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生き別れの兄が近所のスーパーでレジ打ちをしてたんだが……

作者: 水ManJu


「レジ袋はお付けしますか?」

スーパーの店員に聞かれた。俺はスーパーマーケットに来ていた。俺はふと店員の顔を見た……


「にいさん……」

そこには俺の生き別れた兄がいた。兄はスーパーマーケットのレジ係として働いていた。


俺は兄を30年近く探していた。探偵を使い、警察に頼み、近所の人にも協力してもらっていたが、どうしても見つからなかった。


俺は兄と目が合う。兄は挙動不審だった。


「にいさん……にいさんだよね」

俺は涙ながらに言う。


「あぁ! にいさんだけど! にいさんだけど! 今仕事中だから! 後にしてくれよ!」

にいさんはなんだか怒っている。挙動不審でなんだか周りをキョロキョロしている。


「いらっしゃいませーー」

別の店員が言うと、にいさんも

「いらっしゃいませーー」

と挨拶をする。


「にいさん! なにやってたんだよ! 探したんだぞ! 覚えてる? 子供の頃一緒に遊園地行ったの! 僕がお化け屋敷で怖くて泣いてたらにいさんが手を引いてくれたの」

俺は再会した喜びで涙が溢れる。


「そんなことあったよな! 俺もあのときメチャクチャ怖かったんだよ! でも、お前が入りたい! 入りたいって言うから!!」


「そうそう! でも、僕が途中で怖くなって」


「俺あのときメチャクチャ怖かったからな! ギャン泣きしながらお化け屋敷走り抜けたからな! ホンマ兄貴って損だわ! てか、あぁ!! お前が話しかけるから二回ピッピってしちゃっただろ! あぁ! もう一回最初からやり直しじゃん!」

にいさんがレジでバーコードをピッピっと読み取りながら言う。


「にいさん……今何やってるの?」

俺は聞いた。


「見たら分かるだろ! 今レジを打ってるんだよ!! 仕事中だろ! お客様レジ袋はいりますか!?」

にいさんは俺に怒る。


「いらないよ。兄さん。なにがあったら話そうよ。どうしてここで働いているの?」

俺は聞いた。


「見たら分かるだろ! 生活のためにレジ打ちしてるんだよ! これしないと生活出来ないんだよ! お客様様ポイントカードはお持ちですか!!?」

兄さんが俺に聞いてくる。


「ポイントカードってそんなのどうでもいいじゃん。兄さん。話そうよ。俺どれだけ兄さんともう一度会いたいと思ってたか……占い師に頼んだりして……もう一度、もう一度でいいから兄さんと会いたいって……」

俺は涙目だ。


「だから! 会えただろ! それで良かったじゃん! だから! いまレジ打ってるんだよ! ポイントカードはお持ちですか? って!」


「持ってるよ。ポイントカード」

俺はポイントカードを兄さんに手渡す。


「持ってるのかよ! なぁ! だったら最初から出せよ! ポイントカード!」

兄さんが俺のポイントカードを引ったくるようにして奪った。


「変わってない。兄さん。その喋り方。今思い出したよ。怒りっぽくて、邪魔されるとすぐに怒り出すところ」

俺は涙目だ。


「それが分かってるなら邪魔するなよ!」


「お客様どうなされましたか?」

このスーパーの店長らしい男が俺に声をかけてきた。


「あの……生き別れの兄がレジで働いてまして……」

俺は涙ながらに店長に言う。


「ちょっと! 店長! その方の支払いがまだ済んでませんよ! お客様! カードにしますか! 現金ですか?」

兄さんは俺に怒る。


「えっ? うちの従業員とお客様が生き別れの兄弟? ですか?」

店長は驚く。


「はい……」

涙目で俺は言う。


「鈴木くん。レジは良いから。ここは僕に任せて……久しぶりに出会ったんだから、ちゃんと挨拶をしなさい」

店長が兄さんに言う。


「駄目ですよ! 店長! 僕今レジをしてるんですよ! ほらあんなにお客様が待ってるじゃないですか!」

兄さんがレジの前で並んでいる客を指差す。


「いや! それはいいから。僕が代わりにするから! 弟さんが来られてるんだから、ここは僕に任せなさい!」

店長が言う。


「分かりました! では品出しやってきます」

兄さんは言う。


「いや、だから仕事しなくていいから!」


「店長! クビにするつもりですか! ねぇ! 店長! 仕事するって言ってるじゃないですか! 仕事が大事でなにが悪いんですか!」

兄さんがキレている。


「兄さん。俺と話したくないの?」

俺は兄さんに聞く。


「だから! そういうことじゃないじゃん! 今仕事中じゃん! そいつが生き別れの弟かも知れないけど、僕今仕事してますよね!!」

兄がキレている。


「あら……あんた懐かしい……翔太くんじゃない。ほら覚えてる? 私子供の頃よく遊んだ。瑞穂おばさん」

近所に住んでいる瑞穂おばさんが兄さんに声をかける。


「お前みたいなババア! いちいち覚えてる訳ねーだろ! あぁ! 覚えてるわ! 覚えてる! よく飴玉くれたよな!」

兄さんが怒っている。


「そうっ! 懐かしいわねぇ……」

瑞穂おばさんが過去を思い出し、懐かしそうな表情をする。


「いまレジ打ってんだよ! ババア! 黙って並んでろ! そんな思い出ぶっちゃけ懐かしくもなんともないわ!」

兄さんがキレている。


「兄さん。変わらないな。そうやって邪魔されるとすぐに怒るところ」

俺は涙目で笑う。


「だから邪魔するなって言ってんだろ!」


「鈴木くん。時給のことは心配しなくていいから。弟さんと話して」

店長が兄に言う。


「だから! 俺はレジを打たないといけないんだよ!」


「店長さん。もういいです。このこだわりの強い性格。兄だってことが分かりました。30年も待ってたんだから仕事が終わるまであと数時間くらい待ちますよ」

俺は涙目で言う。


「そ……そうですか。では、鈴木くん。レジ打ちに戻って」

店長が言う。


「どっちなんですか! レジから離れろって

言ったり、レジをしろって言ったり……」


兄さんはぶつくさ言いながらレジ打ちに戻る。


間違いない。俺は30年前の兄の姿を思い出していた。兄の変わっていない姿がそこにあった。



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