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一体何処に転移したのだろうかと周囲を見ると山の頂上付近だろうか、遠くの山のふもと付近に小さな町や村が見える、そして俺の周りは岩を削って作ったような古びた祭壇や朽ちた柱が建っていて何かの儀式に使ってたような舞台の上にいた。
「また変な所に放り込まれたもんだ..」
この世界は最初に送られた世界なのかそれとも別の世界なのか分からないが、さっきから毒に当たったような苦しさと痛みが俺の体を襲っている、魔力や体力を回復させる薬を"異空間収納"から取り出し使用するが回復する気配がない。
「やってくれたなあの糞女神...あの謝罪はこういう事か..」
恐らく回復させない為に神の呪いのような呪文をあいつは唱えていたのだろう、そして騒ぎを起こされ自分のした悪事がバレそうだから証拠隠滅で異世界に放り込んだと。
「ふふふ..本当にマヌケな女神様だ、先にエルサをあの部屋から開放させといて良かったな」
数分か数十分も経てば瀕死の自分は呪いで体力を削られ死ぬだろうと悟り、何とか起き上がり景色の開けた場所まで移動し巨石を背に座り込んだ。
「腹減ったなぁ..日本に帰ってジュースにお菓子食べたかったな...」
視界が霞んできてボーッと色んな事を思い出しながらこんな所で死ぬのかと悲しくなってきた時、目の前の空に魔法陣が現れ、白い鎧を着け槍を手にした長身の天使二人とその後ろに魔法使いのような格好の茶色い服を着た爺が下りてきた、女神に攻撃したから処刑人の登場かと思い立ち上がろうとするがもう動けなかった。
『お前か?天界で女神様に逆らった天使は?』
「..天使様じゃない..人間だ」
『人間?貴様からかっているのか?』
「もう..いい...殺るならさっさと..殺ってくれ...」
長身の天使は俺の灰色の翼を見て勘違いしてるのだろう、もう意識を保ってられそうにない中、長身の天使の後ろでジッと俺を見ていた爺が前に出てくる。
『何か最後に言い残す事はあるかの?』
「...くたばれレミア...ありがとう..レイニー様」
最後に忌々しい女神レミアと、昔先代勇者が死んだ後、俺に天使の力で悪魔化を防いでくれて命を落とした下級天使様に感謝の言葉を残し俺の意識は途絶えた。
『あ?死んだ?俺達が来た意味なかったな』
『創造神様、こいつは何者ですか?こんな灰色の翼を持つ天使を私は知らないのですが、それに下級天使のレイニーに感謝しているようでしたが』
「ふーむ、実に興味深い、見た目は天使に似ておるが人間だと言っておったのぅ...」
『どうします?こいつ死んじゃったしエルサ様やレミア様の問題もありますしこのままここで燃やし尽くします?』
「いや、こやつの体と魂はワシが回収しておこう、後で実験..じゃなく復活させて詳しく事情を聴かねばな!エルサとレミアにはコヤツは死んだと伝えておくように」
『はぁ..またですか創造神様、今回は私達に似た実験体ですから気持ち悪い事しないでくださいよ』
長身の天使の片割れは心底嫌そうな顔で創造神の趣味に文句を言い二人は天界に帰って行った、1人残り遺体を調べだす創造神、体に触れ何かを読み取っているのか小さな魔法陣が展開されている、そして悲しい表情をするとため息を吐いて呟く。
「なるほど、既に悪魔合体の実験体であったか、それに下級天使に悪魔と混ざりに混ざっておるの...」
しばらく遺体を眺めた後、創造神は懐から小さな黒い小箱を取り出し蓋を開けると遺体がその中に吸い込まれていき遺体と魂の回収をおえたのか天界に帰っていった。