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26-1(キャナとのいくさ1(このいくさを止めるために1))

 カイトは驚いて声を振り返り、立ち竦んだ。視界が歪む。心が緩み、涙が落ちる。涙を指で拭う。再び落ちてきた涙を今度は乱暴に拭い、顔を上げる。

「わたし、いつも同じことを訊いてる気がする」

 揺れる声で言う。

「何をだ」

 カイトに声をかけた男が問う。

 男は、これまでカイトが会った誰よりも大きく見えた。いつもよりも尚、頼もしく見えた。

 狂泉の森人らしく肩には弓がある。だが、腰には山刀ではなく長剣がぶら下げられ、分厚い手には長い槍が握られている。

「どうして、ライがここにいるの?」

 無精髭が伸びた口元に、いつも通りの傲岸な笑みを、男が、ライが浮かべる。

「オレが何て呼ばれてるか、知ってるだろ」

「……暴君」

「おお、そうだ。優しいオレには似合わねぇと思うけどな、暴君っていうのは、王ってことだ。

 で、このオレ以上に似合わねぇと思うけどよ、どこかの誰かさんは、狂泉様の森の姫って呼ばれてるっていうじゃねえか。

 姫が泣いてたら助けに来るのが、王ってもんだろ?」

 カイトが笑い、涙を拭い、

「わたし、泣いてなんかいないわ」

 と、言う。

「そうかよ」

 ライが笑う。

「ライには、オレの護衛として来てもらったんだよ」

「トロワさん」

 ライの後ろに立ったトロワの姿を認めて、カイトは思わず声を上げた。ライがいたことより驚いた。

「でも、お酒造りは--」

「ハノに任せてきたから大丈夫。心配ないさ」

 トロワの声には信頼と確信がある。

「新しい神が現れるからトワ郡に来て欲しいって、師匠から手紙が届いてね」

「フランから?」

「ああ」

「だったら、フランも来てるの?」

「多分。姿は見てないが。ま、ああいう人だからな」

 カイトが短く考える。

「--うん」

「それで、何があったんだ?」

 と、辺りを見回しながらライは尋ねた。



 カイトの話を聞き終えると、ライは、「つまり、死んだとは限らねぇってことだな」と、言った。

 クロやフウ、ミユのことだ。

「そうかな」

 希望に縋るのを恐れるように、囁き声でカイトが訊く。

「だってそうだろ」

 ライが右手を上げる。ひとつずつ指を折っていく。

「まず死体が見つかってねぇ。

 次に足跡が消えている。

 最後に、わざわざトロワを呼び出したトロワの性悪な師匠が、姿を見せてない」

 トロワが咳払いする。

「ライ。気をつけた方がいい。師匠はどこで話を聞いているか判らない人だからな」

「何を怖がってるんだよ、トロワ」

 ライは呆れている。

「ライ、お前、昔の自分を思い出して、夜中に叫びたくなることないか?」

「夜中に叫びたくなる?」

 ライが首を捻る。

「ないな」

 トロワが嘆息する。

「やっぱりスゴイよ、お前は」

「で、それがどうした?」

「師匠は何も忘れないんだよ。どんな小さなことでも。昔の、それこそ思い出す度に大声で叫んで、人生をやり直したいと頭を抱えて七転八倒するような若い頃の失敗を、師匠は絶対に忘れないんだ。

 で、それをネタにオレをからかうんだよ」

「ふむ」

 ライが考える。

「やっぱり性悪ってことじゃねぇか」

 トロワがため息を落とす。

「とにかくだ。生きているか死んでいるか、今は判らねぇ。だからそれは、狂泉様にお預けしときな。カイト」

 カイトが息を大きく吸う。

「うん」

 と頷く。

「うん」

 浅く、けれども力強く、もう一度頷く。

「判った」

「よし」

 ライが笑う。

「それじゃあ、カイト。お前、カネ、持ってるか?」

「え?」

 悪ガキのような笑みをライが浮かべる。

「オレは傭兵だからな。カネでしか動かねぇんだ。けど、カネさえ出してくれりゃあ、何でもしてやるよ。

 オレを雇うか?カイト」

『お前には納得できねぇだろうが、報酬ってのは信頼関係さ』

 ふとクロの言葉を思い出し、カイトは立ち竦んだ。マウロを助け出すために、海都クスルへと旅立つ前の日のことだ。

「どうかしたか?」

 ライに問われて、カイトは我に返った。「ううん」と、首を振る。クロはいつでも正しかった。と、思う。

「おカネはずっとクロに預けてたから、わたしは……、あ」

 カイトが取り出したのは、小さな袋である。

「これで足りる?」

「何だ、それ」

「革ノ月から戻って、酔林国に行くときに、何かの時に使うようにって、父さまが持たせてくれたの。

 これだけはクロにも預けられなくて、ずっと持ってた」

 ライが袋を受け取る。重さを量る。中を確かめることなく懐に仕舞い、槍を前において膝をつく。

「十分だぜ、カイト。今からオレはお前の剣であり、盾だ。たとえ万の敵がお前の前に立ち塞がろうとも、必ずオレが道を切り開いてやる。

 オレの命はお前に預ける。お前の好きなように使ってくれ」

「うん」

 カイトが頷く。

「ありがとう。ライ」



 跡形もなく崩された旧ロア城の瓦礫を、軽々とゴーレムが持ち上げる。一体ではない。何体もいる。トロワが呼び出したゴーレムたちである。

 瓦礫に埋もれていた遺体を、ライや兵士が担ぎ出す。

 カイトも働いていた。

 みんなと一緒に。

 しかし、途中で動けなくなった。カン将軍の首を膝に置いたまま。座り込み、身体を震わせ、顔を上げることもできず動けなくなった。

 死んでた。あのままだったら。

 マウロ宅の風呂に身体を深く沈め、カイトは思った。

 もし、イタカさんが来てくれなかったら、わたしは死んでいた。

 叩き込んだ山刀は弾き返された。矢も躱された。オセロの動きは、ハララム療養所で戦ったイーズよりは遅かった。しかし、オセロはイーズより勘が良かった。それに、次第に速くなっていた。戦っている間に。あのまま戦い続けていたら、きっとわたしは殺されていた。と思う。

 何より、オセロを倒す方法が判らない。思いつかない。

 オセロの治癒力は、肉片となっても復元したイーズに比べれば劣っているかも知れない。しかし、フランが教えてくれた通りだとしたら、限界がない。

 たとえ壊し続けても復元し続ける。

『英雄にしても戦巫女にしても、首を切れば死ぬわ』

 とも、フランは教えてくれた。

 だけど、どうやって?

 と、考え、

「わたし、ゾマ市に行きたい」

 と、カイトは前置きもなく言った。

 カイトが扉を開けた室内には、屋敷の主であるマウロと、ライとトロワ。それにレナンがいる。

「なんでだ」

 ライが問う。

「会いたい人がいる」

「だったらちょうどいいな」

 ライが頷き、彼の言葉をトロワが引き継いだ。

「まずはゾマ市に行くかって、今、話していたところだったんだよ」

「え?」

 ライが酒の入った湯飲みを口に運ぶ。

「キャナはオム市に向かって引いた。戻ってくる気配はない。

 ま、目的は果たしたってコトだろうな。

 ヤツラを追ってもいいが、その前にクスルクスル王国やトワ王国の動きも探っておきたいからな。

 ゾマ市は中立だ。情報を得るには都合がいい。

 お前の知り合いがいるなら、尚更だ」

「うん」

「それじゃあ、明朝、出るか。カイト、準備は大丈夫だよな」

「いつでも行けるわ」

「レナンはどうだ」

「オレも問題はない。今からでも行ける」

「レナンさんも行くの?」

 レナンが頷く。

「カン将軍から託されたものを届けにな」



 マウロ宅を発つ際に、カイトは一人の兵士に声をかけられた。怪我を押してカイトを見送りに出て来て、「後からオレたちも必ず行く」と男は言った。

 ニスである。

「キャナのXXXXXXXどもを、ぶっ殺しに。だから、オレらの分はちゃんと残しといてくれよ、カイト」

 カイトはニスの顔を覚えていない。しかし、カイトは、「うん」と頷いた。「待ってる」と答えた。

 クロと二人で越えた峠を逆方向に越え、数日後にはゾマ市の城壁を見ていた。

「公女様の祠に寄って行こう」

 と、カイトが言い、

「もちろんだ」とライが応じた。

「レナン、オレたちはこっちから行くが、お前はどうする?」

 西の公女の森に東側から入るのだと説明されて、レナンは「オレは参道から行くよ」と軽く眉を上げて答えた。

 西の公女の祠に4人で頭を下げて旧ロア城で死んだ人々の安寧を祈り、帰りの森の中で「ちょっと待って」と、カイトは足を止めた。

「ヌーヌーに伝えて!」

 低く疎らな木々の奥に向かって叫ぶ。

「キャナで、リアちゃん、母さまに会えたって!」

 返事はない。

 姿も見えない。

 けれど何かが木々の向こうで頷いた。と、カイトだけでなく、ライもトロワも感じた。



「あ」

 ヌーヌーが声を上げる。視線を宙に彷徨わせる。バンドが操る馬車の中である。

「何かあったのかね。ヌーヌー」

 ヌーヌーと並んで座ったターシャが尋ねる。

「カイトが……」

「カイト殿が、何だね?」

 ヌーヌーがターシャに顔を向ける。

「リアが母さまに会えたって、わたしに伝えてって」

 自分に向けられたターシャの琥珀色の瞳が、瞬時、何も映さなくなる。

 青空が拡がる。

 幾ら手を伸ばしても届かない夏の濃い青空を、思索に沈んだターシャを見る度にヌーヌーは思う。

 ターシャの瞳には彼女自身も映っていない。置き去りにされている。けれど、不安はない。それどころか何故か誇らしく感じた。彼女には計り知れない叡智が目の前にあり、世界にはターシャと自分しかいないと思い、深い安堵感に包まれるのをヌーヌーは感じた。

『私が何者か、知っているだろう?ヌーヌー』

 いつか、笑いながらターシャに言われた。

『狂気と混乱を司る我が主の信徒である私は、どちらかと言えば、晴天でも雨天でもなく、雨が降りそうで降らない曇天だよ』

 と。

 いずれにしろ、

『お幸せなのですね、ヌーヌー様』

 笑ってマリに言われた通り、思索に沈んだターシャを見ることは、ヌーヌーにとって、他に例えようがないほど幸せなことだった。

 ターシャがヌーヌーに視線を向ける。こちら側に戻って来る。

「ゾマ市の森かな」

 ターシャの静かな声に、深くヌーヌーが頷く。

「はい」

「フウ殿と見聞官殿が一緒かどうか、判るかね?」

「いえ」

 ヌーヌーの焦点がどこか遠くに向けられる。

「フウとクロは、いません」

「別の誰かと一緒ということかい?」

「はい。二人。

 大柄な森人と、--でも、槍を持ち、長剣を下げています。もうひとりは、弓も持っていません。でも、やっぱり森人と思えます」

「槍を持った森人と弓を持たない森人だね。だとしたら、ライ殿とトロワ殿かな」

 なぜお判りになるのだろう。

 たったこれだけで。

 と、ヌーヌーは不思議に思う。

「ありがとう、ヌーヌー。良く判ったよ」

 ターシャが微笑む。

「伯爵様」

 御者台からバンドが大声を響かせる。

「ちょうどいいところに来たようですよ」

 ターシャが馬車の小窓から外を伺う。「ああ、本当だね」馬車の走る先に、100人を越える人々が、戸惑った様子で集まっている。彼らの背後には、人の背丈よりもはるかに高い塀が厳めしく続いている。

 馬車が速度を落とす。

 探し人の姿を認めて、「いらっしゃったよ、バンド殿」と言ったターシャの声に、バンドが馬車を止める。

「ロナ殿」

 馬車の扉を開けて、ひとりの男にターシャが声をかける。驚いたように振り返ったのは、前のトワ郡の郡主であるロナである。

「あなたは」

 ロナはターシャに会ったことはない。

 ターシャがクスルクスル王国に亡命した頃、ロナはトワ郡にいて、海都クスルに戻ってからは街に出る間もなく捕らわれ人となった。

 だが、馬車の奥に座ったヌーヌーの死の聖女の印を認めて、ロナはターシャの正体を知った。

「何があったのです。何故、わたしたちは釈放されたのですか」

 走り出した馬車の中でロナが訊く。

「あまり時間がありませんので、まずはこちらの用件を申しましょう。

 ロナ殿でなければできない仕事があります。船と案内人は用意してありますので、お手数ですが、ロールーズの街まで行ってはいただけないでしょうか」

 と、ターシャは紫色の細い唇に、涼やかな笑みを浮かべた。



「噂には聞いていたが、ホント、でかいな」

 なかなか近づかないゾマ市の城壁に呆れて、ライが言う。

「うん」

「どうして造ったんだよ、こんなモン、トロワ」

「詳しいことはオレも知らないな。ただ、これでもまだ、小さい方だとは、師匠は言ってたよ」

「小さいって、これがか」

「これの5倍の大きさがある城壁もあったそうだ」

「なんだそりゃ」

「やっぱり、デアが造ったの?」

 エルの話を思い出してカイトが訊く。

「師匠はデアよりも前に造られたって言ってたよ。でも、造りはしたものの役には立たなかったそうだ」

「どういうこと?」

「当初の計画よりも歪みが大き過ぎたらしい」

「でも、この城壁、不必要なほど正確な円形になってるって聞いたわ」

「今の技術的にはそうなんだろうね。でも、全然ダメだったそうだよ。何をしようとしたのかは判らないけどね」

「ふーん」

「矢を射かけてくる気はなさそうだな」

 ぼそりとライが言う。

「うん」

 カイトも頷く。

 ゾマ市の西門の前に、10人には足りない兵士の姿がある。

 最初は城壁の上にいて、こちらを指さしていた。だが、今は城壁の上には誰もいない。カイトたちを出迎えるかのように、西門の外に出て来ている。

「知ってるヤツはいるか?」

「いないわ」

 ライの問いにカイトが答える。

「念のために聞いておくが」

「なに?」

「いくさを終わらせるためには、キャナを勝たせるって手もある」

「え?」

「お前の話からすると、クスルクスル王国はもう、キャナの手に落ちてるって言ってもいい。

 ゾマ市は中立を保つことで民を守ろうとしている。

 トワ王国も、クスルクスル王国とキャナのどっちにつくか、それとも中立を守るのか、多分、まだ決めてねぇ。

 お前はどうしたい?キャナか、クスルクスル王国か、トワ王国か。どこに味方する?」

「キャナだけは、違うわ」

「ん?」

「あの人たちのやっていることは、狂泉様の法に反しているわ」

 ライが頷く。

「だったら、クスルクスル王国かトワ王国のどっちかってことだな」

「うん」

「ここで待っててくれ」

 西門が近づき、レナンが前へ出る。

「まず、オレが話してみよう」

「頼む」

 カイトたちが足を止め、レナンだけが先へと進む。レナンを見つめていた兵士のひとりが、ちらりと視線を上げる。

 カイトを見る。

「お前は知らないようだが、あっちはお前を知ってるようだぜ」

「うん」

 カイトを見る兵士の目には、様々な感情があった。微かな親しみがあり、親しみを上回る遠慮があった。だが、親しみよりも遠慮よりも、何より強く兵士が浮かべていたのは、カイトに対する畏怖であった。

「止まれ」

 兵士がレナンに声をかける。

「何者だ。身分証は持っているか?」

「クスルクスル王国の身分証は捨てた。わたしはレナン。トワ王国では王の親衛隊長を務めていた」

「トワ王国の親衛隊長」

 兵士たちにざわめきが起こる。

「では、やはり、ファロから来られたのか」

「そうだ」

「後ろの三人は、何者だ」

「酔林国からの客人だ。トロワ殿とライ殿だ。カイトのことは、既に知っているとお見受けするが?」

「知っている」

 兵士が答える。短い答えの裏に、口にはできない何かがある。とレナンは感じた。ただ、敵意は感じられない。

 レナンは当然知らないし、カイトも覚えてはいない。

 だが、兵士はカイトのことを知っていた。

 兵士は、テート互助会とジャング互助会を潰した時に、ジャング互助会の屋敷に、アイブと共に踏み込んだ三人の仲間のうちの一人だった。

「何の為にゾマ市に来た」

 硬い表情のまま、兵士が訊く。

「我々はファロでキャナの軍と戦った。

 残念ながら破れたが。

 クスルクスル王国とトワ王国には、キャナとのいくさの前に、キャナの来襲を知らせる伝令を出した。

 だが、クスルクスル王国とトワ王国がどう動いたかは判らない。

 カイトの知り合いがゾマ市にいる筈だ。現在の状況がどうなっているのか、ゾマ市なら判るかと思って来た」

「状況を知りたいのは、我々も同じだ。ファロで、新しい神が顕現したという噂を聞いた。信徒がすべて殺され、荒れ狂う神が現れたと。その神を、」再び兵士がちらりとカイトを見る。「森人の娘が、鎮めたという噂を」

 カイトを見る兵士たちの目に畏怖があるのは、そういう訳か。と、レナンが納得する。

「少し話をお聞かせ頂きたい。

 公女様の森に入られるあなた方に気づいて、すぐに知らせを走らせたので、直に責任者が参ります」

 兵士が口調を改める。

「責任者とは」

「郡支局長代理のアイブ様です」

「アイブさん……」

 カイトが呟く。

「ソイツのことは、カイトも知ってるようだぜ!」

 ライが大声を張り上げる。

 後ろを振り返ることなく、レナンが、

「では、アイブ殿が来られるまで、待たせて頂くことにしましょう」

 と言ったところで、兵士が視線を転じた。

「いや、来られたようです」

 遠くから馬蹄の音が響いてきた。細身の男が単騎、駆けて来て、飛び降りる。

 馬から飛び降りた男--アイブが背筋を伸ばし、固く口を結んで大股で歩いて来る。

「真面目そうなヤツだな」

 ライが感想を述べる。

「ゾマ市郡支局長代理を務めているアイブです」

 レナンと握手を交わし、アイブが視線をライやカイトへ向ける。誰かを探している、と悟って、「クロは」と、カイトは言った。「いないわ」

「死んだのか?」

「行方知れずだ。死んだとは限らねぇ」

「そうか」

 あまり表情を変えなかったが、アイブが安堵したとカイトにも判った。

「馬車を!」

 アイブが兵士に命じる。

「話は馬車の中で伺いたいが、宜しいか?」

「急いでおられるようだが、どこへ?」

 トロワの問いに、

「王が亡くなられた」

 と、アイブは答えた。

「王が」

「それ、エイマイ王って人のこと?」

 アイブが頷く。

「王が亡くなられて、妃であるカリナ姫が王位を継がれた。5日前のことだ。

 ペル様が軍を率いて来られる。

 トワ郡に侵攻して来たキャナを討つために」

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