B-24
ニールが魔王アルミナとリズミィの家で生活を初めた頃、勇者の三人はダンジョン都市ムドのダンジョンに潜っていた、32階層で中断したままのダンジョン攻略をやり遂げ気持ちよく次に進もうと再び挑んでいたのだ、前とは違い三人は飛べるようになったので踏み込みと同時に飛んで足音を鳴らさず一気に魔物との間合いを詰めて不意打ちの一撃を食らわせたりと楽々ダンジョンの奥へと進んで行った。
「やっぱ飛べるってスゲー有利だな、これで攻撃魔法も使ったら余裕過ぎだろ」
『そうだな、こんな楽な戦い方をしていたらいつか痛い目に遭いそうだ』
『じゃあここからは制限して進もっか』
ヒロキとリサは創造神に体を弄られてからミレイルのように強力な魔法を使えるようになりステータスも大幅アップしていたので制限をかけても難なく進む事が出来たが40階層に入ってからは苦戦していた、魔物同士の連携攻撃に体制が崩されたり分断され囲まれたりと危険な場面が増えていたのだ。
「ギルドで調べた通りだな、魔物のくせになんだよあの連携攻撃」
『私もそうだがヒロキもリサも前に出て戦う訓練ばかりしていたからすぐに囲まれてしまう、人形と違い魔物だから動きが読めん』
『どうしよ、私達も後方で戦える仲間を探す?もしアルミナちゃんが仲間になっても私達と同じで前で戦うタイプっぽいし』
「仲間か、俺は仲間にするなら男が良いな、男2女2でバランスも良いだろ?」
『アルミナを入れても男2女3か、確かにバランスは良いが男はなぁ』
『アンタは男だから目線とか気にしないでしょうが、こっちは街を歩いてるとイヤらしい目で見てくる冒険者が多いから私とミレイルは男を仲間にするのはちょっと気が引けるんだよね』
「そうなのか?悪ぃ気付かなかったわ」
ヒロキはその後二人から男が増えると色々とダンジョンで気を使うから嫌だと言われ男の仲間の加入を諦めかけたが珍しくある事を思い出し閃いた、勇者の力を託す後継者探しの件だ。
「俺達って勇者の力を次に託す後継者探ししなきゃいけないだろ?やっぱ男を仲間にしようぜ」
『そう言えばそんな話をしていたな、私は長命だからまだ先の話だが』
『私はどうしよう、後継者を探して育てろって言ってたよね?育てろと言われてもな』
三人はダンジョンの安全地帯で休憩のつもりで休んでいたが話し込んでしまい今日はもう帰って食事をしながら話す事にしてダンジョンの入り口へと転移しミネル王国の王城に用意された自分達の部屋にそれぞれ転移して帰還した、三人は城の浴場で汗を流した後王女の部屋に集まり話の続きを再開させ話し込んだがやはりヒロキの男を仲間にしたいと言う提案は拒否された。
『ヒロキ様はどうして女の人じゃダメなんですか?』
「王女様さぁ、後継者を育てろって事は戦い方も教えなきゃなんねーだろ?男なら遠慮しないけど女だとちょっとなぁ」
『アンタも天使様を見習いなよ、あの人は私達でも遠慮なく蹴ったり投げて地面に叩きつけたりして訓練に付き合ってくれたよ?』
「いや、ニールさんは特殊なんだよ、うん」
『しかしこのままじゃダンジョンだけじゃなく仲間探しも困難になるぞ?』
『ミレイル大丈夫よ、ヒロキが諦めれば済む話しだから』
その後も「女ばかりになるから嫌だ」とか『男は嫌だ』とか話がループしだした頃、王女が『だったら女神様か天使様に助言を受けたらどうか』と言い出した、三人は悩みまだ陽が落ちて外は暗くなったばかりだから今から会いに行っても大丈夫かなと話しヒロキが一人で会いに行く事になり転移して行った。
リサとミレイルは王女と雑談して聖女のルルミーナは今どうしてるのかと聞くとまだこの城下町の教会に居てダーラント王国からこの国の教会に席を移すか悩んでいるそうだ、この国に来て女神様や天使様に会えたから帰ってきてからずっと祈りを捧げているらしい。
そんな話をしながら結構な時間が経ったがヒロキがなかなか帰ってこない、三人は何かあったのかと思いミレイルが様子を見に行こうとした時ヒロキが帰って来たが、なんだか悔しそうな顔をしていた。
『遅かったじゃないか、何かあったのか?』
「俺は今よ、嫉妬の炎に燃やされている気分だぜ!」
『はぁ?何言ってんのアンタ』
「レミアちゃんしかあの家にいなくてよ、それはそれで会えて嬉しかったけど女神である自分は特定の勇者だけに助言は出来ないって言われてさぁ、ニールさんになら少しだけ助言を受けるなら良いって言われて居場所を聞いて会いに行ったらあの美人なギルドマスターと一緒に住んでたんだよ!」
『美人なギルドマスターって、ダーラント王国の?なんで?』
『』
「アルミナちゃ、何だよミレイル?何で俺を睨むんだよ?」
『いいから続きを離せ』
「おぉ...アルミナちゃんに街で普通に暮らせるようにって指導を頼んだみたいで三人で暮らしてたんだよ、羨ましいぜまったく」
『....ヒロキ、次何か説明する時は誤解するような事を先に話すな、わかったか?』
「俺なんか悪い事言ったか?」
『ミレイル、ヒロキは馬鹿なんだから諦めなさい』
『もういい、それで?ニール様に助言して貰えたのか?』
「二組に分かれて動けば?ってあっさり言われたよ」
『』『』『?』
王女は意味が分かって無いようだったがリサとミレイルはそんな簡単な解決策に気付けずわざわざ助言を求めた自分達が恥ずかしくなっていた、その後王女にも説明し分かれて動くなら何かあれば途中で合流すれば済む話だし目的は同じなので競う必要もないからヒロキが後継者を見つけたら二組に分かれて動く事で話を進めた。
『アルミナちゃんを街で生活出来るようにしてるって事は創造神様に許可を貰ったのかな?』
『きっとそうだ、私達もアルミナが仲間になると思ってどう戦うか考えないとな』
「これで男1に女3かぁ、俺も早く探さねーとな」
勇者の三人は明日もダンジョンに行こうと話し王女の部屋から出て自室に戻って行った、王女は一人バルコニーに出て夜風に当たりながらニールが美人のギルドマスターと一緒に暮らしていると言ったヒロキの話しを思い出していた、ルルミーナが言っていたギルドを辞めた元ギルドマスターの事だと察したがその人が天使様に頼られた事が羨ましいと思っていた、天使や女神の存在を知った今は何か自分も役に立ちたいと思うがどうにも出来ないもどかしさに溜息しか出ない、自分は王女で人とは違う権力を持っていても何も出来ない無力な自分の手を見つめる。
『はぁ....今夜はきっと眠れませんね』
王女はそう呟き浴場へと向かった。




