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燦々と光に満ちた天界のとある一室で二人の女神は互いに睨み合っていた、エルサは余裕な態度で胸を張りレミアはただジッとエルサを見ているだけだが二人を見張っている3人の上級天使は上機嫌だった。
今回の争いでエルサやレミアが創造神様からいくつか任されていた世界の"監視者"の役目から下りれば自分が次の監視者となり格が上がり女神と名乗れるかもしれないからだ、しばらくして創造神様をいつも側で監視している長身の天使の片割れが部屋に入ってきた。
『レミア様エルサ様にご報告します、天界で暴れた天使は下界で死亡を確認、遺体はその場で創造神様が燃やし尽くしましたのでお二人の尋問は後日創造神様自ら行うとの事です、では私はこれで』
淡々と報告だけ済まして出ていった天使の言葉にエルサは複雑そうな顔で、レミアはただ目を瞑り先程までの険悪な雰囲気が和らいだ。
「創造神様自ら尋問ですって、今回のお仕置きは相当キツくなりそうですね..主に貴女だけが!(クスクス)」
レミアを挑発するように煽るエルサ、しかしレミアはお仕置きより別の事を考えていた、創造神様があの男を直接燃やし尽くしたという事は自分が呪詛をかけ殺した事に気付いてるはず、それに実験好きの創造神様があんな得体の知れない天使を簡単に始末するとは思えなかった。
『教えてくれるエルサ?あの天使みたいな勇者はどんな人でしたの?』
「貴女に力を奪われてなければ小石程度の存在でしょうが、どんな人かと一言で言えば慈悲深い悪魔でしょうか?」
『慈悲深い悪魔?』
「ええ、最後に捕まってボッコボコに殴られてる時にぶちギレてるあの人の目を見たらそれはもう恐ろしいほど楽しそうに笑って殴ってましたね、あの時は本気で殺されると思い心が折れてしまいました、でも私が許しを乞うとすぐに殴るのを止めて指輪を着けた後に回復薬を使ってくれましたね」
『力を奪ってたけど仮にも女神である貴女が恐怖を感じたと?』
「貴女には理解出来ないでしょうね、あれは力の無い者にしか解らない恐怖ですよ」
『...そうですか、分かりました』
レミアはエルサとの話を切り上げ部屋を出る、自室に向かう途中あの時焦って呪詛の魔法を掛けたのは間違いだったと、それにあの勇者が部屋から出られたのならエルサも部屋から出してるかもしれないと少しでも考えてたらこんな事態にはならなかったと後悔する。
深いため息を吐き後日行われる尋問でキツいお仕置きじゃ済まないかもしれない恐怖で重い足取りで自室に帰る。
一方のエルサは久しぶりの天界でブラブラ散歩しながらこれからの事を考えていた、あの勇者が死んだと聞いた時は長年の敵が消えた解放感と、天界の監禁室から出してくれたおかげで創造神様達にレミアの悪事を暴露する事が出来たのでほんの少しだけ恩を感じていた、あのまま監禁室にいたらまた別の異世界に"神殺しの指輪"を着けたまま閉じ込められて死んでたかもしれなかった、何ともスッキリしない感情を抱きながら後日行われる尋問に備え言い訳を考えていた。
「あ~嫌だなお仕置きされるの..それにレミアよりマシだろうけど女神の地位には戻れないだろうな...あーーもう!勇者になんか手出すんじゃなかった!」
プンプンと怒りながらふて寝しようと自室に向かうエルサであった。