B-12
女神レミアと会った翌日、再びダンジョンに潜った三人だがこの日の勇者二人はいつもより気合いが入っていた、レベルが上がり難なく魔物を倒せるようになり何処か気が緩んでいた二人だが天使と魔王の話を聞いて雑魚と化したダンジョンの魔物でも真剣に戦うようにしていた。
『今日は気合いが入って動きにキレがあって良いぞ二人共』
「おーよ!さっさとダンジョン攻略して次に進まなきゃな!」
『ここを攻略する頃にはレベルも60くらいにはなるかな?何処までレベル上がるか女神様に聞けば良かった』
『そうなれば私は二人にどんどん置いていかれるな、足手まといにならないよう頑張るよ』
「お!そうだ!ニールさんに頼んで見ないか?勇者の力をミレイルに渡してほしいって!」
『勇者の力を渡す?』
ヒロキはニールが元日本人と知ってから天使呼びを止めて名前で呼ぶようになっていた、そしてそんなヒロキの発言にリサも賛同する。
『同じ魔王を倒す仲間だし勇者が三人も入れば勝てるかもしれないしね!私もお願いしてみようかな』
「ちょっと待て、説明してくれ!」
この世界にはもう異世界の勇者は現れない代わりにニールが持つ勇者の力をこの世界の誰かに託すと話していた事をミレイルに話す、そしてその力は代々受け継がれて行くようになるかもしれない事も。
『そんな大事な力を私が...良いのだろうか?』
「他の奴に渡すより遥かに良いと俺は思うぜ?」
『そうよ、ミレイルや仲間の部族以外に居るの?勇者の為に過去から今まで頑張って来た種族は?』
『いない!それは断言する!』
『なら決まりね!天使様が認めてくれるか解らないけど私もヒロキも一緒に頭を下げて頼んでみるよ!』
こうして三人はダンジョン攻略とレベル上げを中断してさっそくニールに会いに行こうとダンジョンから出て、ミネル王国の王女の部屋へと転移した、安全な転移先が思い付かなかったからだ。
一方その頃、魔大陸では女神エルサがようやくアルミナが覚醒前の魔王だと気付き、新しく作った家の隅で一人ガタガタ震えていた。
神罰を受け世界の監視を直接この世界でするように言われていたのにそれを守らず、女神である自分が魔王を可愛がり知恵を授けて戦い方まで少し教えてしまい、それを『新しい種族が出来るかもしれない』と創造神様に報告するようニールに頼んでしまって創造神様にそれが魔王の事だったと知られたら今度は自分が存在を抹消される罰が下るかもしれないと思っていた。
「どうしよう...どうしよう...ほんとにどうしよう...」
女神エルサが必死に考えを巡らしている時、家の外では魔王アルミナが倒してきた魔物の肉を大人しく焼いていた、そして木の板に切った肉を乗せエルサの前に持ってきた。
『おい焼けたぞー!食っていいぞー!』
食事の時はやたら大人しくなるアルミナ、この初めて見せるアルミナの気遣いにエルサは助かる僅かな可能性を感じ、絶対にアルミナを人と仲良く出来る新たな種族の長として育てようと命懸けの調教をする決意をするのだった。




