17-16(海神の立つ街16(死人の襲撃2))
庭へと出たカイトたちを襲ったのは、それまでとは異なり、動きが速い、長剣を手にした三体の死人である。
術者が直接操っている、とクロは察した。
二体がクロに襲いかかり、残りの一体がカイトに切りつけ、長剣を横に払った。
クロがカイトから引き離される。
リアを抱いたフウはカイトの背後にいる。
クロを襲った死人のうちの一体と、カイトを襲った死人が、クロとカイトの間に立って背中を合わせる。
「カイトッ!」
クロが叫ぶ。
背中を合わせた死人を依り代として、術が発動する。高さが5mはあろうかという土の壁が、芝生を突き破って突如としてそそり立った。
壁に視界を遮られる直前、クロは犬の群れを見た。
死んだ犬の群れだ。
その犬の群れが闇の中から現れ、カイトを押し包もうとしていた。
標的はカイトか--!
とクロは直感した。
クロは、襲って来た死人の長剣を右手の剣で受け止め、左手の剣を喉を突き刺した。剣を引き抜くと同時に足を刈り、思いっきり死人の腹を蹴った。仰向けに倒れた死人の首に両方の剣を突き立て、押し開くように首を落とす。
すぐに振り返って、目の前にそそり立った壁を見る。
ゾクリッと悪寒が走った。
身体を捻りながら飛び離れる。クロの頭上を長剣が走り過ぎていく。振り返ると死人が2体。動きが鈍い。
「あー、くそっ!」
死人がクロを挟み込むように左右に分かれる。
背後には土壁がある。
くんっ、とクロの鼻が動く。焦げ臭いにおいがする。死人から。何かが融けるような臭いが。
「ウソだろっ!」
クロは前へと、迫って来る死人の間へと身体を投げ出した。振り下ろされたふたつの長剣を躱し、さっき自分が首を落とした死人へと走る。
死人が破裂する。
金属片が撒き散らされる。
「あー」
盾にした死人の身体を放り出し、「コイツも爆発しねぇだろうな」とクロはぼやいた。
改めて土壁に顔を向ける。
土壁の前には破裂した死人の足だけが残り、金属片や肉片が土壁にめり込んで燃えている。
土壁の一方は屋敷の壁にまでめり込み、反対側は屋敷を囲む鉄柵で遮られている。
クロは剣を鞘に納めると、鉄柵と接した土壁に向かって走った。壁を足掛かりとして蹴り、鉄柵の上部を掴むと、腕の力だけで自分の身体を引き上げ、今度は鉄柵を蹴って壁の上まで飛んだ。
ターシャの屋敷の屋根に一羽のフクロウがいる。
術者である老婆は、そのフクロウを通して襲撃の様子を見ていた。編み物の手は止めない。編み物が術を媒介しているのである。
「残念ね。お犬ちゃん」
壁から身を乗り出したクロを、死んだ犬たちのうちの一頭が襲った。
犬の数は12匹。
魔術師らしい数だな、とフウは思った。何か意味があった訳ではない。ふと、心に浮かんだのである。2でも3でも4でも6でも割り切れる数。魔術師が好む数だ。
16匹じゃなくて良かった。と、思ったのにも理由は特にない。
2の4乗。
ただそれだけのことで、それもまた、魔術師が好む数だ。
フウは素早く弓に矢を番え、弦を引いた。
「え」
矢を放とうとして、手を止める。
犬たちの額に矢が突き刺さっている。すでに。12匹、すべての犬に。ガクガクと犬たちが痙攣し、身体を震わせている。
カイトの技量が自分よりも遥かに上だとフウは理解している。しかし、まだ自分の認識が甘かったことをフウは知った。
まさか自分が一矢を放つ前に、12匹すべての額を射抜いてしまうとは。
「カイト」
犬たちの様子を見て、フウがカイトに声をかける。
「うん」
カイトも判っている。
額を射抜かれても犬たちは倒れない。死なない。死んでいるのだから当然だが。
しかし、動きを止めている。
おそらく額を、脳を射抜けば動きを止められる。
それも判った。
『頭を潰せばいいんだ。基本はな』とクロが言い、『首を落とすのが確実だよ』とラダイは言った。
だったら、と、フウは呪を唱えた。
フウの呼びかけに応じて火の精霊が現れる。もちろん姿は見えない。しかし、来てくれている、とフウは感じた。
呼んだかい?
呼んだかい?
ボクたちを呼んだかい?
と、精霊たちの楽し気な声が聞こえる気さえした。
「いやいやそんなはずないよ」
イタカは笑って否定した。
「獣人は判るらしいが、人が精霊の気配を感じるなんて、聞いたことがない」
本当です、イタカ先生。
懸命に訴えるフウの様子に、イタカの笑いに疑念が混じった。
「本当に判るのか?フウ」
はい、と頷いたフウに、「まさか」と呟き、しばらく考えてから、「そうか」とイタカはフウに笑顔を向けた。
「魔術を覚えるのにはとても役に立つよ、精霊の気配が判るのは。魔術の第一歩はまずは精霊を呼び出せるかどうかなんだが、精霊の気配が判るのなら自分が失敗したんだってすぐに判るからね。
でも、」
イタカがフウの顔を覗き込む。
「なるべく人に話さない方がいいな。そのことは」
と、イタカはフウに忠告した。
魔術を練習するようになってから、フウは狩りの際にも数字を意識するようになった。感覚だけに任せていた獲物までの距離を。
いちばん左にいる犬。
距離を測る。正確に。そして呪に織り込む。
ガクガクと身体を震わせていた犬の足元が定まり始めている。おそらく脳が修復されつつある。
精霊たちに方向を示してやる。
印を結んだ手を犬に向ける。
犬の頭が、ボンッ、と音を立てて破裂し、火球に包まれる。
がくりっと犬が崩れ落ちる。
『あれ?』
フウは訝し気にカイトの背中を見た。
自分と同じ犬を狙ったのだろう、犬の頭が破裂する前に、カイトの放った矢が犬の頭部に吸い込まれていくをフウは見た。
何か違和感があった。
矢が刺さった後。
肉片がいつもより激しく飛び散った。そんな気がした。
それに、時間がかかり過ぎている。カイトにしては。たった一矢を放つのに。
「フウ?」
フウが疑問を口にする前にカイトが訊いてきた。
「うん」
とフウは頷いた。
「魔術。
でも、カイト、あんたは何をしたの?」
「足りなかった」
「え?」
「今度は上手くやるわ」
そうしたやり取りを老婆も見ている。ただし、声は聞こえていない。
老婆がまず驚かされたのは、あまりに速く犬の額が射抜かれたことだ。走り出させようとした犬たちが糸を引いても動かなかった。その時になってようやく、老婆は犬たちの額が射抜かれていることに気づいた。
「あらまぁ」
いつカイトが矢を放ったのか判らなかった。
さらに、犬を一匹潰された。
フウの術。
速い。それに正確だ。
「たいしたものねぇ」
魔術師かしら。あの子。と、フウの力量を推測する。
老婆はフウを狂泉の森人だと思っていた。街の娘の服を着てはいても。魔術を使う森人は稀だ。少なくとも老婆の知識では、森人は弓の腕に拘り、魔術は忌避する傾向にある、と認識している。
だからフウが魔術を使ったことが意外だった。
「魔術師、ではないわね」
と、判断する。
速い、とは言っても、驚くほどの速さではない。魔術を使うことにも慣れていない。と老婆には見えた。
「だったら、こうすればいいかしら」
編み目を変える。
犬たちが動く。脳が修復され、足元が定まっている。額をカイトの矢で射抜かれたままだが、動きには支障はない。
犬たちに互いの距離を開けさせる。
カイトが一度弦を引いただけで複数の矢を放っている、と老婆は理解している。信じ難いことだが。しかし、カイトが一度に何本の矢を放っているかは判らない。何せ、いつカイトが矢を放ったかすら老婆には判らなかったのである。
いずれにしても。
犬たちの間隔を開けておきさえすれば一度にやられることはないだろう。老婆はそう判断した。
フウの魔術は気にする必要はない。まずは犬たちを射抜かれないようにさえすれば、足を止められさえしなければ、何も問題はない。
フウの火球に目を引かれて、カイトが何かを試そうとしたことには、老婆は気づかなかった。
カイトは犬の数を数えている。
残りは10匹。
一匹はそそり立った土壁を駆け上がって、向こう側へと消えた。
ちらりとクロの姿が見えた。
多分、クロをこちらに来させないために犬に襲わせたんだ、と思う。
背後にはターシャの屋敷の壁しかない。突如としてそそり立った土壁とは反対側にも、別の土壁が現れている。
しかもカイトの後ろにはフウとリアがいる。
つまり、逃げ場はない。
犬たちが走り出そうとする。
まずいちばん右側の一匹といちばん左側の一匹が動く気配を示した。続けて真ん中の二匹。さらに残りの六匹が続く。タイミングをずらして、カイトが一度に射抜くことができないよう工夫をしている。
しかしカイトは、犬たちが走り出そうとする、その気配を読んで、機先を制して矢を放った。
犬たちは一歩も前に出られなかった。カイトが放った矢は、すでに矢を打ち込まれていた額に、まったく同じ場所に打ち込まれた。
犬たちが倒れ伏し、ガクンガクンッと身体を揺らす。
カイトが矢を抜く。
3本。
弓に番える。
構える。
慎重に狙いを定める。
ファロでフウに負けて、もっと遠くまで飛ばせないかと、矢に強烈な回転をかけてみたことがある。
矢を曲げる時の要領で、さらにきつく。
しかし、弓を離れた矢は遠くに飛ぶどころか逆に飛距離が短くなって、しかも精度まで落ちた。
ただ、破壊力は増した。
何度か試してようやく矢の刺さった的が、激しく飛び散った。
『あの打ち方なら、脳を破壊できるかな』
さっきは足りなかった。
一本では。
だったら、3本ならどうだろうか。
背後でフウが呪を唱えている。少し待つ。いちばん左側の犬の頭が破裂し、火球に包まれる。
カイトの放った三本の矢が、フウが倒したのとは別の犬の頭部に、吸い込まれるように飛んだ。
走り出させようとした犬たちを止められ、「ウソでしょう」と思わず老婆は編み物の手を止めた。
フウの術で犬が一匹やられ、苛々と舌打ちして、すぐに「え」と声を上げる。カイトの放った3本の矢が突き刺さった犬の頭部が、パンッと破裂したからだ。
犬ががくりと崩れ落ちる。
脳が頭蓋ごと破壊されている。再生できない。
「矢で、どうやって--」
驚きは疑問となり、老婆をむしろ冷静にさせた。
「5本ずつね」
カイトが一度に放っている矢の数だ。今度は判った。カイトを見るのではなく、犬たちから伝わってくる手応えで判断したのである。
フクロウ越しに老婆が見つめる先で、カイトとフウが何かを話している。フウが、自分の矢をカイトに渡している。
「まぁ、その方がいいわよね」
と、他人事のように呟く。
カイトがどうやって犬の頭部を破壊したかは判らない。ただ、普通の打ち方ではないらしく、犬の額を射抜いた時に比べれば随分時間がかかっている。
だとしたら、むしろ狙い目かも知れない。
「ちょっと試してみましょうか……」
老婆は今度は、犬たちをまず横へと飛ばした。
2匹は後ろへ。
そうやってタイミングを外した。
だが、カイトの放った矢は犬の額を射抜いた。身体を捻って躱させたと思った犬の額も正確に射抜かれ、老婆は「おやまぁ」と声を上げた。
犬たちがガクガクッと動きを止める。
カイトが再び3本の矢を抜き、フウが呪文を唱える。カイトの矢が犬の頭を破壊し、フウの唱えた火の精霊の術で別の犬の頭が火球に包まれる。
老婆はそれを見ながら数を数えている。
4は無理。3は微妙だが、2なら確実だ。
フウが術を発動させるのにも同じぐらいかかっている。
「いいわね」
老婆が微笑む。
「ではこれでお終いにしましょうか」
犬に襲われ、土壁の上から落とされたクロは、襲ってきた犬の首を掴み、土壁を蹴った。力を斜めに逃がし、犬を下にしてクッション代わりにする。地面に叩き付けられ、低く呻きながら素早く起き上がって犬の首を切り落とす。
土壁を振り返ろうとして、止める。
大きなため息を落とす。
新たに現れた、腐った肉と土の臭いに気づいたのである。顔を上げると、長剣を手にした死人が三体、のろのろと近づいて来ていた。
「あー。くそっ。楽はさせてくれねぇか」
悪態をついて、クロは犬の身体の上から立ち上がった。
残った犬は6匹。
老婆は犬を縦に数匹ずつ配置した。前の犬でカイトの矢を防ごうというのである。
今度は少しは進めた。
前列に並べた3匹の犬の額が射抜かれ、後列の犬が飛び出す。これもすぐ射抜かれたが、もう一列うしろに残しておいた犬が一匹だけ、更に前へと出た。
だが、それも僅かだ。
結局すべての犬の額を射抜かれた。犬たちがガクガクと動きを止める。
いち。
犬たちの脳はすでに再生を開始している。
カイトが矢筒から矢を三本引き抜き、フウが呪を唱える。
老婆が新しい糸を引く。隠れていた新しい犬が4匹、全速力で走り始める。
にぃ。
カイトとフウが新しい犬に気づく。
が、遅い。
カイトの矢が飛ぶ。新しく現れた犬に向かって。フウも呪文の対象を新しく現れた犬に変えた。一匹がカイトの矢で頭を破壊され、もう一匹もフウの呪でやられた。
老婆は感心した。
呪を唱えている途中で標的を変えるのは難しい。それも動いている相手に。
「たいしたものね。でも」
さん。
残った二匹の犬がカイトに躍りかかる。矢を放つ間はない。
「お終いね」
そう言った老婆の笑みが凍り付いた。
カイトは前へと出た。
右斜め前へだ。
犬たちと戦って、動きを追って、カイトはふたつのことを知った。
ひとつは犬たちの狙いが自分だということ。
もうひとつは犬たちに意志がある、ということだ。
獣の意志ではない。
人の意志だ。
犬たちは操られている。他の者にとっては、例えばラダイやクロにとっては自明のことだろう。だが、カイトは最初、犬たちを獣と認識した。獣として行動すると考えた。いや、考えたという表現は正しくない。カイトは言葉にはしない。彼女自身が獣でもあるかのように、経験を積み重ね、身体に染み付いた経験に従って行動している。
思考はしている。が、それはあまり彼女の表層意識には現れない。途中経過がない。ただ、結論だけが唐突に現れる。
今もそうだ。
『ここから動いても大丈夫だ』
という結論がカイトを動かしている。
もし、犬たちが狙っているのがフウかリアならば。
ふたりの前から絶対に動けない。死んでも動く訳にはいかない。
犬たちがもし、ただの獣ならば。
犬たちは本能に従って、一番弱い獲物、リアを狙うだろう。だからリアの前からは絶対に動けない。
だが、犬たちが狙っているのは自分で、しかも犬たちには人の意志があった。
もし、ここで犬たちを躱しても、犬たちは間違いなく自分を追って来る、と、カイトは確信している。
だから、自由に動くことができる。
まず右へと体を躱す。二匹の犬のうち、向かって右の犬の方が自分に近い。だから右に体を躱し、まずそちらの犬の頭を山刀で砕く。
右に体を躱すのは、右の犬の身体を左の犬の盾として利用する、という狙いもある。左の犬は、仲間の犬が邪魔になって襲撃が遅れる。着地し、身体の向きを変え、再び地面を蹴らなければカイトを襲うことはできない。
それだけの時間があれば、頭を砕いた犬と二匹まとめて、額を射抜くには十分だ。
こうしたことをカイトは言葉にして考えたのではない。イメージしている。何をするべきか。映像として閃く、というのがいちばん近い。
額を射抜いた6匹の犬たちはすでに足元が定まり始めている。
しかし、まだ時間はある。
カイトは見ている。
犬を。
カイトの喉に食いつこうと大きく口を開き、宙に浮かんだままの二匹の犬を。
時間感覚が引き延ばされている。
と、カイトは悟っている。
珍しいことではない。
森で狩りをしていても、獲物が止まって見えることはよくあった。
もちろんカイトの動きが速くなっている訳ではない。一歩は踏み出した。山刀の柄も握った。だがそこで、まるで時間が止まったかのように、次の動作に移れないでいる。移れないまま、カイトは犬を見ている。
おそらくは、瞬きひとつほどの、僅かな時間だ。
『これ、なに?』
カイトは胸のうちで呟いた。
止まった時間の中で、動いているものがある。犬だ。空中で静止した犬が鼻先から消えていく。赤い粉塵となって、霧のように広がっていく。
『壁があるみたい』
と思う。
『わたしの前に、見えない壁が』
肉も骨も関係ない。全てが粉塵と化していく。
黒い鼻が塵となって消え、唇が消え、長い舌が、剥き出しになった歯茎が白い牙ごと消えていく。血飛沫すら飛ばない。鼻口部そのものが消え、両の瞳までが完全に失われて--、
止まっていた時間が動き始めた。
バンッと音が轟いた。
カイトに襲い掛かってきた二匹の犬が鉄柵まで弾き飛ばされ、叩きつけられる。鉄柵でバウンドし、落ちる。犬の一部は鉄柵に張り付いて残った。
「何の音だっ!」
壁の向こうでクロの叫び声が響く。
「ふう!」
カイトの後ろで叫んだのはリアだ。
体勢が崩れそうになるのを大きく足を開いて踏み止まり、止められずに抜いた山刀をくるりと回して鞘に戻し、カイトは矢を抜いた。
さっき額を射抜いた犬たち。もう動けるはずだと矢を向ける。
犬たちは動かなかった。
置物のように固まって静止している。
しばらく様子を窺い、襲われる心配はなさそうだと判断してカイトは肩越しに背後を振り返り、倒れたフウと、そのフウに縋って呼びかけるリアの姿を見た。
老婆はあんぐりと口を開けた。
「まさか。今のは」
彼女の目であるフクロウは、屋敷の屋根から離れて庭の木に移動している。そこの方が庭の様子がよく見えるからだ。
最後に残った二匹の犬がカイトに襲い掛かった瞬間、フウの目が輝いたように見えた。
フクロウの視覚を使っている。
色は判らない。
しかし、一瞬だが、赤く輝いた、と老婆には思えた。
そして、犬たちが弾き飛ばされた。
「まさか、あの娘……。娘たちのひとり……?」
驚愕が彼女の判断を遅らせた。
編み物の手が止まっている。彼女が操っていた犬や死人たちは動きを止めている。予め簡単な指示を与えておいた個体以外は。
ふと、編み物の糸から妙な感触が伝わってきた。
死人との繋がりのひとつが、まるでプツリッとハサミで切られたかのように断ち切られたのである。
ぞっとした。
「ま、まさか……」
目であるフクロウに意識を戻し、舞い上がらせる。
「ひいっ」
老婆は悲鳴を上げた。
鉄柵の門が大きく開かれ、そこに死の聖女であるヌーヌーが立っていた。




