も有力、全員女だし性欲を刺激すれば秒で墜ちる。と己を指差してどや顔する。その可笑しさに皆が笑い、馬車は道を進む。今は喜ぼう。このニッチでエッチなダンジョンはまだまだ生きていて欲しい。経験した誰もがそう思っていた。そしてこうも思う。いつか世界中が性に支配されたら、その頃には争いの無い平和な世界になるのでは、と。






『た、助けてください!』

「アン! 人だよ!」

「うん、見ればわかる」


「大丈夫? 怪我はない?」

『は、はい。あ、私よりモモちゃんを!』


 落ち着いた少女は自身をサクラと名乗った。


『モモちゃんは私の友達で、一緒にいたんだけど洞窟の奥ではぐれちゃって……』


『探してたら出られちゃって、でもモモちゃん置いて帰れないから……』

「事情は分かった。あなたはここにいて」

「任せてよサクラちゃん! 冒険者の私たちがババッと助けてあげる!」


『ありがとう、お姉ちゃん……』

二人はその瞳に心が跳ねた。何故なのか分からないが彼女の表情に惹かれるものがある。

「アン、やるわよ!」

「言われなくても。人助けは冒険者の基本」

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