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『それじゃあ今から天界に送るけど、アルミナから目を離しちゃダメよ?ちゃんと側に居ること、分かった?』
「....」
『いいアルミナ、勝手に動いてニールから離れちゃダメよ?分かった?』
『分かった、ちゃんとニールについて行く』
『それじゃあ天界に送るわね』
翌日、準備を整えさぁ天界に行こうって時に過保護なエルサは俺にも子供に言い聞かせるように注意してくるからイラッとして無視し、アルミナは俺の翼の端を掴んで俺達は天界のエルサの部屋に送られた、創造神との話はすぐ終わるか長引くか分からないので天界のエルサの部屋を一日使って良いと言われ迎えに来るのは明日の朝という事になった。
『ここが天界か?』
「そうだ、良い子にしてないと怖い天使達が沢山集まってくるから良い子にしてるんだぞ」
アルミナを連れ部屋から出て創造神がいつも居る実験部屋がある建物へと向かって歩いていく、いきなり会いに行って大丈夫なのかと思うが嫌な事はさっさと終わらせたいので早く行こうと早歩きで向かったが建物に入る直前で創造神が出てきた。
「ん?おーニールではないか、なぜ天界に居るんじゃ?」
「ちょっと創造神様にお話がありましてエルサ様に天界に送ってもらったんですよ、知ってるでしょうが一応紹介させてもらいますがこの子が魔王アルミナです」
『?』
「アルミナよ、この方が創造神様だ、練習しただろ?」
『....創造神様、初めまして、私は魔王アルミナです、悪い事しないから話を聞いてください』
「ほぅ.....ちと場所を移して話そうかの、ついて来るがええ」
俺はちゃんと挨拶出来たアルミナに安堵し創造神について行くと真っ白な壁や床にソファーが二つあり小さい机が真ん中にあるだけでまるで監禁室のような部屋に案内された。
「家具がなければまるで監禁室ですねここ」
「間違いではないの、最初に作った監禁室がここじゃ、今は大事な話をする時に使用するくらいじゃがの」
元監禁室なら声が外に漏れる事もないのだろうと思い俺とアルミナは共に一つのソファーに座り対面に創造神が座った、アルミナは部屋の中をキョロキョロしていたが対面に創造神が座りジッと見られている事に気付き恥ずかしいのか居心地が悪いのか下を向いてチラチラ俺を見ていた、面白いのでこのまま放置して観察したいがさっさと要件を話そうと思う。
「創造神様、実はアルミナを勇者の仲間にして復活したダンジョンの魔王を倒させようって話しをしに会いに来ました」
「ほぅ」
俺はエルサ様の目的達成にはまずアルミナを無害な魔王として下界の住人に周知させてからの方が争いも起きないかもしれないと説明し創造神様が復活させた勇者の三人も俺が良いと言うならアルミナを仲間にして魔王を倒しに行くと言っていたが俺は創造神様の許可を貰えないと勇者と魔王を共に行動させようとは思わないと説明する。
「なるほどの、ちゃんと考えてワシに許可を求めて来たか、しかしのぅ...どうしたものか...」
「少しでも不安があるなら許可は出さないでほしいんですよね、そうすればエルサ様もレミア様も諦めるでしょうし」 『ダメ!』
創造神も俺と同じ不安を感じているのか悩んでいる、俺も悩むくらいなら許可を出すべきじゃないと思いこの話を流そうとしたがアルミナが立ち上がり俺を睨んで来た。
『お前は私を信じてくれないのか?』
「ハッキリ言うが信じてないな、理由はお前が魔王として覚醒したらどうなるか分からないからだ」
『私は変わらない!悪い事しない!』
「すまんな」
俺はアルミナが何を言おうが信じるわけにはいかない、何か起きてまたあの三人が死んで嫌な気持ちになるくらいならアルミナに恨まれても諦めてもらうしかない、そもそも言い出しっぺのエルサを恨めと思いながら創造神の判断を待ってるとグスグス泣き出したアルミナは今度は創造神に絶対に悪い事しないからとお願いしはじめた。
「う〜む.....アルミナよ、なぜそこまで勇者と共にダンジョンの魔王を倒したいんじゃ?」
『私は悪い魔王にはならない、嫌われたくない、死にたくない、だから一緒に戦いたいの』
「そうか....これは困った...しばらく考えさしてくれんかの?」
「俺もアルミナも下界に帰るのは明日の朝です、それまでエルサ様の部屋にいますから」
「明日か、うーん....分かった、それまでには考えを出そう」
「はい、お願いします、それじゃ行くぞアルミナ」 『嫌!』
アルミナは創造神の後ろに隠れ睨んで来るが近付いて無理矢理連れ出そうとすると創造神の服を掴んで離れようとしなかった、失礼だしいい加減にしろと怒るとまた泣き出して絶対良い子にするからお願いと創造神にすがり付いた。
「はぁ....まさかここまであいつらとダンジョンの魔王を倒しに行きたかったとは思わなかった...」
「ニールよ、お前も面倒な話を持ってきたの」
「おっと待ってください!....いや、なんでもありません、ご迷惑をかけてすみません」
「...お前にも事情があるんじゃろ、アルミナはワシに任せてお前はゆっくりすればええ」
「わかりました、アルミナの事お願いします」
創造神がアルミナを見ていてくれるなら大丈夫だろうと思い俺はエルサの部屋に戻ってベッドに横になり考える、泣いてお願いするほどの話か?と思いあれは本当にアルミナの本心なのか考えれば考えるほど分からなくなってきた。
俺に殺されかけ勝てないから死ぬ気で嫌がらせを計画し良い子のフリをして土壇場で裏切って勇者や沢山の人を殺すつもりならそれは成功するだろう、アルミナは頭が良いだけにその可能性もある。
「あー、馬鹿な頭で考えても分からん!」
アルミナの事は考えてもわからないので思考を切り替え、俺を苦悩させる原因のエルサとレミアにどんな仕返しをしてやろうか考えながら俺は朝っぱらから酒を飲んで早々に寝る事にした。
一方創造神は泣き止み落ち着いたアルミナと話し間近で見る魔王に興味がそそられアルミナにデータを取らせてくれと何度も頼んでいたが断られていた、アルミナは何かを真剣に考えだした後『データが欲しいなら別のお願いを聞いてくれたら好きにして良い』と創造神に言い出した。
「なんじゃ?無理な願いは叶えてやれんぞ?」
『誰にも言わない?エルサやレミアにも言ってないの』
「ほぅ、あの二人にも言ってない事をワシに話すと?」
『うん、誰にも言わないでお願いを聞いてくれたらもう勇者と一緒に戦いたいとかワガママ言わないから聞いてほしいの』
「......申してみよ、約束は守ろう」
『ありがとう、あのね...』
創造神は魔王アルミナの話を聞き血が騒いで来たのをひしひしと感じて物凄く悩んだ、アルミナは話したんだから願いを叶えてくれと言っているがそれに答える事が出来ないくらい真剣に悩み続け気付けばアルミナはソファーに丸まって寝ていた。
創造神は何時間も悩んでいた事に気付いたが自分の判断で我が子でもある天使を犠牲にする事になるが創造神として魔王アルミナのデータと願いの件で好奇心が勝り懸けに出る事にしてアルミナの願いを叶えてやろうと決断した。
翌日、酒を飲み天界だから魔物も敵もいない安心感から爆睡していた俺は目覚めると外は日の出前で朝を迎えていた、昨日と違い物凄くスッキリした目覚めで気分が良かったがアルミナはエルサの部屋に帰ってきていなかった、創造神の所で寝たんだろうと思い外に出て川で朝食でも食べようかと思ってると魔法陣が現れエルサが天界に転移してきた。
「ずいぶん早いお迎えですねエルサ様」
『もう起きてたのね貴方、ところでアルミナは何処?』
「昨日色々ありまして、アルミナが創造神様に泣いてすがって離れないから創造神様が預かると言うので置いてきましたよ」
『.....やっぱりダメだった?』
「一応返事は保留で考えると言っていたので帰る前にどうするか教えてくれるんじゃないですか」
『そう、じゃあ知らせが来るまで待機なのね、じゃあせっかくだから早く朝食を用意しなさい、まだ食べてないんでしょ?』
「...」
せっかくの良い気分が害されたと思いながら朝食を出してやり、もし創造神様から許しがでなかったらアルミナが覚醒してから次を考えようと話して時間を潰しているとアルミナと創造神がエルサの部屋に入ってきた、昨日と違いやたら機嫌が良さそうなアルミナはニヤニヤしながらエルサに抱きついて頭をグリグリしていた。
「創造神様、どうするか決まりましたか?」
「うむ、女神エルサと下級天使ニールよ、魔王と勇者の話じゃが許可しよう、それともし何か問題が起きてもお前達に責任は問わん、引き続き魔王アルミナを教育し励がよい」
「はい?」『え?』
創造神はそう言って逃げるようにさっさと部屋から出ていった、俺は昨日の反応から何で許可したのか理解出来ず、すぐさま創造神を追いかけ部屋を出たが転移したのか何処にもいなかった、エルサは責任を問われない事に喜びアルミナを抱っこしてさっさと帰るから魔法陣に入れと言ってきて俺は意味がわからないまま下界の家に帰った。




