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今は夜中だろうか、外は暗く尿意で目覚めてトイレを探しに一階に行くと廊下でレミアがけしからん姿で倒れていた、こんな所で酔いつぶれて寝て体調悪くしても知らないぞと思いそのまま素通りしてトイレを探すが見つからない、精霊達が作るのを忘れたのかと思い外でしようかと悩み玄関に向かうが魔王の部屋にもトイレが無い事に気付き一応確認しに地下へ下りていった。
魔王の部屋の扉を叩くが反応が無いので一声かけて中に入ると俺が出した家具や飲食物はそのままだが布団にもたれかかって寝ていた魔王、使うならちゃんと使えば良いのにと思うが魔王の部屋にもやはりトイレらしき物や道具は見当たらない、起こすのも悪いので囲いとフタ付きの小さな壷とトイレットペーパーを召喚して部屋の隅に設置し【これはトイレ】と紙に書いた張り紙を貼って部屋から出た。
俺は新居の周りを汚したくなかったので自分が借りてた家に転移しそこで済ませたが、この家にもう帰って来ることはないだろうと思い地中に埋めた大きな壷にフタをして回収し魔大陸で焼却処分し帰宅した、ちなみにこの世界のトイレは壷や容器に水を入れ謎の魔法の粉を入れるだけで分解処理される優れもの、貴族や王族は水に色を着けて水の中を見えなくしているらしい、俺はそんな便利な粉を常備してないので魔王の部屋に設置したトイレはただの水が入った壷だが。
帰宅後にもう一度一階から三階まで探してみたがやはりトイレらしきモノは無い、もういいやと思い明日エルサに聞く事にし自室に帰って寝た。
「という事が夜中にありましてね」
『急いで家を建てたから忘れてたわ、まぁすぐ作れるから安心しなさい』
『ニール、私の「けしからん姿」とはどんな姿だったのですか?答えなさい』
「レミア様はお酒を飲んで体が熱くなったのか服を脱ぎかけたまま大股開いて倒れて寝ていましたね、それはもうまるで俺に見せつけるように」
『......』
朝、レミアは案の定気分が悪そうに涙目で食事をする場所に下りてきたがエルサが魔法一発で治してしまいなんともつまらない事をしてくれたもんだと思い夜中の出来事を説明したが、レミアは自分の醜態に顔を赤くして黙り込んだ、俺はラッキースケベは好きだが下品な女の裸を見ても嬉しくないから恥ずかしがらなくて良いのに。
『レミアもこれからは飲むなら自分の部屋で飲みなさい、それで今日は私がアルミナの相手をするから貴方はレミアの部屋に色々出してあげて、トイレは頼んでおくから』
『ニール、私に謝りなさい、そうすれば許してあげます』
「意味がわからない」
その後俺はレミアの希望の家具や寝具を聞いて出してやり設置していった、ついでとばかりにレミアは家中に花や絵を出して飾ろうと言い出し付き合わされたが何もないよりはマシな廊下や部屋にはなっていった。
『昨日ニールが沢山出してくれたお酒は美味しいんですけど、時間が経つと冷たくなくなって美味しさが半減するんですがどうにか出来ないのですか?』
「知りませんよそんな事、魔法で凍らせるなりすればいいじゃないですか」
『凍らせてみたのですが溶けてくると味が薄まってしまって』
「じゃあ飲むな」
レミアはお酒が気に入ったのかどうにか冷たいまま飲めないか精霊に相談してみると言い外に出ていった、時間が空いたのでエルサの調教でも見に行く事にし地下に行くと二人は俺が出した椅子やテーブルに座りエルサは木の棒を持って魔王と話していたのでしばらく見学することにした。
『人が魔物に襲われてます、アルミナにはその人を助ける力がありますが貴女はその時どうしますか?』
『人も魔物も殺す』(ゴツッ!)『痛い!』
『違うでしょ、人を助けて魔物はアルミナが倒すのよ』
クイズを出して間違ったら棒で叩く遊びだろうか?エルサは言い聞かせるように何が正しいのか間違ってるのかを魔王に説明しているがアレじゃダメな気がする俺は椅子を召喚して二人に近づき同席する。
「エルサ様、失礼ですが今だけ口出ししても良いですかね?」
『なに?邪魔をしないならいいけど』
「さっきの問題は魔物に襲われてる人が悪人でも助けろと言うのですか?それじゃ俺も納得しませんよ、こいつは頭が良いから細かく説明しないと」
『そーだそーだ!コイツの言う通りだ!』(ゴン!)『痛い!』
「誰がコイツだぶん殴るぞクソガキ」
『う〜ん、じゃあアルミナ、その襲われてる人が悪人じゃなければどうする?』
『....なんで助けなきゃいけないんだ!弱い奴は死ねー!』(ゴツッ!)『痛い!叩くなー!』
確かにこの世界で弱い奴は死ぬしかないが、魔王はそもそも誰かを助けたり協力する事の意味を分かってないように思え俺は黙ってエルサの調教を見守った、エルサはまず基本的な善悪から教えて頭で理解させようとしているから俺は体で理解させようかと思いこれからどうしていこうか悩んだ。
しばらく経つと部屋に緑色の光が三つ入ってきて何だとビックリしているとエルサが立ち上がり部屋の隅を指差し何か指示していた、光は部屋の隅に行くと光輝き出し何もない空間から生えてくるようにトイレっぽい小部屋が出来上がっていった。
「ほー、あれが精霊で、ああやって作るんですね」
『そう、でも普通の天使や力のある人でも精霊は操れないからこんな家を作れるのは神である私達か精霊の王くらいよ』
神にしか操れないならそれも謎の魔力を使ってるんだろうと思うが、俺も階級が上がれば使えるようになるのだろうかと思いながら出来たトイレに入ってみると、椅子の真ん中に穴が空いていて白い綺麗な壷が下に設置されてて清潔感あるトイレだった、魔法の粉も用意されてたが紙が無かったのでトイレットペーパーは俺が出しといたが。
なんだかヌルいエルサの調教を見るのも飽きたので二人の飲み物と軽食を出し部屋から出て、自室で調教用の道具は何かないかと手枷や縄や電気ムチを作ってはこれじゃないと思い色々作ったがやはり道具より直接殴る蹴るの方が良いのではないかと思い始めているとレミアがいきなり部屋に入ってきた。
『ニール、良い解決方法が!って何ですかこれは』
「レミア様、エルサ様にも言いましたが勝手に部屋に入るのは止めてくれませんかね?」
『ごめんなさい、それでこれは何ですか?』
「魔王に手枷をつけて足を縛って魔物の群れの中に放り込もうかと思いまして」
『ニール、その道具を使うのを禁止します、すぐに処分しなさい』
「何を勘違いしてるのか知りませんがちゃんと縄の先は持つので死にそうになったら引っ張り上げますよ?」
『ダメです!処分しなさい!これは命令です!』
何がダメなのか分からないがあの魔王が魔物に殺されそうになって自分から助けを求めるようにしたかったのに邪魔しないでほしい、仕方ないので異空間にしまうと自分が預かるから出せと言ってきた、チッ。
「どうせいくらでも作れるのに無意味な事を...」
『いいですかニール、貴方も天使なのですからあまり酷い事はしちゃダメですよ!』
「わかりました、正々堂々手足を使って頑張ります」
『はぁ、もういいです、それよりついて来てください』
レミアについて行くとテーブルの上に何か白いガラスの容器があり、木のコップがピッタリ挟まるようになっていた、これが何だと聞くとガラスの容器に精霊が入りコップを冷やしてくれると説明しだした。
「そこまでして飲みたいのか...呆れますね」
『ニールがいけないのです、あんな美味しい物を出すから』
「俺を覗き見して飲みたいと言い出したのは貴女でしょうが!」
精霊に意思はあるのか分からないがこんなくだらない使われ方をさせるのは可哀想なので次から木じゃなくて缶で飲み物を召喚するようにするからと言い一本召喚して出して見せ、自分で冷やせと文句を言う。
『どうして最初からこれで出さなかったのですか!』
「ゴミの処分が面倒だからですよ」
俺は当たり前の事を言ってレミアを黙らせた。




