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 暗闇の中、耳元で風がヒューヒュー流れるような音で意識を取り戻す、ボンヤリする視界がハッキリするとそこは雲の中だろうか白い霧のようなモノに埋め尽くされていた。


(なんだ...俺は今何をしているのだろう..何処だここは?)


 明るかった周囲が段々暗くなっていき霧が体内に吸収されて視界が開けると目の前にはこちらに槍の矛先を向けている長身の天使二人と爺がいた。


(なんだコイツら..あぁそうだ、確か俺が死ぬ間際に現れた奴等か...!?って何で俺は生きてるんだ?)


 自分は死んだのか、それとも目の前の奴等に助けられたのか分からないが話しかけようとすると長身天使の片割れが爺と話し出した、そしてその会話に戦慄する。


(貴重なサンプル?新しい肉体を創った?魂を...)


こんな人外の体になってしまった原因である過去の忌々しい記憶が蘇り、こいつらの実験体にされたと理解する。


「よし、死のう」


 瀕死になる抑えた自爆ではなく体の欠片も残らないくらいの自爆をしようと魔力を一気に集め体の中心に溜めようとするが突然詰まったような感覚になり魔力が凝縮出来なくなる。


『おいおい目覚めて直ぐ魔力を溜めだしたが何をするつもりだったんだ?』


 長身天使の片割れが強い口調で質問してくる、槍の矛先が光って俺の周りに張られた結界らしきモノに魔力が流れている、どうやらこいつが邪魔しているらしい。


「一体俺に何をした?さっきそこの二人の会話から俺を人体実験した様に聞こえたんだが?」


 こちらも不愉快な態度を隠さず質問返しするとニヤニヤ顔の爺が話しかけてきた。


『まぁ落ち着け、お前には聞きたい事があるので蘇らしたのじゃ、こちらはお前に何もせんから話をせんか?』


「女神に攻撃した俺を処刑するために蘇らしたのか?」


『あ~違う違う、お前の知る二人の女神の事について聞きたい事があるんじゃ、とにかくこちらについてくるがええ、場所を変えよう』


 自爆で死ねない、新しい肉体とやらは"異空間収納"が使えるのか分からない、武器を出して自殺しようとしてもコイツらは俺を生かすだろうと思い今は抵抗せずに従おうと頷く。


 結界が解かれ二人の長身天使に挟まれ爺についていくと、建物外の焚き火を切り株の椅子で囲んだ庭らしき場所に着いた、外は夕暮れ時なのか空が暗くなりはじめていた、座るよう指示され黙って座ると二人の長身天使は俺のすぐ後ろに立ち、爺は対面に座った。


『さて、先ず二人の女神とお前の関係を聞こうかの?それに下級天使レイニーについても順を追って説明してもらいたい』


「...話してもいいが話した後俺はどうなる?地球に、元居た日本に帰れるのか?」


『そ..それはその~、出来るだけ配慮しようかの!』


 創造神は今更気付いた、貴重なサンプルを手に入れノリノリで肉体や魂を弄くり強さを引き上げていた時に脆弱な人間の魂を他の強い魂と同化させてしまったのだ、見た目が天使だったので"元は人間"というのを忘れていたのだ。


「目覚めたばかりで聞き間違いかと思っていたけど、あなたは創造神様ですよね?だとしたら一番偉い超強いだろう神様がまさか貧弱な元人間にくだらない嘘なんか付きませんよね?」


『ぐぬぬ...』


「まぁそんな創造神様を信じて地球に帰る為に話しましょうかね、地球に帰る為に!」


 -地球に帰る代わりに話す-と暗に匂わし大事な事なので二回言っておく。


「先ず始めに30年前、当時15才の正木金弥という人が自転車で坂道を下って来てる時に魔法陣が突然現れ、驚いた金弥さんが俺の方に向かってきて衝突した所で異世界に飛ばされたんですよ」


「気絶してたみたいで気付いたら森の中、女神様に逢って勇者として魔神に指輪を着けてくれと頼まれたと話す金弥さんは当時8才の子供の俺を安全な街まで送ろうとしてくれてた途中で盗賊の集団に捕まってしまったんですよ、足手まといの俺のせいで」


「盗賊達の奴隷として働かされて5年くらい経ったある日、盗賊が拐ってきた人達の中に鑑定眼を持つ人がいて金弥さんが低レベルの勇者だとバラしてしまい何処かに高値で売り飛ばされてしまってね、それから3年くらい経った時に盗賊のアジトに異世界には場違いな格好の白衣を着た研究員が来て俺を買い取り研究所に連れていかれたんだ」


「研究所では魔物や人で色んな研究をしていたのか、研究員は金弥さんを色んな人や魔物に悪魔と合体させたが勇者以上の力を出せる上位種は出来なかったと言い、もはや涙を流し痛い苦しい助けてと繰り返すだけの金弥さんを失敗作と言い処分する前に同じ異世界から来た俺と、羽の生えた神聖属性の生き物を捕まえたからそいつも一緒に最後の実験として合体させると言われたんだ、その羽の生えた生き物がレイニー様だったんだよ」


 目を閉じ黙って聞いていた爺改め創造神様は焚き火を見つめ深い溜め息を吐いていた。

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