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雲を掴む者達  作者: bashi
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盗賊との戦い

相模源兵は、秘密裏に太田から届けられた物資に、ただ驚いていた。味噌、小麦粉、その他の物資が届けられたが、一番驚いたことは、最新式のライフル銃が100丁以上も含まれていたことだった。


上州世直し一揆の本拠地は北橘村の山中にあった。元々、前橋藩の小さな村から端を発した一揆は、度重なる飢饉や英寇や政情不安などで勢力を増していった。頭領は大紋屋俊樹という34歳の青年である。元々は名字のない小作人であったが、蜂起後に大紋屋という姓を名乗っていた。大紋屋俊樹は貧民の現状を自分と重ね合わせて、正義感から地主の備蓄米をこっそり貧民に分け与えたところから一揆へと繋がった。その一揆は前橋藩、高崎藩、沼田藩、安中藩と徐々に広がっていったのだ。世直し一揆は、盗賊集団とは手を結ばず、逆に盗賊を相手に紛争を行い、農民の支持を集めていた。しかし、高崎藩などの苛酷な弾圧に遭い、勢力が弱まっていた。今回の袴安の助太刀は願ってもないものだが、世良田一揆の実力は未知数だ。


「報告。前橋方面で盗賊の動きが活発化。前橋藩の対応も遅れているとのこと。」


大紋屋はすぐに行動に移した。


「前橋・・・。ここから遠くない。救民に行くぞ!各々準備してくれ。」

「はっ。」


一揆勢は総勢250人の軍勢で前橋へ向かった。道端の花々に目を向けられないほど、状況は緊迫していた。着崩した鎧をまとった盗賊共が、農家の家々に火を放ち回って略奪も行っていた。大紋屋の怒りは凄まじいものとなった。


「おのれ、許せない!」


大紋屋は素早くライフル銃に弾を込めて、一発発射した。その弾は、老婆を切ろうとした盗賊に命中し、盗賊は、ヒョロヒョロとして絶命した。

「おばあさん、大丈夫ですか?すぐ安全な所へ!」


大紋屋は、すぐに老婆を起こして、安全な場所へ避難させた。緊迫した状況でも弱い者を気遣う優しさを、大紋屋俊樹は持ち合わせいたのだ。火の手も激しくなっていた。身勝手な盗賊に家屋、財産を焼かれた住民の怒り、悲しみは書き表すことなどできない。


「相模さん。あなたの班は農民の保護、救護を行ってください。負傷しないように、お気を付け下さい。」

「は、はい!」


避難民が最も危険にさらされるのは、もちろん戦を行っているときだ。戦力を割き、なおかつ味方を危険に晒す命令だが、相模源兵は快く了解した。大紋屋の優しさを知っていたからだ。


大紋屋の奮戦は続いた。今度は槍に持ち替えた。見た目だけは立派な馬に跨がった盗賊に突撃した。


「野党、勝負~!」


相手も応える


「一揆無勢が、かかってこい!」


大紋屋の槍が盗賊に突き出される。盗賊も交わすが、大紋屋の槍裁きの鋭さに徐々に押されていった。


「こ、こいつ・・・。」


盗賊の疲労も深くなっていった。そして、大紋屋は盗賊の槍を持つ手が緩むのをみると、一気に槍を突き出した。


「隙あり!!!」


大紋屋の槍が、盗賊の喉を突き抜いた。盗賊は、喉から血をピューピュー噴き出しながら、落馬した。それから勢いに乗った大紋屋はその槍で盗賊に攻め掛かり、7人も盗賊を討ち取った。盗賊の目が大紋屋に釘付けとなった。それは、一揆勢に有利に働いた。それを証拠に、盗賊の騎馬がよろけ始めた。大紋屋が奮戦している隙に地面に縄を張り、罠を仕掛けていたのだ。盗賊達はさらに動揺した。その動揺が、さらに一揆勢に有利に働く。離れた場所で、世良田一揆からもらったライフル銃を装備した狙撃班を10人ほど展開する時間を稼げた。


「総員、球込め!」


一斉に球込めすると、陣形が乱れつつある盗賊に発砲を始めた。その雷のような発射音は、戦場に木霊した。盗賊がバタバタと倒れた。


「よし。再び球込め!」


弾の装填に少しもたつきながらも、再びライフル銃を構えると、狙撃班は再び発砲した。

また盗賊が幾人も倒れた。これには盗賊は参ったようで、


「引け引け~!」


這々の体で撤退していった。世直し一揆達の勝利であった。大紋屋の心は晴れ晴れした。前橋藩ももうじきやって来るだろう。しかし、大紋屋の元に悪い知らせが舞い込んだ。


「報告。高崎の宿場町にて、盗賊が宿場を襲っているとのこと。」

「何だと・・・。」


大紋屋は驚愕した。


「すぐに高崎に向かいます!」

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