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 とある異世界の荒野、魔神と灰色の翼を生やした勇者の長きに渡る戦いが終りを迎えようとしていた。


「立てオラッ!まだ終わりじゃねーぞこの○が!」


 一部が欠け傷だらけの赤い鎧に身を包んだブチギレ勇者に青く輝きのある綺麗だった長い髪を掴まれ激しい暴行を受ける魔神、下品な罵声と(ゴンッ!バチン!)と殴打とビンタの音が荒野に響きわたる。


『た..たすけ...もう逃げないし抵抗しないから...し..しんじゃう..』


 純白の翼を生やし銀のドレスを着飾っていた魔神は全身をボコボコに殴られ斬られ蹴られたりでドレスは血まみれでボロボロになり、腫れ上がった顔で涙を流しこれ以上殴られないよう必死に許しを乞う。


「ハァ ハァ...本当だな?また逃げたら次は殺すぞ?」


『...翼も折れてるし、魔力切れで..逃げたくても逃げれませんよ..』


 小バカにしながら転移を繰り返し逃げ回っていた魔神、今まではそれで逃げきれていたが目の前の天使のような悪魔みたいな男は何処で転移魔法を覚えたのか何処までも追いかけて来てついに魔神を捕まえる事に成功したのだ。


 逃げないと頷きながら泣き言を言う魔神の髪の毛から手を離し、乱れた息を整える、徐々に冷静になる頭でボコボコにした魔神を見ると元の美人な顔が観るも無惨な顔に変形していて若干やり過ぎたか?と思うが、とりあえず休もうと腰を下ろし自身の体や拳の傷を癒そうとヒールの魔法を発動させる。


『あの..逃げないから私にもヒールか下級の回復薬だけでも...』


「...ダメだ、あとで回復させてやるがまず先にこれを着けてもらう」


 この異世界に来る前、先代勇者が女神から渡されたという魔神の力を封じる金色に輝く指輪を"異空間収納"から取り出す、この指輪を魔神に着けさせるのが使命であり元の世界に帰れる鍵になると先代の勇者から聞いていた。


『その指輪は!..なるほど、貴方は創造神様が送り込んできた刺客の...天使?でしたか』


 指輪を見た瞬間ボコられた不細工な顔で驚いたかと思いきやすぐに何かを諦めたような雰囲気を出す魔神、(創造神て誰だよ)と内心でツッコミながら魔神の勘違いを正す。


「創造神?そんな奴は知らないし俺は刺客でも天使様でもない、成り行きで勇者になっただけで地球からこの世界に強制転移させられたただの日本人だ、それにこの指輪を先代の勇者に渡したのは女神のレミアって奴だ『レミアですって!』ぞ?と、そんな無駄話より先にこの指輪を着けさせてもらう」


『なぜあいつがその指輪を...それに勇者..先代...地球に翼の生えた知的種族なんていたかしら?それにアナタからは天界の天使と似た力を感じてたからてっきり..』


 俺の素性が気になるのかブツブツ言いながら何か考え込んでいる魔神、勝手に魔神の右手の人指し指に指輪を着けると指輪が白く光りだし指と同化したように食い込んだ。


「ハァ、やーっとこの世界から抜け出せる時が来た!ほんとに長かった...お前が逃げなければもっと早く地球に帰れたのにな!聞いてンのかオイ!」


 まだブツブツ何か考えてる魔神に中級回復薬の入った瓶を取り出し頭からぶっかける、腫れた顔や曲がった鼻が元に戻っていく。


『少しお聞きしたいのですが、勇者である貴方は女神レミアと会った事はあるのですか?それに先代勇者とは?天界の天使と似た力を持ってるのはナゼ?なぜ地球人が翼を?』


「レミアって奴には会った事も声を聴いた事もないな、お前に詳しく後の事を話す気は無い」


『そうですか、会った事も声を聴いた事もないと..フフ...フフフフ』


 何が可笑しいのかニヤニヤしだす魔神、それに指輪を着けても光ってるだけで一向に何の反応も見せない、女神から迎えが来るかこの世界に強制転移させられた時のような魔法陣が現れるかと思ったがそれもない、もしかして正当な形で勇者になったわけではない俺ではダメなのだろうかと不安になってきた。


「なぁ、その指輪は勇者以外が使っても意味が無いのか?」


『いいえ、これは勇者じゃなくても使えますが下界の者には神に許可を得た者にしか使えない指輪です、それなのに貴方は使用出来ました、これは本当におかしな事ですねぇ(クスクス)』


 何やら俺がレミアって女神と関わりが無い事に問題があるような言い方をする魔神、どういう事か全く意味が分からない。


「この異世界に来てから30年近くになるが、どれだけ祈ろうが助けを求めようがその女神様とやらに何の返事も貰えなかったんだがそんなものなのか?」


『あらあら、次から次にまぁ(クスクス)、本来であれば神が遣わした勇者に大きな困難が立ち塞がった時に助言をしたりしますね、でも貴方は何の返事も無かったと(クスクス)』


「そのニヤケタ面を今すぐグチャグチャにして殺してやろうか?」


 -困難に向き合った時、祈れば返事がくる-そう受け取れる魔神の発言に今までの怨みやら怒りが爆発しそうになる、先代の勇者も死ぬ間際までずっと神に助けを求めていたのに何の返事も無かった。


『ひぃ..ごめんなさい!でも私だってあいつに力の大半を奪われてこの下界に落とされ閉じ込められてる恨みがあるのよ?殺るならレミアを殺って!』


 どうやら俺も先代勇者も魔神と女神の争いに巻き込まれていたらしい。

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