第1章:母と瓜二つの生徒会長
作者のありしゅです。
この度は「余命1秒後の僕。」を読んで下さりありがとうございます。
この物語は私自身が経験したこととフィクションを重ね合わせて描きました。
私自身、先天性の心臓病の持ちで、母が7歳の頃に家出をし、父子家庭で育ちました。
これから始まる物語は、私にとってとても大きなものになる気がします。
皆さまに応援していただけると嬉しいです。
それでは、第1章をご覧ください。
僕は障害者だ。僕は一人だ。
母は僕が7歳の頃に家出をした。
僕は父子家庭の一人っ子育ちで家に帰っても父の仕事が忙しく、夜遅くまで一人でいる。
僕が君に出逢うまではずっとそう思っていた。
そう思わざるを得なかった。
君と出逢った日は今日によく似た曇り空で、僕はその日も常にいつ爆発してしまうかわからない爆弾を抱えながら、新しく通う学校へ向かうと校門の目の前で小学校からの親友で同じく爆弾を抱えて生きている、明るい男友達の"空“が僕の肩をぽんっと叩き、笑顔で
「春冬!今日の体調はどうだ?入学式だからって緊張してるのか?」
と聞いてきたので僕は
「緊張はしてないよ。空がいるから」
と言って一緒に慣れない校内を見渡しながら教室に向かった。
本当はとてもお互い登校初日ということで緊張していた。
僕達は芋洗い状態の教室案内の前に行き、案内を見ると僕と“空”は同じ1年1組である事が分かった。
2人で微笑みながらグータッチをして喜びを分かち合ったと同時になんとなくホッとした。
緊張からマラソンを走った後のような速さだった心拍数が少し下がった。
しかし、この下がった心拍数が再び速くなるなんて、この時の僕には全く想像もしてなかった。
教室に入ってみると僕と”空“の席が一番左の真ん中の辺りだった。
僕達は自分の席に座りチャイムが鳴ると先生が教室に入ってきて入学式についての説明を聞き、入学式が行われる体育館に"空“と一緒に向かう途中で、僕達はこれからの高校生活に対する不安について話しながら体育館に着いた。
並べられたパイプ椅子があり、案内されたところにそれぞれ座ってからしばらく経つと入学式が始まった。
入学式がどんどん進んでゆく中で、生徒会長からの祝辞があった。
そこで祝辞を読む生徒会長は僕が
7歳の時に家出をした、母親と顔が瓜二つだった。
僕は驚き、心拍数は暴走したミシンのような速さになった。
瞬きをすると入学式は終わり、僕はこの気持ちの不発弾を拳の中に握りしめた状態で教室に向かう途中で何かを感じ取ったのか、僕の顔を心配そうに"空“は見てきて
「大丈夫か?」と言い、
続けてニヤつきながら冗談混じりに
「もしかして可愛い子でもいたのか?」
と聞いてきたが、僕は母に似た彼女の顔が忘れられないまま縦に頷いた。
“空”はそんな僕にいつものハイテンションで
「おまえマジ!?誰だよ〜?」
と言うと僕はなんの感覚も無く
「お母さん」と口にした。
“空”は僕の家庭事情を知ってるからか、笑ったりはせずに真剣なトーンと顔で「どういうことだ?」と聞いてきた。
僕自身もかなり混乱していた。
僕は無言でそのまま教室に入り、それぞれ着席後に少し先生の話を聞くとその日は下校となった。
僕が椅子から立ち上がると“空”が目の前に来て
「よし!高校生になったし帰りは寄り道して飯でも食おうぜ!」と
いつものハイテンションで話しかけて来た。
きっと僕に昔の事を思い出させないためなんだろう。
僕は二つ返事で“空”について行くと下駄箱に生徒会長の姿が見えた。
生徒会長は靴を履き替えて外に出ようとすると、とても小さな段差で
突然大胆に転び僕はとっさに生徒会長のそばに行って
「大丈夫ですか!?」
と声をかけると生徒会長は苦笑いで
「痛った〜い!」
と言った。
生徒会長が膝をついたまま下から僕の顔をゆっくり見上げると互いの視線が合い、僕の顔はとても熱くなり何も言えなくなってしまった。
生徒会長はそんな僕の顔をしばらくじっと見つめていると、何かを思い出したかのように突然立ち上がり「心配しないでね!ほんと大丈夫だから!」と言って生徒会長は走って学校を飛び出した。
僕がその場でフワフワとしていると、生徒会長が母に似ていると思ってる事に気付いた”空“が僕の元に寄ってきて、僕の肩に静かに掌を乗せて
「何も悪いことじゃないぞ。母ちゃんに似てるだろうが、好きだろうが、俺は春冬の未来が輝くなら応援する。何か人生が変わるきっかけになるかもしれないから。」
と小声で言った。
この日から僕の人生は真冬から春へと移り変わることになる。
第1章ご覧いただきありがとうございました!
第2章も是非お楽しみにしていただけると嬉しいです!