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ヤンキー君がまだ何か言ってるが俺の意識は完全にレミアに向いているので全く耳に入ってこない。
「レミア様?貴女が動かないなら俺がこの二人を強制的に魔法陣に放り込みますよ?」
『待って、あなた達は早く魔法陣に入りなさい、私はこの...て、天使さんと大事なお話がありますから』
『分かりました、ほらヒロキ行くよ!私達が居るほうが迷惑みたいだし』
やっと鬱陶しいのがいなくなると安堵するが、早く事を済ませないとエルサが誰か連れてきて邪魔になるかもしれないと思い"異空間収納"から剣を出す、それを見たヤンキー君改めヒロキ君が更に喚くが眼鏡っ子に頭を叩かれ無理矢理魔法陣の中に引っ張り込まれて消えていった。
『あの、貴方は誰ですか?それになぜ剣を出したのです?』
「俺は30年前に貴女がくだらない理由で異世界に勇者として召喚した正木金弥です、そしてこの剣は貴女が魔神と戦う為に私に授けてくれた剣じゃないですか、忘れたんですか?」
『魔神..!どうやってあの部屋から出てこれたのですか?神や天使しか開く事の出来ない扉なのですよ?それにその見た目..』
"魔神"でようやく誰か分かったようだがどうやらこいつはナゼ俺がこんな姿になっているのかすら分かってない、やはり俺達を異世界に放り込んだ後はずっと放置してたのだろう、それに天界の転移先が監禁部屋に設定していたのに腹が立つ。
「もういいや...死ねぇ!」
『なっ!?』
剣を抜きすかさずレミアに斬りかかる、レミアが手を前に出して何かのバリアのような黄色い膜に守られ剣が通らない、剣に魔力を流し何度も押し斬ろうとするがビクともしない。
剣を捨て肉弾戦に移行するが殴ろうが蹴ろうが体に当たる瞬間に避けられる、エルサと違い全く攻撃が通用しない女神に焦りを感じるがもう手を出してしまったから覚悟を決める。
「やっぱり普通に攻撃しても無意味だな、さすが女神様ってか?」
攻撃が当たらないなら別の手段でこいつにダメージを与えようとありったけの魔力を全身から体の中心に集める、天界だからだろうか周囲からも魔力が集まってる微かな感覚を感じるが集めた魔力を凝縮し続ける。
『やめなさい!何をするつもりなのかそれ以上魔力を集めるなら天界への攻撃意思と見なしますよ?それにその魔力に反応して他の天使が集まってきちゃうじゃない!お願い止めて!』
「もう遅い、俺と先代勇者の恨みを少しでも晴らさせてもらう...くたばれ糞女神ー!!」
『ちょっ!』
-攻撃が当たらないなら自爆すれば良いじゃない!-の精神で編み出した俺の自爆全体攻撃技でレミアに肉薄し凝縮した魔力を一気に外へ開放させる。
近距離で捨て身の自爆攻撃にあいバリアが破壊され凄まじい衝撃にレミアは吹き飛ばされる、だがそれでも腕に擦り傷程度にしかダメージを与えれなかった。
「はぁ はぁ はぁ はぁ、ハハハ..ノーダメージかよ参ったね...」
恨み怒り殺意を含めた全身全霊の命がけの攻撃すら効いていない女神に魔力切れと自爆の肉体ダメージで瀕死になりもう攻撃して傷付ける手段が無いと諦め倒れる。
<今の爆発はなんだー?>
遠くの方から誰かの声が聴こえる、他の天使が気付いたのかレミアが慌てて俺に近寄ると鎧の襟元を掴んで魔法陣の方へ引きずりだした。
「痛...へっまた何処かの異世界に放り込むつもりか?お前だけは絶対許さねーからな...」
『ごめんなさい...ごめんなさい...』
目を潤ませ謝罪を繰り返すレミアに顔面パンチの嵐を食らわせてやりたいと思うが意識が朦朧として思考が鈍くなってきた、レミアは魔法陣の中に俺を放り投げると呪文を唱えだし紫の煙の塊を俺に当て魔法陣を起動させた。
『本当にごめんなさい、マサキ・キンヤさん...』
「正木金弥は先代の勇者だよマヌケの女神様」
『え?』と驚いてる女神レミアの姿が薄れていき魔法陣から何処かに飛ばされるのであった。