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12-9(橋の街にて9(王太后ペルの物語1))

 華やかな王宮の場面から芝居は始まった。

 王や王妃、侍女たちが歌うコーラスが、半円状の観客席にこだまする。舞台の背後には高さが10mを越える壁があり、その壁から舞台をすっかり覆うほど天井がせり出していた。

 1万人は収容できるという観客席は半分以上が埋まっている。

 すでに日は落ち、辺りは暗い。舞台の両脇には大きな篝火が置かれている。けれど舞台を隅々まで照らすには不十分で、舞台上が昼間のように明るいのは、カイトには判らない何らかの仕掛けがあるのだろうと思われた。

「三代様のお誕生日を祝っているのよ」

 カイトと並んで座ったイクが説明する。イクの向こうにはクロもいて、ときおり両の耳をぴくぴくと動かしながら機嫌よく酒を呑んでいた。

 彼ら3人が座っているのは、パロットの街から馬車で半日ほど離れた街にある野外劇場の最後列の席である。

 昨日のことだ。

 トワ郡に行きたくない理由をクロから聞いて、カイトは改めて壁に掲げられたアリア姫の肖像画に目をやり、ふと、アリア姫と並んで飾られた肖像に目を止めた。

「ねぇ、クロ」

「ん?なんだ?」

「アリア姫様の隣のあの人は、誰?」

「ああ?」

 クロが酔眼を、カイトの指さす先、アリア姫の肖像画の横に掲げられた肖像へ向ける。

 老女だ。

 まっすぐ正面に向けた視線が力強い。

「ああ。あれはぺル様だ」

「どなたなの?」

「三代様の王妃様だ。さっき話したろ?薫風王様と現王の母上だよ」

「オウタイコウ様……だっけ」

「そう。けど、ペル様のことなら、オレよりイクに聞いた方がいい。

 おーい、イク!カイトがペル様のことを聞きたいんだとよ!」

「えっ!」

 イクはすぐに姿を現した。ばたばたと小走りに駆けて来て、両手をテーブルについてズイッと身体を乗り出す。

「なに?ペル様の何を聞きたいの、カイト」

 瞳が明るく輝き、声が弾んでいる。

「えーと、どんな人なのかなって」

 イクの勢いに押され、戸惑いながらカイトは尋ねた。

「いいわ。話してあげる」

 ガタガタとイクが他のテーブルから椅子を寄せてくる。

「ペル様はね、クスルクスル王国で一番国民から尊敬されている御方よ。三代様の王妃様で、薫風王様と今の王様のお母さま」

「うん」

「それでね、ペル様は元魔術師なの。それが三代様に見初められて、王妃様になられたのよ!」


 元魔術師と弾んだ声でイクに言われてもカイトの反応は薄かった。

「ふーん」

 カイトの応えはこれだけである。

「ふーん?ふーんってそれだけ?元魔術師が王妃様になられたのよ!スゴイと思わない?!」

「えーと。すごい、のかな」

「王妃になるのに元魔術師じゃあ身分が違い過ぎるってことさ、カイト」

 カイトがため息を落とす。

「ゴメン。わたし、やっぱりまだ身分ってよく判ってなかった」

「だとよ。イク」

 イクが首を振る

「何てことかしら。ま、仕方ないか。それじゃあ、そうね。カイト、あんた、魔術師に会ったことある?」

「うん」

「へえ」と感心してクロ。

「どんな人だった?」

「一人はとってもおいしいお酒を造ってた。もう一人はカニによく似てた」

「なんだそりゃ」軽くクロが笑う。

「なんだか話が噛み合わないわ。

 ホントにその人たち、魔術師だったの?

 魔術師って言ったら、こう、足元まで届く黒いローブを纏ってさ、怪しい研究ばかりしている人たち、って感じしない?」

「ゴメン。わたしが会った人は黒いローブは着ていなかったし、二人ともとても優しかったわ」

「魔術師もいろいろいるさ。イク、ペル様のことに話を戻しな」

 クロが口を挟む。

 イクはため息をついた。

「判った。とにかくね、ぺル様は元魔術師なの。お二人がどこで出会ったかについては、いろんな筋立てがあるわ」

「スジダテ?」

 カイトが首を捻る。

「芝居だよ、カイト。王家に関する芝居は人気なんだ」

「えーと」

「あたしが好きなのは、『王妃の黒いローブ』ってお芝居。このお芝居ではね、ペル様はクスルクスル王国の図書室にある魔術書が読みたくて宮廷に忍び込むんだけど、魔術の心得があった三代様に見つかってしまうの。

 それがお二人の出会い。

 お優しい三代様はペル様を見逃すだけじゃなく宮廷から逃れる手助けまでされて、それでペル様は三代様に心を奪われてしまうのよ」

「……芝居の話、よね?」

「そうだ!」

 イクがいきなり手を叩いて叫ぶ。

「な、なに?」

 怯むカイトに向けたイクの瞳が、さっきより明るく輝いていた。

「あたしが説明するより、実際に見に行った方が早いわ、カイト!」

「見に行くって?何を?」

「『王妃の黒いローブ』よ!ちょうど近くでやってるから!」

「オレも行っていいか?」

 クロが横から口を挟む。

「好きなの?クロも」とカイト。

「姫様って、そそる響きだって思わねえ?」

「……」

 彼らが野外劇場に揃って座っているのは、そういう訳である。


 明るい宮廷の場面に幕が引かれ、一人の少女が走って舞台に現れた。

「あれが子供時代のペル様よ」

 イクがカイトに囁く。『王妃の黒いローブ』では、ペルは孤児の設定だという。何かを盗んで逃げていたらしい少女は、顔の左半分を仮面で覆った魔術師に拾われ、舞台が暗転した。

 舞台を照らしていた灯り--照明と表現した方が相応しいだろう--が、篝火も含めて消えたのである。

 何かがひらひらと暗闇で舞う。ひらひらと舞台で舞って、ジャンッという効果音とともに再び照明が舞台を照らし、黒いローブを纏った一人の女が舞台上で振り返った。

 主役の登場だ。

 拍手が観客席から湧き起こる。

 イクも瞳を輝かせ、満面の笑顔で拍手を響かせていた。

 カイトは舞台よりも、無心と言っていいような熱心さで拍手するイクの姿が、何より強く印象に残った。


 ペルが王宮に忍び込む。魔術書を読むためだ。

 忍び込んだ図書室にいたのは、細身で背が高いどこか儚げな青年だった。説明されなくてもこの人が平凡王(芝居中ではまだ王ではないが)だと、カイトにも推測がついた。

 平坦だが、穏やかな口調で平凡王がペルをからかう。

 そこへ、女性がひとり入って来た。身長は低いが、気品がある。その女性に向かって、「母上」と青年が声をかける。つまり、アリア姫だ。

「誰かいるのですか?」とアリア姫に問われ、「いえ、ここには誰も」と青年が答え、「もう大丈夫だよ」と振り返った平凡王の背後に、ペルの姿はすでになかった。

 幕が下り、幕の前をペルが駆けて来る。

 舞台の中央で足を止め、「……あれはアリア姫様。ということは……、あの人は……」と独り言を言って、ペルはいきなり歌い始めた。

「どうして、こんなところで歌を歌うの?」

 囁き声で訊いたカイトに、「そういうもんだよ。黙って聞いてな」と答えたのは、隣に座ったイクではなくその向こうに座ったクロである。

 うっとりと両手を胸の前で組んで瞬きすらしないイクの姿に、どうやらそうした方が良さそうだと、カイトは舞台へと視線を戻した。

 数日後、海都クスルで開かれた海神の豊穣祭の人ごみの中、ペルは平凡王と再会し、愛を告白された。

 突然のことに驚き、身分が違うと身を引こうとするペルだったが、「あなた以上の人は世界のどこにもいない。あなたの聡明さ、王宮にまで忍び込む大胆さと好奇心、いや、そういうことではない。理屈じゃない。わたしはあなたを愛してしまった。あなたこそが、わたしの終生の伴侶だ」と平凡王に口説かれ、宮廷に入ることを決意する。

 ここで意外な障害が二人の前に現れる。平凡王の母であるアリア姫が「魔術師だから知識はあるのでしょう。しかし身分が違いすぎます、とうてい認められません」と強硬に反対するのである。

 それでも平凡王に説得され、アリア姫も、試しにと、侍女としてペルを受け入れることに渋々同意する。

「無理のある設定だな。いつ見ても」

 馬鹿にしたように薄ら笑いを浮かべてクロが言う。しかし、随分と楽しそうだ。

 侍女として勤め始めたペルを襲ういじめ、また、いじめ。どうやらここがこの芝居の山場のひとつらしく、観客が固唾を呑んでいるのがカイトにも感じられた。

 やがて、いつも笑顔を絶やさないペルに、ひとりふたりと友だちが増えていき、アリア姫もペルを認め始めたところに事件が起こる。

 ペルと仲の良かった侍女が、自室で殺されたのである。

「魔術の痕跡がある」

 捜査のために呼ばれた海神の神官が呟く。

「それもかなり高度な--」

 魔術師。それだけの理由で関与を疑われたペルは、無実の訴えも空しく牢屋に入れられる。しかしその間にさらに別の侍女が殺され、ペルは釈放される。

 殺された侍女の仇を討つことを誓ったペルだったが、事態は思わぬ方向へ進んでいく。夜中に宮廷をこっそり抜け出すなど、殺された侍女が怪しい行動をとっていたことが判明するのである。

 殺された侍女の部屋を調べたペルは遂に事件の真相を知る。

「あれ、どうやったのかな」

「あれって何?カイト」とイク。

「あの人、どこからあの手紙を取り出したの?」

 壁を調べていたペル(もちろん役者だが)が舞台の中央へと進み、くるりと背中を向けて空中から何かを取り出す仕草をすると、振り返った彼女の手に一通の封書が握られていたのである。

「もう一人いるだろ」とクロ。

 舞台上にはペルの他に、もう一人、仲間の侍女がいる。一番酷くペルを苛めていた侍女だが、今は親友と言ってもいい仲になっている。

「さっきペル様が別のところを調べている間にあっちの子が舞台袖から手紙を受け取って、こっちに見えないよう、背中を向けている間に渡したのさ」

「そうか。お爺さんの時と同じなんだね」

「お爺さん?誰のことだ?」

「古着屋のお爺さん。見聞官の証しをすり替えようとした時のこと。別のことに注意を向けておいて、見えているけど、見えないようにしているんだ」

「ああ。そうだな」

 危うく見聞官の証しをすり替えられるところだったことを思い出し、不機嫌にクロは頷いた。

「アリア姫様が危ない!」

 舞台上でペル(役の子)が叫ぶ。

 手紙に書かれていたのは、アリア姫の暗殺計画だった。

 キャナの姫であるアリア姫を殺し、クスルクスル王国とキャナを争わせようというのである。殺された侍女は暗殺団の一味だったものの、改心し、もし自分が殺されたら、友だちになったペルが発見できるようにと願って手紙を残したのだ。

 ペルは侍女として宮廷に勤める際に、アリア姫とひとつの約束をしていた。

 今後一切、魔術は使わない、魔術師であることを捨てるという約束を。

 もし魔術を使えば、宮廷からすぐに出て行く約束だ。

 魔術さえ使えばアリア姫は助けられる。だが、魔術を使えば、平凡王と別れなければならない。

 しかし、「さようなら」と顔を伏せて呟き、ペルは捨てていた魔術師のローブを再び纏った。

 自分の愛よりもアリア姫を助ける方を選んだのである。

『捨てたはずなのに、あのローブ、どこに仕舞っていたんだろう?』と不思議に思ったカイトの耳に、イクのすすり泣きの声が届いた。


 場面は海神の神殿に移る。

 跪いて海神に祈るアリア姫の背後に神官がそろりそろりと近づく。

 そこへ、「待ちなさい!」と魔術師のローブを纏ったペルが現れ、神官の正体を暴露する。神官の正体は、混乱をもたらすべく暗躍する”古都”の魔術師だった。開き直った”古都”の魔術師が神官服を脱ぎ捨てると、現れたのは無数の手が繋がって人型となった、おぞましい姿だった。

 その不気味さに、カイトも思わず息を呑んだ。

「あれ、昼間見ると間抜けなんだ。黒い服を着て、その上に作り物の手をたくさん縫い付けているだけだから」

 のんびりとした口調でクロが言う。

「でも夜に見ると、ちょっと不気味だよな」

 照明が消え、篝火だけが残され、ペルと“古都“の魔術師の身体がふわりと宙に浮いて、「すごい」とカイトは声を上げた。

 火球が舞台のあちらこちらで炸裂し、二人の戦いを見守るアリア姫や群臣たちを照らし出す。

「あれは天井から二人を吊ってるんだ」

 クロが説明する。

「火球を炸裂させているのは座付きの魔術師だ。けっこう優秀なヤツだな。炸裂音と火球がきっちり一致してる。

 簡単なようで難しいんだ、あれ」

「詳しいね、クロ」

「賞金稼ぎで食えるようになるまで、いろんな仕事をやったからな。芝居の裏方をやってたこともあって、『王妃の黒いローブ』も手伝ったことがあるぜ」

「ホントに?クロさん」

「ああ。後で詳しく話してやるよ、イク」

 “古都“の魔術師が繰り出す術をことごとく躱し、長い長い呪文をペルが唱えると、空中に幾本もの剣が現れ、“古都“の魔術師を貫いた。

 効果音が派手に鳴り響き、“古都“の魔術師が舞台袖へと消え、一方のペルは舞台へと降り立った。

 照明が再び灯され、舞台上に明るさが戻る。

 しかし、ペルに喜びはない。

 魔術を使えば宮廷を去る約束である。

 うなだれるペルにアリア姫が言う。「ペル。顔を上げなさい。魔術を捨てるように言ったのは、あなたの覚悟を試すため……」アリア姫が話すように歌い始める。

 歌いながら魔術師としてのペルの能力を神官たちに確認し、ペルのひたむきさを侍女たちに確かめ、夫である堅実王にペルの誠実さを訴える。

 そしてペルの前へと進み、

「……あなたの気高い心根、確と見させていただきました。今日からあなたは、私の娘ですよ」

「アリア姫様……」

 顔を上げ、声を震わせるペル。

 そこへ、慌てた様子で一人の衛兵が駆け込んでくる。

 トワ郡に出陣している王太子(つまり平凡王)の軍が、窮地に陥っているというのである。洲国ザワ州の悪辣公が、トワ郡の住民を人質にとって平凡王を追い詰めていると。

「アクラツコウ?」とカイト。

「人気の悪役。虚言王の芝居でも出て来る。味があるんだ、これが」とクロ。

 驚き、ざわめく群臣を圧して、

「わたしが参ります」と、ペルが決然と宣言する。「愛する人を必ず、わたしが救って見せます。ですからご安心ください。お義母さま」

 アリア姫も「お願いします。魔術師殿」と微笑みを返す。

 ここでカイトは「わあ」と声を上げた。ペルが呪文を唱えると、天井から、舞台と同じほどの幅がある巨大な飛竜の作り物が降りて来たのである。

「すごーい」

「大掛かりなセットがこの舞台の売りだからな。でもま、裏方のヤツラ、ズイブン気合が入ってるな。

 良くできてるぜ、確かに」

 見つめ合うペルとアリア姫。そしてペルは降りてきた飛竜に飛び乗って「行って参ります」と空へと舞い上がった。

 ペルを乗せた飛竜が天井に消えると、舞台はいつの間にか戦場に変わっていた。

 一方の側に平凡王。

 もう一方の側にいるのが悪辣公だろう。

 悪辣公を見て、カイトは『タガイィさんに似てるなぁ』と思った。悪辣公は髭に覆われた顔を、酒でも呑んだかのように真っ赤に染めていたのである。

 演者が長剣や槍を手に、踊る。踊る。長剣を頭の上に掲げ、槍をくるくると回す。

 しばらくすると、舞台奥、中央から長剣を手にしたペルが現れ、平凡王と頷き合い、一緒になって踊り始めた。

 なぜ踊るのか、カイトにはまったく意味不明である。

 後でイクに聞くと、「ペル様が腕を振っただけで、悪辣公の軍がまるで海神様の鉾に打たれたかのように二つに裂けて、ペル様がひと睨みするだけで、敵兵は風に煽られた稲のように倒れ伏した、って見えなかった?」

 と言われたが、カイトにはさっぱりだった。

 最後は悪辣公が逃げ去った戦場で、兵士たちが見守る中、ペルと平凡王が熱い口づけを交わして幕が下りた。



 観劇後、遅い夕食を取りながら、カイトは「どこまでがホントの話だったの?」とイクとクロに尋ねた。

「ペル様が魔術師だったのは間違いねぇよ。

 けど、お二人がどこで出会ったとか、宮廷の様子がどうだったっていうのは、大概作り話だろうよ」

「ホントは、ペル様とアリア姫様はとても仲が良かったんだって。三代様がこの人と結婚したいってペル様を王宮に連れて行った時も、堅実王様は渋ったけど、アリア姫様は最初からお二人の味方だったそうよ」

「アリア姫様も変わってるからな」

「そうなの?」

「あれ」

 と、クロが壁に目をやる。

 彼らがいるのはイクの宿ではない。芝居が終わるのが遅いため、野外劇場のある街の宿に泊まっているのである。

 宿には食堂があり、イクの宿と同じようにアリア姫と王太后の肖像画が壁に並んで飾られていた。

「ペル様の肖像はイクの宿のとは違うだろ」

「うん。でも、アリア姫様は同じだね」

「あれしかないからな。アリア姫様の肖像画は」

「どういうこと?」

「アリア姫様が、わたしは横顔が一番きれいに見えるので、横顔以外、描くことは禁じます、と命じたらしいぜ。

 歳を取られてからも若いままの姿で描くようにって命じられて、結局、アレしかねぇんだ」

「でも、確かにお美しいでしょ」

「そうだね」

「ペル様が初めて王宮に行った時も、アリア姫様が自分よりも大きな大臣たちを大声で怒鳴りつけてて、アリア姫様のあまりの口の悪さにペル様が驚いたって話もあるわ」

「さっきの芝居とは随分違うんだ」

「悪辣公の軍をペル様が退却させたっていうのは、ホントにあったいくさを基にしているらしいな。

 トワ郡がクスルクスルに組み込まれてすぐのころに、ザワ州の軍がトワ郡に攻め寄せたことがあるらしい。

 運悪く三代様の具合が良くなくて、ペル様が代わって戦場に立たれたんだそうだ。

 『王妃の黒いローブ』の最後に、ペル様がひと睨みするだけで敵兵が倒れる場面があっただろう?あんなことがホントにあったとも言われてるぜ。

 ちょっと信じられないけどな」

「戦場に出られたのはホントなんだ」

「ああ。アリア姫様と同じく、クスルクスル王国がここまで大きくなるのに、ぺル様が大きな力になったのは間違いねぇよ」

「元々クスルクスル王国の人なの?ペル様って」

「いや。“祖師たちの大地”にあった小さな国の生まれだって聞いた。国の名前は忘れたな。けどその国はもうねぇよ。場所を変えて別の国を興したからな。ペル様がクスルクスル王国にいらっしゃる間に」

「なんという国なの?」

「お前は知らないだろう。新大陸にある国だから。ショナって名の、ちょっと変わった国さ」

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