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魔大陸の家の外に転移し俺は崖の側に行きテーブルと椅子を召喚して広大な海を眺めながら遅い昼食を取る事にした、姫さんと話しをしていたからみんなにどう説明しようか考えていなかったからだ。
創造神との秘密の話を喋ってしまったがよくよく考えてみたら何で隠す必要があるんだと思い開き直ってやろうかと思ったがあのジジイの事だからお仕置きして来そうで俺は正直ビビっていた、「隠し事するジジイが悪いんだ、俺は悪くないな、うん」と自分に言い聞かせコーヒーとサンドイッチを飲み食いしながら優雅に食事を楽しんでいたがすぐに奴等がやって来た。
『ニール、探しましたよ何処に行ってたのですか?』
『ちゃんと説明しなさい!逃げたら許さないわよ!』
「見付けるの早いですね、さすが女神様だ」
『エルサから聞きました、創造神様がアルミナを作り出したとは一体どういう事ですか?』
「俺の為に何も聞かなかった事にしてもらえませんかね?」
『女神として命令します、下級天使ニール、先程の蛮行は許しましょう、その代わり隠している事を話しなさい』
『私も女神として命令するわ、許してあげるから全て話しなさい!今すぐ!』
「......」
俺はこの二人を巻き込んでどうにか創造神のお仕置きを回避出来ないだろうかと思案していて黙っているとレミアが俺の右手を握り包み込むようにして『ニール、何か重大な事を隠しているのは分かっています、しかし話すのです、一人で悩まなくて良いのですよ』とまるで女神様のように俺に微笑みかけて来た。
『貴方が悩むのは分かるわ、きっと創造神様との秘密の話しだったのでしょ?それでも話しなさい、私達は貴方の味方よ』
「......」
エルサまで俺の左手を握り優しく語りかけてくる、いつもの飲んだくれとワガママな女は何処に行ったのか?何だか邪な考えをしていた自分が恥ずかしくなり諦めて全て話す事にしたが、どうせ話すなら一回で済ませたいので皆呼ぼうかと提案すると却下された、内容を聞いて私達が勇者達に話すと言って秘密を話した共犯者になってくれると言い出し、俺はそんな二人に感謝して頭を下げたがお仕置きを回避出来そうでほくそ笑んだ。
俺は椅子を二つ召喚して二人に座ってもらい監禁室で創造神から聞いた話を説明する、魔王が誕生してしまった経緯と魔王を殺しても復活してしまうなら利用しようと考えた創造神は格の足らない人の魂から選んだ者を勇者にして魔王を倒させて魂を昇華させてやる事にし、それが勇者召喚の始まりだったと。
「ある意味身内である魔王を天使や女神に直接殺させる訳にはいかないから秘密にしてたと、増えすぎた魔王を別々の世界に放り込んで監視をしていたが面倒になったからそれっぽい理由をつけて女神様達に役目を押し付けたと、つまりみんな創造神様の尻拭いに使われていたと言う事です」
『そうですか、創造神様は私達にも嘘をついていたのですね』
『創造神様はやはり邪神か何かかしら?許せないわ!』
「そして色々混じった魂を持つ普通の天使じゃない俺がこの世界に居るから魔王や勇者を集め、もしもの時は俺に復活した魔王を殺すようにと言ってきたので俺も創造神様の尻拭いで面倒事を押し付けられたようなもんですね」
『もしもの時の対処とはそう言う事だったのですか...』
『...』
その後黙ってしまった二人を無視して俺は説明を続けた、魔王は復活したら姿形は変わる事もあるが見た目は前と同じでも中身が違うらしくアルミナは初めて自我を持ち話が出来る貴重な存在だから創造神も興味を持ったらしいと。
『貴方そんな貴重な存在のアルミナを殺そうとしてたのね』
「きっと俺の悪魔の魂がそうさせるんでしょう」
『ニール、こんな時に冗談を言うのは止めなさい』
その後エルサとレミアは二人でどうしようか話し合い出したので飲み物を出してやり後は二人に任せる事にして俺は海を眺めながらこれからどうしようか考える事にした。
しばらく話していた二人だが勇者達に話して口止めした後にアルミナを連れて天界に行き創造神様に抗議してくると言い出したのでそれなら俺も文句の一つでも言いに行こうかと思い一緒に行くと言ったが拒否された、お仕置きしないよう創造神様にもちゃんと言うから私達を信じて勇者達と待っていろと。
「俺抜きで話して変な状況に追い込んだらどうなるか分かってますよね」
『下級天使のくせに女神である私達を脅すつもり?』
「脅しじゃありませんよ、本気で言ってますから」
『ニール、貴方が疑うのも分かりますが信じてください』
「......わかりました、二人を信じますからね?ちゃんと言ってくださいよ?」
その後二人は家に戻り勇者達に説明し、他の勇者や仲間が増えてもこの話はするなと口止めさせてからアルミナを連れて天界へ転移して行った。
「まさかこんな話を聞かされるとは思わなかったぜ」
『天使様はアルミナちゃんの事どうするつもりですか?』
「考えるのも馬鹿らしいな」
『ニール様、私のせいでこんな事になって申し訳ありません...』
「ビックリしたがこれはミレイルが悪いわけじゃないから謝る必要は無い、それに俺や女神様がいない所でアルミナが暴れなくて良かったと思っているから」
「ところでニールさん、一体レミアちゃん達に何をして叫ばれたんすか?」
「......ヒロキ君、知らない方が人は幸せに生きられる事もあるんだよ」
「?」
その後ヒロキ君達は何か思い出したように叫び、レミア達が天界に行くなら創造神にお願いを伝えてもらえば良かったと言い出したので何の事か聞きながら夕食を取り、ダンジョンの話しを聞いたりして時を過ごした。
翌日になっても帰って来ない二人の女神とアルミナ、一体天界で何を話しているのか気になるが勇者達をいつまでもここに留めて置くのも時間の無駄なので俺はミレイルに部族の皆に挨拶でもしに行こうと話すとミレイル以外はみんなダンジョンにでも行っていると言うので分かれる事にし、ヒロキ君たちは転移してダンジョンに向かった。
「それじゃあミレイル、部族のみんなに会いに行こうか」
『ニール様、先に少し話しませんか?契りの事なんですが......』
「結婚がどうのって話か?......まあいいだろう」
ミレイルはエルサに頼んで俺と契りを結ぶ許可を貰ったがアルミナの事でこのままじゃ一緒に旅をするのが難しくなるから契りの件は無かった事にしたいと言い、俺の気持ちだけ知りたいと言って来たのでセリシア王女に言ったように答えてやった。
『ニール様、ありがとうございます、これでスッキリしました!けど他に女を増やそうと思わないのですか?』
「そんな面倒な事に興味は無いな、一人で充分だがアルミナの事だけが気がかりだ、俺が拒否しても創造神様がアルミナとの約束を守るって言ったならどんな手を使ってくるか解らないから正直怖い」
『......そうですか、私はどんな結果になっても受け入れます』
「そうか、まあ今は考えても仕方ないからやるべき事をしようか、話が済んだならさっそく会いに行こう」
『はい!』
一方、ニールがミレイルとエルフの里に行った頃、天界では創造神と話をしていたエルサやレミアは創造神から謝罪を受けて許す事にし、他の天使や女神には黙っているからニールにお仕置きや罰も与えないよう約束させて今後どうするか話し合っていたがアルミナはその間ずっと約束は守れと創造神に言い続けて困らせでいた。
エルサとレミアは創造神に一体何を考えているのか聞くと純粋に天使と魔王の子がどんな者になるか気になったからと悪びれもせず話すから腹を立て文句を言ったが「もう神として約束してしまったから後には引かん!」と言って創造神は聞く耳を持たなかった。
『ほんとありえない、これが私達の生みの親だと思いたくないわ』
『創造神様、私もエルサと同じ意見です、いくらなんでも自分勝手すぎると思いますよ?』
「ワシは創造の神じゃ、一度好奇心が湧くと止められんから仕方ないじゃろう」
『それでどうするつもりですか?ニールは私達を脅してまで嫌がってましたよ?』
「むむ.....困ったのぅ......仕方あるまい、最後の手段でこうしようかの......」
創造神はエルサとレミアにとんでもない提案をして怒らせたが「ええいうるさい!もう決めた事じゃ!」と逆ギレして無理矢理アルミナを連れて何処かに転移して消えてしまい二人はニールに信じてくれと言った手前どう詫びたら良いか考えたが何も思い付かなかった。




