再会
大紋屋俊樹は衝撃を受けた。目の前にには青葉党の槍蛇丸が立っていたのだ。まさか岩松俊光が彼を出してくるとは思わなかった。
「よう、大紋屋、久しぶりだな!」
槍蛇丸はまるで昔の旧友と再会したような声で俊樹を呼んだ。俊樹は動揺を隠しきれないまま岩松俊光に尋ねた。
「岩松殿、これは一体どういうことですか?」
「君も馴染みがあるだろう。槍蛇丸さ。実は君が生死をさ迷っている時に青葉党を党閥したんだ。その時に生捕りにしてそのまま処刑しようとした。しかし、私は彼が居なければ大音諫山を討てないと確信した。彼も私の理念を理解して、彼の部下の殺生与奪の権を私に委ねると言った。そして今は私の部下になってくれたんだ。」
「…。」
俊樹は動揺から怒りに心が変わったが、これ以上俊光に質問が出来なかった。
「分かってくれたかな?それでは、これからも上州のために力を貸してほしい。」
そして、俊光の書斎から俊樹と槍蛇丸は退室した。二人は無言で岩松邸の廊下を歩いた。俊樹は心の中に燃え上がる怒りに耐えられなくなった。
「槍蛇丸…。」
彼は刀に手をかけた。そして槍蛇丸に斬りかかろうとした。そのとき、槍蛇丸は鋭い殺気を俊樹に向けた。その殺気に俊樹は刀を振り下ろすことが出来なかった。
「おい、大紋屋。お前、まさか俺にこんな目で見返されると思って無かっただろう?自分が正義で相手が悪。自分が正義の鉄槌を下せば俺が無様な顔で斬られるか、泣き言を喚きながら死んでいくと思っていたんだろう?だがそれはお前の見当違いだ。」
「き、貴様!どの口が言うんだ。」
「どの口、お前と同じ口だよ。俺とお前は正反対じゃない。同じだ。御上に逆らい、武力を行使している。幕府からしたら俺もお前も賊ということさ。」
「違う!俺は民のためには戦っていた!」
「違う?違わないな。戦をすることは絶対に弱い奴が犠牲になる。かつての誉れ高いと謂われる戦だってそうだ。それでも犠牲が出ようが目的が達成されれば民や国が救われると自分に言い聞かせて弱い奴を犠牲にしても戦を起こす。お前もそれと同じだ。」
「…。」
「確かに俺は好き勝手にやって来た。しかし、お前も所詮は賊だ。俺とお前は同じむじなという訳だ。」
俊樹は何も言い返せなかった。
「今ここで俺を斬ってみろ。岩松様は何と思うだろうな?お前を許さないだろう。そしてお前は正反対じゃない何も出来ないまま犬死するだろうな。」
「くっ!」
「ま、もう一度勉強し直すことだ。」
そう言うと、槍蛇丸は先に屋敷を後にした。俊樹はただ一人、廊下に立ち尽くし、己を振り返っていた。そして
今までのやり取りを、俊光は影から見ていた。彼は何を思い、彼らを見守って居たのだろうか?今となっては誰にも分からない。