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序
すでに加えられたる罪をもって許し給え、
かの黒死病は街々を走り、毒の矢を放ち、
心正しき者もこれを避け得ず、
速き者も逃れず、勇者も打ち勝てず。
――ジョン・ドライデン「驚異の年」
中世より、イギリスは黒死病の襲来を幾度も受けてきた。
そのたびに人口の大部分もの命が失われる、ということが繰り返されてきた。
近年における最大の流行は一六六五年の大流行である。
当時、四六万人もの人口を抱えていたロンドンにおける死者は六万数千人以上。
およそ七人に一人が、その犠牲となったのである。
その翌年の一六六六年、再び悲劇が起きる。
一軒のパン屋の火の不始末から燃え広がった炎は、おりからの突風に煽られ燎原の火のごとく燃え広がり、都市の大半はなすすべなく焼き尽くされた。
いわゆるロンドン大火である。
深夜に出火したにもかかわらず死者はほとんどなく、その後、すみやかに都市は再建された。
それから数十年、一時は大火によって浄化されたかのように息を潜めていた黒死病であったが、人々はまだその死神の似姿を忘れてはいなかった。
そして迎えた十七世紀末。
ロンドン宿泊中のフランス人が黒死病を発症。
それから数ヶ月もたたずに死者の数はネズミ算式に積み上がっていった。
一六六五年と同じ悪夢が再びロンドンに蘇ったのである。




