追憶 鈴音の心
文字数少ないです。
私は臆病だ。
周りでは明るい性格と思っている人が多いかもしれない。でもそれは私が臆病に見せないように明るく振舞ってるだけだ。
私がまだ小さい頃、お母さんもお父さんも仕事で帰りが遅い。凄く寂しかった。でも勇が助けてくれた。
一人だった私を勇が家に連れて行ってくれた。本当に嬉しかった。毎日一緒に遊んでくれた。
中学生になってからは勇とはあまり合わなかった。ちょっと寂しかった。でも小さい頃より全然マシだったから我慢できた。
高校も勇と同じ所に行った。勇は頭がいいから私も頑張って勉強した。
高校生になってからたまに一緒に登校するようになった。でもそれだけ。勇にとって興味のない話でもちゃんと聴いてくれた。
高校でゲームが出来ることになった。私はゲームが苦手だ。臆病が故に人とコンビネーションが取れない。臆病が故にモンスターに怯える。
パーティーはクラスの友達と組んだ。勇は誰かと組んだのだろうか。いつも一人だから心配だ。
みんな私がリーダーって言っているけど私なんかで出来るのだろうか。みんなにとって私は明るくてみんなを引っ張っていく人だと思っているのだろう。たしかにそれならリーダーに最適だ。
ただ本当は違う。何回も言うが私は臆病だ。パーティーの一員としても足手まといになるのにましてやリーダーなんて無理だ。ただみんなの私を見る眼差しはキラキラしている。断れるわけがない。
街に出て一度解散した。街の様子を一人で見たかったからだ。情報は大切だ。
しばらく街を見渡すとひとりの少女が歩いていくのをすれ違った。見た目はキャラメイクしてあるのであろうがとても綺麗だった。空のように透き通る水色の長い髪、見透かされているような眼。服装は初期装備、私と同じだった。もしかしたら同じ学校の人なのかもしれない。
そろそろパーティーで集まる時間だ。
集合場所に早め着いた。みんなを待つ間だれか戦ってるところでも見よう。
このゲームではバトルという機能があった。リアルタイムで戦ってるところを見れ、コメントなどもする事が出来る。
何件かバトルしているところがあった。その中でも一つだけ視聴人数が桁違いに多かった。そのバトルは、
ヒルルvs小雪
始めたばかりなので当然だが聞いた事ない名前だ。この二人もしくはどちらか一方が有名なのだろうか。
私はこのバトルを見ることにした。開くと既にバトルは始まっていた。
ヒルルという人は大人の男性、そして小雪という人はさっきすれ違った少女だった。
先程まで初期装備だったのに今は白のセーラー服の姿になっている。
小雪はヒルルの攻撃を完全に見切り、全部避けていた。それは本当に美しかった。まるで蝶のようだった。
あんなに小さいのに強い。何故だか私はこの少女に勇気を貰った気がする。臆病な私に元気をくれた気がする。
私はリーダーを頑張ろうと思った。
それから1週間パーティーのみんなで連携を取りレベルを上げ、大会に挑んだ。
色々な戦略を取り、たくさんのパーティを倒した。実際優勝出来ると思った。
でも出来なかった。3人のパーティーに負けてしまった。とても強かった。まるで上級者の動きをしていた。
でもその3人パーティーも負けた。そう、私が勇気を貰った少女、小雪に。
最初は仮面を被っていて分からなかった。でも途中で仮面が壊れた。私も正体があの少女だった時はとても驚いた。コメント欄も大変なことになっていた。
小雪は3人の攻撃を全て防いだ。そして避けた。それもまた美しかった。負けた私に頑張ったねって言っているようだった。
途中から小雪のパーティーメンバーが参戦して完勝した。私たちのパーティーがぼこぼこにやられたパーティーにだ。
今度すれ違ったら声を掛けたいな。
次の日、小雪さんと会った。
私が一人でレベル上げしている時だ。小雪さんが戦っているところを間近で見れた。もう言葉にできないくらい凄かった。
そういえば勇は大会どうだったのだろうか。聞いてみることにしよう。
本屋を理由に勇と帰れるようになった。勇は何か言っていたがまあいいだろう。
久しぶりに勇とたくさん話せた。ただ勇は大会に出られなかったみたい。勇が戦ってるところも見てみたい。
帰りは雨が降っていた。どうしよう、まだ家まで結構ある。とても止みそうにない。すると勇は家に来るか、と言ってきた。たしかに勇の家だったら近い。でも私なんかが家に行って迷惑じゃないだろうか。
そう考えていると勇は私の手を引っ張って家まで連れて行ってくれた。
勇の家に着いた。近かったのだが雨が結構降っていたので濡れてしまった。そんな私に勇はシャワー浴びてこいと言ってきた。勇も濡れているのにだ。
シャワーを浴びて、服を探した。勇のお母さんの服らしきものがある。でも私は勇の服を選んだ。勇の温もりを感じる気がするからだ。
リビングに向かうといい匂いがした。
勇がご飯作れるのは知らなかった。本当に勇はなんでも出来る。すごいなぁ。
勇はキャベツばっかとか言ってたけどそれでもキャベツばっかでこんなに作れるの私はできない。
味噌汁もキャベツ炒めも美味しかった。お店で出せるレベルかもしれない。
帰りも送ってもらった。お礼の内容はもう決めている。
次の日、勇の買い物を手伝った。私の好きなハンバーグも作ってもらった。これまた凄く美味しかった。
ゲーム内、勇にチョコレートをあげようと思ってモンスターを倒そうとしたけど倒せなかった。死にそうなところを一瞬しか見えなかったけど小雪さんに助けてもらった。チョコレートは諦めよう。
帰り、勇を追いかけた。作ったチョコレートを渡したかった。でもその勇気が無かった。毎年そうだ。私はここぞというところで渡せない。
家に着いてしまった。
ーーー・・・また私は渡せないのか
ーーー・・・いや、今年は違う
ーーー・・・勇に、小雪さんに、ゲームに、勇気を元気を貰った
ーーー・・・臆病な私がここまで強くなれた
大丈夫
「勇…あの…。」
頑張れ私
「これ…。」
熱い、顔が赤くなってるのが自分でもわかる
「うん。もらってって?」
勇が受け取ってくれた
「じゃあまた明日…。」
私は逃げるように家に入った。
渡せた。臆病な私が、いつも勇気が無くて渡せず後悔する私が。今年は後悔しない。
私はゲームを起動した。
初めてこんな感じの話書いたのでなんか変かもです。出来ればブクマだけでも…お願いします。