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28-3(秩序をもたらす者3(契約の外に在る者2))

 フランが立つ丘に駆け上がろうと騎兵隊が速度を上げた、まさにその前に黒い壁は現れた。ハララム療養所でイーズを肉片へと変えた防壁である。イーズと同じく、騎兵隊は大地に激突したのと同じだった。作用反作用の法則に従って騎兵の速度と質量に応じた運動エネルギーがそのまま彼らに跳ね返った。

 流石にイーズ程の速さはない。

 だから彼らが肉片になることはなかった。

 しかし、騎兵隊の一列目は、即死した。

 何も知らずに死んだ。

 一列目を駆ける彼らの目の前に、いや、馬の鼻先に、防壁は出現したのだ。何かが現れたと認識する間はなかった。

 彼らにとってはそこで世界が断ち切られた。

 生から死へと転落した。

 意識が途絶えた。

 二列目も、何が起こったか判らなかったという点では同じだ。止まることなどできなかった。速度を緩めることもできなかった。一列目に続いて防壁に突っ込み、首をへし折られ、馬に潰され、彼らも即死した。死ななくとも意識を失った。

 むしろその方が幸せだった。

 三列目も止まることはできず、激突した。しかし彼らの前にいた一列目と二列目の人馬がクッションになった。多くの者は死ぬこともなく、意識を失うこともなかった。

 不幸にも。

「な、何が……」

 呻き、顔を上げた彼らは、そそり立った黒い壁がほどけるのを見た。黒い壁が、赤い口を開いた無数の妖魔の姿へと変わり、嬉々として自分たちに躍りかかる姿を見た。

 絶望の悲鳴が、誇り高い騎兵の口から迸った。


 グン司令は呆然としている。

 悲鳴が続いている。騎兵隊が食い散らかされている。妖魔に。首を掴まれ、捩じられ、内臓を引きずり出されている。

「あたしを煩わせないでって、言ったでしょう?」

 グン司令が後ろを振り返る。女がいた。先程と同じ女が。馬の後ろに浮いていた。

「大人しく引いてくれていれば良かったのに」

 百神国で戦い続けてきた。グン司令のいくさ場での勘は、感覚は、研ぎ澄まされていた。それが彼の命を救った。

 グン司令は馬上から逃げた。自ら転げ落ちた。馬は悲鳴を上げなかった。悲鳴を上げることなく、影から立ち上がった妖魔に飲み込まれた。尻餅をついたグン司令の視界を覆って、妖魔が黒く太い柱の如くそそり立っている。妖魔の閉じた口から響いているのは、不快な咀嚼音だ。

「あら。たいしたものね」

 女が言う。

 グン司令の長剣が女を貫く。が、手応えがない。

「いいわね」

 女は笑った。

「殺すには、惜しいわ」

 グン司令の周囲の兵たちは、助けに入られないでいる。透明の障壁がある。円状にグン司令を取り囲んでいる。

 兵たちが大きく口を開けて叫んでいる。

 だが、兵たちの声はグン司令には聞こえなかった。

 兵たちが障壁を叩き割ろうとしている。

 しかし、その音も聞こえない。

「今からでも軍を引いて貰えないかしら」

「我らよりお前が退け!ならば殺さずにおいてやる!」

「あたしが引いたら、あなたたち、クスルクスル王国に行っちゃうでしょう?」

「昼寝の邪魔だと言ったな。ならばお前はここで寝てろ。飽きるまで、昼寝をしているがいい!」

「雷神が扉を開くわ」

 脈絡もなく、女が言う。

 唐突な言葉にグン司令が絶句する。

「何……?」

 迷いがグン司令の動きを止める。

「だから、大人しくおうちに帰りなさい」

 無駄と判っていた。だが、グン司令は長剣を振り上げ、女を袈裟懸けに斬り下ろした。

「それがどうした!」

 激しく叫ぶ。

「我らを見捨てた神になぞ、用はない!我らの神は、一ツ神様だ!決して我らを見捨てることのない神だ!

 我らに勝利をもたらしたのは雷神様ではない!一ツ神様だ!」

「そう。残念だわ」

 と、女が言う。

「それじゃあ、あなたの信仰心に免じて、あなたたちはみんな、楽に死なせてあげるわ」

 淡々と告げた女の声には慈悲の響きがあった。

 グン司令はぞっとした。

 ハッタリじゃない、と思った。

 この時になってようやく、彼は、自分が、相手にするべきではなかったモノを相手にしてしまったかと悟った。

 女の姿が風に溶ける。

 グン司令の周囲の障壁も消え、兵たちが司令官を守るべく殺到した時には、女の姿はどこにもなかった。

「長弓を用意しろ!」

 駆け寄った兵たちに、グン司令は命じた。恐怖心を振り払うべく叫んだ。

「あの女を射殺せ!あれを一人とは思うな!数万の軍と同じと思え!ボル!ボルはいるか!」

「おう」

 神槍を手に、野太い声で応えて姿を現したのは、龍翁の英雄、ボルである。

「お前が頼りだ。全軍で援護する。お前が、あの淫婦を殺せ」

 ボルが満足そうに笑う。

「おう。任せておけ」

 グン司令が部下に顔を向ける。

「そう言えば、あの腐れ魔術師はどこへ行った」

 腐れ魔術師。迷宮大都から軍に帯同している”古都”の魔術師のことだ。

「逃げました」

 と、部下は報告した。

「他の誰よりも先に」



 逃げたと言われた魔術師は、息を弾ませて走っていた。いま、この場所で一番安全なところへとひたすら走っていた。

「お、お会いできて、幸せでございますぅ!首席ぃ……!」

 激しく息を乱したまま大声で叫び、魔術師はフランの足元に身体を投げ出し、這いつくばった。

 フランが魔術師に視線を向ける。

「あら。どうしてこんなところにいるの?おかっぱくん」

 彼が走って来ていることは当然知っていただろう、素知らぬ顔で訊く。

「は、は。いささか、迷宮大都でしくじりまして」

 おかっぱくんが媚びるように笑う。もちろん、おかっぱくんがしくじったのは、ハララム療養所の一件だ。

「それはお気の毒ねぇ」

 他人事のようにフランが笑う。

「愚かなヤツラです」

 憎々し気におかっぱくんが、キャナ軍へと視線を向ける。フランに向けられない怒りを、本人もそうと意識することなく他へと向ける。

「わざわざ首席が見逃して下さろうとされていたのに。さっさと逃げればいいものを、みすみす助かる機会を捨てるとは。

 外の者どもは、本当に、愚かですな」

「そう言うおかっぱくんは、逃げなくてもいいのかしら?」

「首席がいらっしゃるここ以上に、安全な場所などありますまい」

 おかっぱくんのおべっかに、「そうでもないわよ」と、フランは応えた。「おじい様の英雄もいるし、あの子たち、けっこうガンバってるわ」

「……お、おじい様?」

「来たわよ」

「え」

 空を矢が覆っている。

 フランが呪を唱え、世界が白く、赤く染まる。矢が焼き尽くされる。だが、すぐに次の矢が続いている。

 フランが別の呪を唱え、風が舞った。暴風が壁となり、矢が吹き飛ばされる。

 詠唱を邪魔するために鐘や太鼓が休むことなく打ち鳴らされ、鏑矢も飛んでいたが、フランが気にする素振りはない。

「いいわ。行って」

 フランが命じる。

 キャナ軍の前で幾つもの影が盛り上がり、妖魔へと姿を変える。多い。千体はいる。それがキャナ軍に突っ込んで行く。だが、キャナの兵たちは隊列を組み、盾を構え、怯むことなく妖魔の群れを迎え撃った。

 キャナ軍に、ひときわ目立つ巨漢がいる。巨漢の手にした槍に貫かれた妖魔が、悲鳴を上げて飛散する。逃げる。

 ボルである。

 ボルは、大声で笑いながら、次々と妖魔をなぎ倒している。

 おかっぱくんの胸に不安が宿る。

 確かにこれは、ここから逃げた方がいいだろうか。と、思う。そう思ったことをフランに知られそうな気がして、恐る恐るフランを見ると、フランはキャナ軍に向かって小さく手を振っていた。



 グン司令は、ボルを送り出した後、別の男を呼んだ。犬の獣人だ。

「ボルがあの女の注意を正面に引きつける。側面から回り込んであの女を討て」

 犬の獣人はむっつりと不機嫌そうに「は」と短く応じて彼の率いる獣人部隊へと戻った。グン司令は続けて、ラベル魔術師を呼んだ。

「アレを、魔術で殺せるだろうか」

 と、訊く。

「デアの4大魔導士、魔術に関しての知識は到底わたしの及ぶところではないが、やってみましょう。

 あそこにいるのは一人。特定しやすい。術を仕掛ける条件は悪くありません」

「頼みます」

「はい」

 獣人部隊がキャナ軍から離れ、周囲の森の中へと紛れていく。

 ラベル魔術師は部下の魔術師と共に、まずは呪を唱える環境を作るため、遮音壁を構築した。ラベル魔術師の周囲から、いくさ場の喧騒が消える。

「なかなかいい腕ね」

 ぎょっとラベル魔術師は声を振り返った。誰もいない。視線を回す。丘の上にいるシャッカタカーに。

 シャッカタカーが、彼に向かって手を振っていた。

「何をする気かしら?」

 姿のない女の、柔らかな声だけが囁く。

「お前を殺す。それだけだ」

 内心の焦りを抑えて低くラベル魔術師が応える。

「正直に言うとね、あたし、あなたたちを殺したくないの」

「散々人を殺してきたお前が、何故だ?」

「ターシャが困るわ」

「ターシャ?クスルクスル王国に亡命しているターシャ・オン・ロード伯爵のことか」

「そうよ」

「ロード伯爵が、何に困ると言う」

「このいくさが終わった後、キャナを守るためには、国力があまり落ちるのは交渉のカードを減らすことになるわ。

 そう思わない?」

 ラベル魔術師が鼻で笑う。

「我がキャナを引っ掻き回してきた”古都”の首席が、今更、何を言う」

「あなた、雷神の信徒でしょう?」

「--わたしのことを、知っているのか」

「あたしが知らないことはひとつもないのよ」

「……」

「あの子、」グン司令のことだ。「あなたのことを信頼しているみたいね。あなたの言葉ならあの子も聞くかも知れないわ」

「何のことだ」

「雷神が扉を開くわ」

「……なに?」

「だから、軍を引いて貰えないかしら」

「お前」

 ラベル魔術師が沈黙する。沸き立った感情を押し殺す。

「何も知らないのだな」

「どういうことかしら?」

「我らは、平和を取り戻すために戦っている。雷神様が戻られる、素晴らしいことだ。雷神様にかつてのキャナ王国を守護して頂けるのだからな。

 百神国も洲国も、クスルクスル王国も我らが潰す。

 そうすれば、私の家族のように、罪のない者が殺されることはなくなる」

「愚かな子ね」

「何」

「でも、嫌いじゃないわ。あなたのように信念のある人。だから、楽に殺してあげるわ」

 声が遠ざかる。気配が消える。

 ラベル魔術師だけが、怒りと共に取り残される。深く息を、怒りを胸の奥に吸い込む。シャッカタカーに視線を止める。

「やれるものなら、やってみるがいい」

 吐き捨てるように呟き、ラベル魔術師は、シャッカタカーを殺すための術を静かに唱え始めた。



「何を、なさっているので?」

 手を振るフランに、おかっぱくんが訊く。

「たいしたことじゃないわ」

 フランが宙に視線を向ける。しばらく沈黙する。「そうね。いつまでも、--様に貸しを作ったままにしておくのも、良くないわね」

 小さく呟く。

「は?」

「あたし、急いでるのよ」

 おかっぱくんの問いに答えることなく、フランが軽い口調で言う。

「カイトやマルタたちを先に行かせているし、あまり長くここにいられないの。だから早く終わらせたいの」

「は、はぁ」

「おかっぱくん。太陽神様って、ご存じ?」

「も、もちろん、存じております。い、いや、知っているだけですが、もちろん」

「平原公主も知ってるわよね?」

「は、はい」

「平原は、太陽神様をひどく嫌ってるわ。いいえ。恨んでる、って言った方が良いかしら。それも知ってる?」

「い、いいえ」

 フランの話の先が判らず、ごくりっとおかっぱくんが喉を鳴らす。

 いい話ではない。

 理屈ではなく、そう思う。

「この世界ね、今よりずっと寒い時期があったのよ。あたしも直接は知らないけれど、ずっと前、まだ、人が人ならざる頃のことよ。

 その頃にね、お母さまが『寒い』と言われると、平原がすぐに駆けて行って、お母さまを自慢の毛皮で包んで差し上げていたの。『どうぞ、母上。平原が暖かくして差し上げます』って。

 それが平原の一番の自慢でね、数多いる兄弟姉妹の中で、他の誰よりも自分が一番お母さまのお役に立っているって平原は信じていたの。

 ところが、ある時、太陽神様がお生まれになって、お母さまが『寒い』と言われると、太陽神様が世界そのものを暖かく照らされるようになっちゃったの。

 それからよ。

 平原が太陽神様を恨むようになったのは」

 熱い。

 おかっぱくんが汗を滴らせる。

 身体の左側。何故かそちら側が、鉄ごてでも当てられたかのように熱い。

 フランが話を続ける。

「平原が雨を司っているのもね、太陽神様への嫌がらせの為なの。

 でもそれって、平原の逆恨みよね。

 いえ、八つ当たりって言った方がいいかしら。

 だって、太陽神様を産んだのは、お母さまなのだから。太陽神様はお母さまに望まれて生まれてこられたのだから。

 太陽神様は大らかな方だから、平原に恨まれるのを気にされていないか、と言うとそうでもなくてね。あたしに、平原の誤解を解いて欲しいってお頼みになられたの。平原に話をしてくれるだけでもいいって。

 そうすれば、平原に話す度に、あたしの願いを何でもひとつ聞くからって。

 狂泉に誘われて、狂泉の森人と平原王のいくさを見に行った時に平原に会ったから、太陽神様のことを話したわ。

 貴女の気持ちも判るけれど、もう何万年も、何十万年も前のことなのだから、水に流して差し上げたらって。

 だから、あたし、太陽神様にひとつ、どんなことでもお願いを聞いて貰えるのよ」

 ごくりっとおかっぱくんが喉を鳴らす。

 汗が噴き出し、滴り落ちる。

 フランの影が、おかっぱくんの影が、強烈な光に照らされて長く、濃く伸びる。

「そ、そんな……。そんなことが……。神々が直接、人に関わるなど、……竜王様との契約が……」

「あら。太陽神様とあたしが約束したのは、竜王より先よ」

 意外そうにフランが言う。

 おかっぱくんがフランから視線を回す。恐る恐るフランの背後、自分の左側へ。おかっぱくんの視線が上がる。

 そこに神がいた。

 筋骨たくましい裸の上半身を晒し、両手を腰に当て、大らかな笑みを口元に湛えた男性神が。熱く燃えている。文字通り。

 太陽神である。

 白い肌にひと粒の汗も浮かべることなく、フランがおかっぱくんに問う。

 心底、不思議そうに。

「それに、どうしてあたしが、竜王と、あなたたち人との契約に縛られないといけないのかしら?

 そうでしょう、おかっぱくん?」

 おかっぱくんは悲鳴を上げた。

 転ぶように逃げ出す。

 逃げるおかっぱくんを見守るフランの姿が薄れる。消える。そこにいたフランもまた、幻だった。

 本物のフランは、おかっぱくんからも遠く離れて、太陽神の背中を小さく見ていた。彼女がいるところからは、妖魔とキャナ軍の争う声も悲鳴も聞こえない。

「そう言えば、ハララム療養所であたしに会ったこと、誰にも言わなかったわね、おかっぱくん」

 おかっぱくんが「あっ」と声を上げる。彼の足元から大地が消え、おかっぱくんの身体が、すとんと彼自身の影へと落ちる。

 おかっぱくんを飲み込んだ影が、風よりも速く逃げ去って行く。

「ご褒美よ」

 と、千の妖魔の女王は、微笑んだ。


 キャナ軍の兵士たちも太陽神の姿を見た。

 妖魔が突然、姿を消した。

 逃げた。

 何事かと辺りを見回し、キャナの兵士たちは太陽神に気づいた。

 己の似姿を信徒が商品にすることを禁じていない海神に似て、太陽神もまた、己の似姿を形とすることを好んだ。

 だからキャナの兵の多くは、そそり立った巨人を、太陽神だと認識した。

 しかし、彼らの多くは、それを幻と見た。

 シャッカタカーの魔術だと思った。

 竜王と神々の契約がある。

 神が直接、人を害することなどないと信じていた。

 それも、闇の神ならまだしも、光の神が、”古都”の首席に、デアの4大魔導士のひとりに味方することなどある筈がないと信じていた。

 龍翁の英雄であるボルもだ。

「何のマネだ、淫売!幻なぞ、恐れるものか!しかも太陽神様の御姿を真似るなど、なんたる不敬か!」

 龍翁に託された神槍を高く掲げる。

「龍翁様、我に力を!」

 雄叫びを上げ、太陽神に向かって走り出す。

 太陽神の身体が輝く。

 熱量が増す。

 白光がボルの視界をくらませる。

 太陽神はたいしたことはしていない。ただ、歩いただけである。ほんの数歩。キャナ軍の上を。

 ただそれだけで、数万のキャナ軍は一人残さず消えた。

 燃えたのではない。溶けたのでもない。気化したのとも違う。余りに大きな熱量を与えられ、分子間の結合力が断ち切られた。原子核と電子の電磁気力もだ。つまり、キャナの兵たちは原子核と電子が分離して飛び散り、原子レベルで消失したのである。

 フランがグン司令に告げた通り、彼らが苦しむことはなかった。

 死んだと気づくことすらなかった。

 キャナ軍を離れ、森の中を密かに進んでいた獣人部隊も、キャナ軍の背後で呪を唱え続けていたラベル魔術師も消えた。

 後には、どろどろに溶けた大地と、ボルが手にしていた神槍だけが残り、熱せられて膨張した大気が熱風となって周囲に押し寄せていった。



 フランも太陽神が白光するのを見た。

「あら」

 太陽神がガンバりすぎている。逃げなければ自分も死ぬ、と悟った。熱風に吹き飛ばされ、焼け死ぬ、と悟った。

 白光した太陽神から視線を逸らし、己の影の中に逃げ込もうとしたフランを、朝霧のように涼しくさわやかな空気が背後から包み込んだ。

 フランが顔を上げる。

「あら。お久しぶりです、おじい様」

 と、フランは笑った。

 禿頭の老人がフランの背後にいた。

 身長は3mほどもある。足元まで伸びた髭も、長い眉もすべて白く、ゆったりとした白いローブを纏っている。

 河の神、龍翁である。

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