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勇者だけどウチのおっちゃんが田舎でスローライフ送りたいって言うから説得する

作者: しょー
掲載日:2017/12/15

 


「なんでだよおっちゃん!? どうしてそんな事を!?」


「どうして言うてなぁ……おっちゃんも色々考えてんで?」


「追放って……そんなの、その後は!?」


「……せやなぁ、やっぱり流行りのスローライフ言うんを田舎でやろか」




 自分を追放してくれ。





  今、目の前に居るおっちゃん……勇者である自分にずっと付いてきてくれた人が何故そう呟くように言って来たのか、理解出来なかった。




「もうな、正直限界や思うねん」


「……限界って、何が?」


「……色々や、自分、分かってるんとちゃうん?」


「分かんないよ、分かるはずないでしょ!?」


「……そうか、ほな説明せんとなぁ」



 おっちゃんは疲れたような顔をしながら、何故そんな事を言い出したのか、それを説明し始めた。



「……まずな、王様んとこで言われた事、覚えとるか?」


「えと、勇者として旅をし、仲間を得て魔王討伐を成し遂げよ……だっけ?」


「せや、そんでな? その魔王な、めっさ強いんは知っとるな?」


「うん、他の勇者達……えと、確か西の国の勇者パーティーが先月、魔王と戦って壊滅したとか……」


「せやな、いま巷じゃそん噂で持ちきりや……そんでな、そん西ん勇者パーティーがやられたんはな、仲間が貧弱やからって風潮でな、そんで他ん勇者パーティーでな、流行っとるねん」


「……何が?」


「役立たずは追放しとこかって流行やな」


「おっちゃんは役立たずじゃない!!」



 座っていた椅子から飛び上がるような勢いで立ち上がり、叫んだ。


 そのせいで今居る食堂の、他の客から注目を浴びてしまうが今はそれどころでは無かった。


 おっちゃんを役立たずだ等と貶した事は一度も無い。 それに付き合いも長く一番信頼していると断言も出来る。


 流行だかなんだか知らないがふざけた話だと思った。


 そして、それに乗っかろうとしつつあるおっちゃんにも怒りが湧く……他所は他所、ウチはウチではいけないと言うのだろうか?



「そう言うてくれるんはな、素直に嬉しいんやけどもな?」


「……だったら!!」





「でもな、おっちゃんただの一般人やで? 勇者に付いてく言うんがそもそもおかしいねん」



「…………うっ……」


「戦士でも魔法使いでも回復術士でもあらへん、盗賊とか元騎士とかでもあらへん、ホンマの一般人やもん」


「……で、でも……世の中には遊び人なんて役職(クラス)で勇者パーティーに加入してる人だって居るし……」


「……あんな? 遊び人言うても職能(アビリティ)を持っとる歴としたプロやでそれは? でもな、おっちゃんは何の能力も無いただのおっちゃんやねん……むしろ道化(ピエロ)やな」


「じゃあプロの道化師として旅の中で修行を……」


「言葉遊びで誤魔化そうとするんは辞めとき」



 おっちゃんは頑なに説得に応じようとはしてくれなかった。


 確かにおっちゃんは只のおっちゃんであり、戦う力なんてこれっぽっちも持ってはいない。


 しかし、それがなんだと言うのか?


 仲間とは、相手をどれだけ信頼出来るか……ただそれだけが重要だと考えている。


 ならば信頼に足りうるおっちゃんを仲間として、何がいけない?


 おっちゃんの言い分も確かに分かる。 魔王は強大であり、生半可な強さでは太刀打ち出来ない。 それは分かっているつもりだ。



 しかし、勇者の強さとは『心』の強さだ。



 愛、希望、絆、信頼。


 勇者に力を与えるモノは、そういったかたちの無いモノで、単純な技術や技能、魔法なんかではそれらの力は手に入らない。


 なら、かたちある力を何一つ持たないおっちゃんだって、かたちの無い力を与えてくれるなら、仲間で良いじゃないか。


 そういったモノを持つ者こそが真の仲間なのだと、そう言いたい。



「……いや、あんな? それでもごっつぅキッツイねんで?」


「愛と勇気と根性があれば乗り切れる!!」


「……乗り切れんから言うてんのやけどなぁ」



 おっちゃんは疲れた顔でぼやく。


 その疲れは肉体的なものなのか、それとも精神的なものなのか、判断は付かない。


 もしかしたら両方なのかもしれない。


 一般人が勇者と行動を共にする辛さは勿論理解しているつもりだ。


 旅は辛く険しい、当然命の保証も無い。


 だけど、ウチはおっちゃんを大切に扱い、最大限に配慮をしているのだ。


 戦う力は無くても、おっちゃんはウチには絶対に必要不可欠な人なのだ。


 おっちゃんは料理も上手いし雑用だってこなしてくれる。 街から街へのルート選択もおっちゃんに任せておけば安心だし、ダンジョンに潜ればマッピングだってお手の物だ。


 そんな人を無下に扱ったりはウチはしない。


 でも、それでも疲れた顔をしているという事は、心労があるという事なのだろう。



「……おっちゃん」


「なんや?」


「疲れたの?」


「……せやな、疲れとるな」

 

「おっちゃんの事は労ってきたつもりだけど、足りなかった?」


「いや、十分に労られとるよ、これ以上はあらへんと思うとる」


「……じゃあ、どうして」



 わからない。


 そう言ってくれるおっちゃんの眼には精気が感じられない。


 良く見れば、おっちゃんは酷くやつれているように見えた。 出会った時はあんなに元気だったのに。



「…………そんなに辛いんだ、おっちゃん」



「…………」



 おっちゃんは少し間を置いてからポツリと呟く。



「辛いんはな、おっちゃんが邪魔になっとるって自覚しとるからやで、自分は悪くあらへん」


「邪魔……?」


「せや、おっちゃんは必要あらへん、なんもかんも上手く行かすんにはおっちゃんは邪魔やねん」


 おっちゃんの言葉は理解し難いものだった。


 おっちゃんが邪魔?


 何故、どうしてそんな事を言い出すのか。


 ウチにはおっちゃんは絶対に必要だと、あれほど強く言ったのに、おっちゃんはそれを否定していた。




 ……何故?





「……きちんと言わんと伝わらんか、まずな、おっちゃんが居るとな、ちょっとでも危険な地域だと自分、行かへんやん」



「…………?」



 それの何がおかしいのだろうか?


 何度も言うが、おっちゃんは只のおっちゃんであり一般人だ。


 だから危険な魔物が生息する僻地や、生還率の低い高難度ダンジョン等への挑戦は徹底的に避けている。




「…………自分、勇者やん、それでええと思うとるん?」


「おっちゃんの命には変えられない!!」


「ほれ、やっぱり邪魔になっとるやんか」



 おっちゃんは呆れた顔でため息を吐く。



「それにな、世間体もあるんよ」


「……世間体?」


「…………変なおっさんが勇者のひとりにまとわりついて、足引っ張っとる……って言われてんねんで、おっちゃん?」


「よし、言ってた奴は誰だ? ぶっ殺す」


 抜剣して周囲を睨む、すると近くで酒を呑んでいた連中が青い顔で目を逸らした。


 そうか、お前らか。



「あかんあかんあかんあかん!! こないな所でエモノ振るうんやめーや!!」


「で、でも……」


「だいたい合っとる事実やねんから、怒ったらあかん!!」


「ひとつも合ってない!!」


「成長の邪魔しとるんは事実や言うとるんや!! いい加減認めんとあかんやろ!!」


「嫌だ!!」


「子供かっ!?」


「おっちゃん居なくなるぐらいなら子供でいい!!」


「アホか自分!? そんなんやから若いっちゅうに恋人も出来へんねんで!?」


「そ、それは関係ない!! だ、だって……」


「だってやあらへん、いくら勇者や言うても年頃のもんは年頃のもん同士で青春せな後悔するわ」



 おっちゃんと言い争う内に何故か恋人云々の話になった。


 おっちゃんは恋人を作るべきと、そう言ってしょっちゅう小言を言って来るが、何故そんな事を言ってくるのか理解に苦しむ。



「だいたいやな、おっちゃんパーティーメンバー募集して希望者連れて来たりしとるやんか、それ全部断ったりしとるから……」



「なんでその話が今出てくるんだおっちゃん!?」



「なんでやて? そんなん恋人候補として見繕って来とるのに全部袖にするからや」


「…………お、おっちゃん、そんなつもりで連れて来てたのか……?」


「当たり前や、全部おっちゃんのせめてもの心遣いやで」


「……そんな理由でメンバーなんか増やせる訳ない!!」



 おっちゃんの言葉に怒りを感じ、売り言葉に買い言葉で反論してしまう。


 でも、それだけ納得がいかない理由だった。


 おっちゃんはウチをなんだと思っているのか。


 そんな低俗な理由でのパーティーメンバーの増員なんか認められる訳がない。



「……まあ、確かにそのへんはおっちゃんの配慮不足やな、すまんと思うで……でもな」


「……でも?」





「どうしてもおっちゃんから離れた方が良い思うてな、こっちも必死やねんで?」



「……だから、それがどうしてか聞いて……!!」


「そんなもん、おっちゃん以外にメンバーおらんからに決まっとるやろ!!」


「うっ……!?」


「いつまでもおっちゃんおっちゃん言うて、雛鳥やないんや自立せい!!」



「……だ、だって」


「だってやあらへん、おっちゃんが居ると自分、自立出来へんのにようやく気付いたってだけの話や、おっちゃんが居るから他に仲間も作らへん、恋人も作らへん、なんでもかんでもおっちゃんおっちゃん、おっちゃんがそんな大事か!?」


「うん」


「うん、やのうて、勇者やねんからもうおっちゃんは卒業しとき!!」


「嫌だ!!」


「嫌もなんもおっちゃんがダメ言うとるんやからダメなんや、いつも言うとるやろ!?」


「絶対嫌だ!!」


「だだっ子か!?」


 おっちゃんが離れないで済むならだだっ子でも何だってやってやる!!



「嫌だ!! 嫌だ!! やぁぁぁぁぁぁ!!」



「ええ年頃の娘がはしたないからやめーや!?」



 そんなの知らない、おっちゃんが居てくれるなら子供でいいし。



「じゃあ出てかないで、ウチとずっと一緒に居て?」


 おっちゃんはウチの事勇者としか見てないかも知れないけれど、ウチはおっちゃんの事ウチのおっちゃんだって思ってるから。



「なにを言うてんねん……」


「おっちゃんウチの事嫌い?」


「嫌いやあらへんで? 嫌いやあらへんけどもな、そないな事言うてるとホンマ結婚も出来へんで……?」


「おっちゃんと結婚するし」


「あかんわ、歳の差考えんとあかんで……」


「おっぱい大きくなったよ?」


「ちゃうねん、そういうんはどうでもええねん、最初でおうた時子供だったんがあかんねん、育ったらいただきますとかゲスの所業やんけ」


「禁断の恋、燃える情熱!!」


「やかましいわ」


「わかった、じゃあもういいよ、腕力で解決するから」


「は? ちょ……」





 数ヵ月後、勇者としてのウチの腕力に物を言わせて説得性交したおっちゃんは、国に勇者を使い物にならなくした者として追放されド田舎でスローライフを強要される事になったとさ。


 勇者を止めたウチも一緒に。




「……納得いかん」


「おっちゃ……パパの希望通りだよ?」


「やかましいわ」



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