3.ファーストコンタクト
オモイが集めてくれた情報をインストールしたので地上に降りる事にした。
僕の頭の中にはチップが埋め込まれてるらしく、ほんの数秒で全ての情報をインプット出来た。
本当ならショックキングな話なのだろうけど、自分が複製体だって前情報があるから今さらなんだよね。
へー便利だねって感じ。
気にしたら負けだと思う事にしたよ。
それにどちらかと言うと、この世界は魔法世界って事の方がビックリだったよ。
SFにファンタジーって、この世界に送り込んだ黒幕は僕に何をさせようって言うんだろうね(笑)
そんな擦った揉んだあって、オモイと検討した結果、目標降下地点は【ヘストア大陸】にある【クロットナーヴ王国】に決定した。
何故、クロットナーヴ王国に決めたかと言うと、この国は比較的政情が安定していると言うのもあるけど、この王国以南は深い亜熱帯性植物で覆われた【ラブカの大森林】と言う魔獣が跋扈する人外領域なので、魔獣を討伐して得る素材や、固有植物の採取で生計を立てる狩人が行き交う街らしく、僕みたいな住所不定で身元不明な人間が紛れ込んでもあまり問題にならないので好都合だったんだ。
ハンターになれば身分証明書を発行してもらえるらしいし、オモイもオススメなので、この国で生活基盤を整える事にする。
そうして、クロットナーヴの近くの海域でギルド船を空中停泊させて、輸送船で自由都市と呼ばれる【マクロの街】まで移動する。
そのままマクロの街で着陸して悪目立ちする事は避けて、変わったタイプの海船として港から入国しようと思う。
ちなみに、この世界には魔導飛行船と言うロマン溢れる乗り物があるらしく、この王国にも数隻飛んでいるんだけど、流石に僕が乗る様な近未来デザインの飛行船は無いので、自重する事にしたよ。
目立っても良い事は無さそうだもんね。
輸送船内部はゲームの中では描写が無かったけど、船内には居住空間があって整備室やオメガを格納できるスペースもあるので、結構大きい船だ。
2階建ての大型バス4台分くらいかな?
そのまま家として使おうと思う。
『着水します』
他の船から見付からない様に着陸し、光学迷彩を解除して港へ進む。
障壁を展開しているからか、波で揺れないのは良いね。
そのまま桟橋付近にまで近付くと、見張りの兵士さんが旗を振ってこちらを誘導してきたので、指示にしたがってピッタリと接岸する。
船のハッチを開けて顔を出し、兵士のおじさんに入国審査の為に幾つか質問されたので答えていく。
「見かけねえタイプの船だな……どこから来たんだ?」
「オルナカン魔導帝国です」
【オルナカン魔導帝国】とは別大陸にある魔導科学が進んだ国だ。
現在、オルナカン帝国は戦争しているので、戦禍に巻き込まれる前に避難してきたと説明した。
この設定話は勿論、オモイがシュミレートして考えた嘘だ。
質問に全て答えるも特に怪しまれる事は無く、逆に不憫に思ってくれたみたいで、「災難だったな……」なんて心配してくれた。
おじさん、ごめんなさい。
そうして良心を痛めつつ、ギルド船で加工したお金(偽造したとも言う)で入国料と停泊料7日分や保証金を支払い、無事に入国する事が出来た。
よーし、早速旨いご飯を食いに行くぞー!
そんな風にして輸送船から降りて意気込んでいると、後ろで水が弾けた様な大きな音がした。
何事かと思って振り返ると、必死の形相を浮かべたさっきの兵士のおじさんが叫んでいた。
「か、海竜だぁー!! 避難しろー!!」