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雲を掴む者達  作者: bashi
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大胡の戦い①

大音諫山率いる前橋、高崎藩連合軍は、伊勢崎方面から前橋よりの大胡に陣を構える岩松軍へ向けて進軍していた。大紋屋俊樹の上州世直し一揆を鎮圧した兵数よりも大軍であった。しかし、大音自身は出陣せず前橋城にて待機していた。それは大音の余裕の現れであった。岩松は何とかして自分の首を取る気でいる。しかし、それは余裕の無さの現れだ。相手は失敗できない。だから余裕がない。そのような烏合の衆は一度失敗すればたちまち崩壊する。そう考えながら、安全な城の中で熱いお茶を飲んでいた。


 一方で岩松俊光は大紋屋俊樹とともに軍を進めていた。兵力は高崎藩よりも少ないが、士気は高かった。岩松俊光は鎧ではなく紺色の軍服を着ていて、背広の下には赤いシャツを着込んでいた。大紋屋俊樹は鎧の腹巻を着けて紺色の着物を着ていた。頭にはハチマキを着けていた。


「岩松殿、そういえば槍蛇丸の姿が見えないのですが?」

大紋屋は作戦はしっかり岩松と打ち合わせたつもりだった。


「ん?残念ながらあいつは脱走したよ。所詮はただの盗賊だったということだな。」

大紋屋はとても驚いた。


「本当ですか!?そんな・・・。」

しかし、岩松のことだ。何か裏がありそうだとは思った。しかし、それではこちらの兵数はだいぶ減ってしまう。


「ま、これからは未来のことを考えないとな!」

岩松は前向きに大紋屋に返した。


両軍はとうとう大胡で対峙した。大紋屋の目には高崎藩の紋をあしらった旗が幾つもはためいているのがはっきり見えた。しかし、恐怖は無かった。もちろん岩松も同様である。


先に動いたのは高崎藩であった。幾つもの大砲が岩松軍に降り注いだ。しかし、岩松軍は動じない。こちらも大砲の応戦をした。戦場には季節外れの雷のような轟音が轟いた。そして、お互いが銃撃を開始した。硝煙であたりが真っ白になると、高崎藩は突撃を始めた。大紋屋は焦った。


「まずい、相手の動きが早い!」


実際高崎藩は今までの軍隊よりも強力だった。大紋屋と戦ったときよりもより洗練された動きであった。

「うむ、まずいか・・・。」


岩松も焦る表情を見せた。そして、半刻をすぎる頃には多勢に無勢で岩松軍はかなり押され始めていた。士気もだいぶ下がっていた。それに乗じて高崎藩はさらに進軍してくる。


「いかん、一旦引くぞ!」


岩松の号令がかかり、もう少しで軍が崩れる前に岩松軍は後退を始めた。岩松軍は泥に汚れながらなんとか小高い山を背にした平地に軍を設置し、塹壕を掘って高崎藩との長期戦に備えた。しかし、大紋屋ははっきりと敗北の文字が浮かんだ。


塹壕にこもってから雨続きであった。そして、つかの間の曇りの日に高崎藩はそのまま岩松軍を包囲した。その時、岩松俊光がどう考えているかなど、大紋屋には分からなかった。くらい表情の岩松をみて、只々不安になるのであった。



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