痣のある女
※ちょっと重たいチラ裏です
ノンフィクション?
駄目そうなら、ブラウザバック!
私にとっては何でもないことだが、他人からは結構重く受け止められるらしい。なので隠すつもりもないのだが。いざ、なんとなく言おうとするとカミングアウトが難しい。
あなたにはそういう秘密はないだろうか? コンプレックス的なものも?
私にはある。リアルでは基本オープンだから、ネット上だけで。
実は私は「病気」……うん、私は病気と考えてないが、一応皮膚の病の一種としてたまに記載を見かける、ちょっと珍しい病気を抱えている。
持病と言ってもいいだろうが痛くはない。
ただ見た目がちょっぴりユニークなだけだ。
私の顔についている「病名・症状名」は太田母斑という。いわゆる時間経過では消えない、先天性の青痣が顔面の広範囲に広がっている人間である。
犬にブチがあるように、私にもある。
こう言ってみれば何でもないように見えるかね。
あ! 勿論こすってもとれませんぜ。やってみるかい?
私の性別?
うん、タイトルにあるでしょう、女性です。
普段フィクションだと男性のが内面を書きやすいんだけど、女。
……えー、「女の子なのに可哀想に」?
よく言われますわ。でも違う違う。
どうせ顔に何もなかろうがモテやしなかったさ。
お洒落だの化粧だのが面倒くさいと思う人間ですよ私? 見た目における洒落っ気は恐らくゼロですよ。TPOに合わせて最低限にやってりゃ大丈夫……逆にいうと、周り見渡してすっぴん女子が1人でもいたら、そういう顔だろうが容赦なくすっぴん。たぶんね!
そんなものぐさな性格なんで、「女は化粧がマナーだ!」なんていう人はくすぐり殺してやろうかと若干思うわけで。
おい、あんたらですかこんな面倒臭いマナー作ってんの!
いや、「たまにはお洒落したい!」ってくらいの軽い気持ちだったら私も覚えがあるからね?
でも正直「やりたい人、やりたいときだけお好きにどーぞ!」でいいじゃんよ……死ぬもんじゃなし。
というわけで大体すっぴんでウロウロしてるけど、意外と誰にも突っ込まれないし、普通に生活できるんだなー、顔面の右半分とか左半分が妙な色でもー。
え? 「今の見た?」「顔ヤバくね?」的なやつ……? うん、やるなとは言わんし、気持ちはよくわかる。
慣れてますから勝手にしといてー……と言っても微妙に気にはなるので、私が立ち去った後なら、いくらでもどうぞお気兼ねなく。好奇心に罪はない。
ってなわけで歯医者にもコンビニにも習い事にも、このユニーク・フェイスで行くのが私である。
ファンデだのコンシーラーだのBBクリームだので一応隠せないこともないけど、元々の色素が濃すぎて接近1.5mで普通に分かるしね。
(やり方が悪いのもあるかもだけど)あんなんに騙されるのは、正直眼鏡忘れた老眼のおじいちゃんぐらいでは?
ともかく生まれた瞬間は普通のちょっと重ための女の子だったらしいんだけど、生後数ヶ月で色素異常が表面化。
顔面の半分が灰色? あ、緑がかってるだの青だの紫だの昔の液晶の色だのいう人もいる。うん、モンスターかな? いや私だったわ。生後数ヶ月でそんな状態になったので、物心ついたときから私はこの顔だったという話になる。
だから特に年配の方によく言われるのだが、「可哀想」「普通に生まれてれば……。」なんて言われても正直、ピンとこないというか……的外れ感があるのよ。二十ウン年、これでフツーに生きてきたんだし。
まあ私の親は傷つきそうで怖いんだけど。だから親前ではそのワード、言わないであげてね。
割とキレちゃうぞ私。
ちなみにレーザー治療という手もあるのは百も承知。でもホクロだとかシミと同じで一瞬で終わるのかと思いきや、調べたら違うと。具体的にいうと色素沈着してる層が深すぎてめっちゃ長期化する上に、一度や二度皮膚を焼き切っても大体の場合普通に復活する。ウワァオ。何これ超面倒!
あと顔面が黒いのは慣れてるけど、長期間ガーゼまみれはちょっと違う。
皮膚の紫外線防御機能も含めて焼き切っちゃうから、レーザー後って日光にさらしちゃいけないのよ患部を。
えー……それ、アトピーの塗り薬ですら嫌で暴れてた私なら絶対イライラするし、なんか猛烈に恥ずかしい。視界が遮られるからオチオチ仕事もできん!
というわけでボツッッ!
祖母が死ぬ間際に「あれじゃ嫁の貰い手があるわけない、可哀想だから治療しろ」と泣きながらオカンに怒ってたのを「家政婦は……」的に聞いちゃったこともありますが、さすがに今際の際の言葉でもちょっと嫌でござる。前述の理由で。
あとあんたもか可哀想勢。霊魂くすぐるぞ。
ともかくそんな感じでのびのびと顔丸出しに生きてます。「あれ、もしかして愁繕かな?」と思ったらそっとしといてください。誰かが声かけて別人だったら、それこそ申し訳ねえや。
しかしたまにしか見かけないけど個人差があるとはいえ、濃い人ならすっごい目立つ症状。……確かに、見る人が見たらハンデだね。
高校上がって最初に目についた接客業のバイトなんてことごとく落とされた上に、面接の場で「君、その顔で社会に出て仕事できると思ったの?」なんて言われて凹んだ&ちょっとムカつくし。
(以来、そのチェーンにはよっぽどのことがない限り行かないことに……いや店長、それ普通当人にいう? 黙って落とせっての!)
でも流通系、工場系は見た目とやかく言わないので助かってます。あと、意外と劇団だとか声優さんもね。さすがにアイドル育成したいところにはノーセンキューされたけど、意外とこの顔でもノリノリで働けるんだぜ?
だからもし同じような顔面の持ち主がこれを読んでる人の中にいたらの話。
君は希望を持つんだよ、希望を。「やりたいこと」に向かって足を踏み出せないのを分かりやすい顔のせいにするんじゃねーのよ。
本当ね、声に出して言いたい。
「人間、見た目がなんだろうがどうだろうがなんだってできるさ」!
何かの間違いで書籍化したらーだの、声がついたらー、舞台化したらー、違う分野でプロ目指してるーだの、Twitterではめっちゃワーワー言う私ではありますが、最終的には身の回りにそれが言いたくて様々なことに挑戦しているのもあります。
見た目が一般向けじゃなくても一般向けにお仕事はできるぞー! ってね!
作家になれるぞ……はまだなってないか。
絵描きになれるぞ……は途中で選択肢ミスったか……役者になれるぞ……えっと、なったことあるんだっけ私? 目指してたけど着地点が微妙すぎて自分でもわかんない。
創作できるぞ!
……うん、これで勘弁しといてください!
顔面崩壊、作画崩壊がなんだってんだ、中身のストーリーだよ、な・か・みッ!!
勿論こんな見た目じゃ、チラッと映っただけで身バレ必至だから慎重にはなるけれど(痣の範囲や出方は個人で違う)。どの業界だろうとある程度しっかり実を結んだら胸を張って露出でもなんでもしてやるさってーの!
うん、逆にいうと「見た目がキャッチー」なのは分かってるんですよ。インパクトあるし。これで露出したら少しは話題になるんじゃねえの、とは思うんですよ。
ただ、顔面が先に出て「こんなんだけどけなげに頑張ってるの! 応援してね☆きゃぴっ」みたいな売り方はしたくないし言いたくないのよ。
何で芽が出るにせよ、有名になるにせよ、『現物』が先。
ちゃんと違うことで売れてから「実はこんな人がやってるよ! 私でも売れたから希望持てよ皆の衆!」ってしたいのよ。
それが目標の一つだよ。
なんだって誰だって、諦めなきゃどこにだっていける。
なんだってできる。ある程度は!
……何せ、数年前。あまりに出会い頭の人だったりに当たり前に治療を勧められたりするので、「いやそんなに自分の顔おかしい? 他の人はどうしてんの?」と思った際、ネットで見かけたお仲間さんは「自分の顔が嫌いな人たち」ばっかりだったので、衝撃を受けたのです。
恥ずかしくて出かけられないとか。辛いとか。死にたいとか。
いや、いやいやいや。
個人個人が嫌いなのは別にいいよ? 人それぞれだよ。
ただちょっと違和感があるのよ。私のように「なんとも思ってない」「むしろこれでないと逆に違和感が……メイクで隠したこともあるけど落ち着かない……」が、ちょっとさらった程度じゃぜんぜんいなかったので。
……後ろ向きで、ウジウジな人の多さよ。
外見の細かい差異なんて――いやこういうと悩んでる人に失礼か?
ともかく開き直って、生活してれば意外と気にしない人って多いはずなのに。
なのに、ここまで思いつめられちゃうのか、人間って。
「接客業がしたかったのに諦めた」とか。
「幼い頃はアイドルになりたかったけど、無理だと知ってるから別にいい」。
「好きな人に告白できない」とか。
いや、わからなくもない。
私だって幼い頃は人の目が怖かった。
「その顔で社会に出て働けると?」――あの言葉が何度も頭をよぎったし、今でもふとした瞬間に思い出す。それでも私個人としては、最終的には「いや元々こういう顔なんだぜ? 恥じる必要はないよ!」そう思ってしまえるから、違和感があるのだ。
……貴方達がそこまで追い詰められるのは、あのときに聞いたアレを吐ける人。
初めてアルバイトの面接にきた高校生に、「その顔で」――そんな言葉を普通に言えちゃう人が、たまにいるからかい? そう思ったりもした。
まあそもそも気にしない人は、あえてこんな外見性別なんて特に関係のない「匿名」のインターネットに、自分の外見について書き込んだりはしないだろうさ。きっと折り合いもつけてるさ。
ああ、私が半端なんだろう。そう思いつつ、逆にモヤモヤした。
だって今は情報社会だ。「自分の持ってる痣ってどんなものなの?」――そう、ふと思ったこれからの子たちが、こうしてインターネットで調べ物を始めて……ショックを受けたりすることもあるんじゃないだろうか?
「ああ、ここまで自分の顔って恥ずかしいんだ」、そう思ったりしない?
今苦しんでる人たち以外に……「外に出られなくなる子」が増えたり、しない?
いずれ治療する人がほとんどだろう。私のようにそのまま生きていくことを決めちゃった人のほうが少数派だろう。それでもさ。治療までの間ぐらい、もうちょっと陽気に過ごせるような環境があってもいいと思わないかね。
「気になるならレーザー治療しような!」ぐらいでいいと思うのに、「病気だから治療するのが当たり前」「メイク必須」「人に会う顔じゃねえ」「こんな普通じゃない顔で生きてる人間wwはよ焼けやwww」。
うん――そういう雰囲気になりがちなの、ちょっといかんと思うのよ。何も顔にゲロ塗りたくって生きてるわけじゃないんだから。
あとレーザーに踏み切れない人って私以外にも少なくないわけだし。
ってか、軽くいうけど麻酔しないのが大半なんだよアレ? 一瞬とはいえ麻酔なしに顔面の半分とか広範囲に焼かれるの、普通ちょっと怖くないです?
私ウダウダ言ったけどぶっちゃけ「これ絶対痛いわ! あと麻酔してたところで怖すぎるわ!」が今までの不便の経験を上回ったからこそ、レーザー当てる気になれねえんだぜ?
……そんなモヤモヤなり、憤りなり。
そんなあれこれも活動動機の一つに加えて、私は今日を生きています。勿論優先度ナンバーワンってわけじゃないけど、あわよくば、みたいな。
何でもいいから私が爪痕を残した暁には、誰かの希望になれればいいなと。
だから何であれ、好きなことには手をあまり抜かないわけです。
「やりたい事は必ず手を出す」「継続する」そんな方針で、今日も元気に生きている。
……私は正直、他の太田母斑持ちをほとんど見たことがありません。
たまに「あれっ、今すれ違ったの……」程度で、話をしたことがない。
一度も生の声を聞いたことがない。
だから身の回りにはいつだって、「痣持ち」は自分だけ。
ケースバイケースだとは思う。
でも、持って生まれたものをバカにされたりしたら誰だって悲しかろう。自信がなくなることもある。
だから少しでもウジウジくんたちを減らしてみたいとは思った。勝手に。
まあ、自己満足ではあるかもしれない。
……『未治療だって働けるし、夢は叶うぞ!』
そういつか、大勢の前で言いたくて。
『たとえ丸出しだろうが生きていけるぞ!』
そう言いたいがために、歩き出した。
出会ってしょっぱなに「その顔どうしたの?」って言われるのは定番だ。
「生まれつきだよ」と普通に言ったら、大体皆「ふーん」と納得する。
だから幼い頃から――少なくとも同年代の人間からはとやかく言われないし、突っ込まれたことがないのが私だ。
意外と誰も、何も言わなかった。普通に接してくれた。
槍玉にあげるとして「勉強ができない」だの別のこと。いじめるとして「オドオド感が気に入らない」だの別のこと。
……そう考えると今までラッキーだったんでしょう。確かにある種、人間に恵まれてたのかもしれない。だからこそ私は、見た目に対してはさほど後ろ向きには捉えていない。
それが私です。私という、一個人。
普段書いてる連載小説のほうだったり、Twitterだったりで透けて見えちゃうこともあるかもしれませんが、私は「自分の性格」が、自分で苦手!
でも「目立つ見た目」はまた別で、個性の一つだと思ってます。
小さい頃、電車の中で向かい側の人と目が会うだけで高確率に「ギョッ」とした顔をされたのは覚えている。それ以来、人の目を見るのが確かに苦手にはなりました。
でも、それだけだった。
私がこの顔であったことで、未だに尾を引くものはそれだけの話。
「顔、覚えやすくていいね!」
「ありがとう!」
だったり。
「あっ、覚えてる? 幼稚園の頃一緒だった●●!」
「すまんが知らん!」
なんて会話が道ですれ違いざまに交わされたり。……うん、ごめん! 目が見れない=顔見て会話してないから20年ぶりに声かけられたところで覚えてるわけないんだ!
「愁繕お前、よく生きてるなその顔で!」
そう、そんなことも言われっ…… は !?
なんてこと言うんだよ、君は!?
「あ、違うよ」
そう。「よく生きてるな」。
ある日、訳の分からないことをいきなり言い出した友人は、そう勢いあまって私に言った挙句に謝ったりもした。
「……俺も多少はコンプレックス持ってるから言うけど、お前の方がパッと見て目に見える分ヤバいだろ?」
「まあね」
そいつは仲のいい男友達だった。お互いに良い部分も悪い部分も知りすぎて、むしろ付き合いになんて発展することもない大親友だった。
そして私からしたら些細なことだが、彼にも「コンプレックス」はある。目に見えないけどね。それは知っている。
ただ、お互いに「些細なことだ」と言い合うのが日常茶飯事だったので、こういうことを彼が思っているのは、少し予想外だった。
……「よく生きてるな」、だって?
「だって俺、こんなのでも悩み続けたのに」
彼なりの「コンプレックスの証」を見せながら、彼は言う。
「……これでもしお前の顔なら、思春期辺りに自殺でもしてるよ。お前がその顔で明るく生きてこれたのはさ、『強さの証』なんだよ」
はい? 何ちょっといいこと言ってくれてんの?
そう思ったわけです。ある夏の日。夕方、学校帰りでのこと。
「……何言ってくれてんの? 惚れるぞテメー!?」
「だが断る! 3次元に興味はない!」
「ですよね若人よ!!」
「お前もな!」
……なんて、そんな青春の1ページを、数年越しに創作のネタにしてみたこともあったり。
うん、悪くないぞ。天秤にかけたら。
フッツーにいいことも悪いことも、両方あるぞ。
「痣のある女」の人生も、普通の人の人生と変わりはなかろう。なんてさ。
……そう、ふと思ってみるのです。たまにね。
普段は自分が特別な見た目だなんてうっかり忘れて過ごしてるよ。
顔の色がいくら変わってようが、『ものぐさな干物女のフリーター』!
これが、きっと本来の私なんだからさ。
これはきっと……まあ、うん、そういう話。
……ぶっちゃけすぎた感は正直あるが、書けちゃったんだから仕方ない。
ないったらない。捨てるにはしのびない。
誰得かわからんけど!