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機種変更はおはやめに。

「というか本当、遊木さんの趣味っておかしいですよね」

 二人の気持ちが落ち着いて弛緩した空間の中、有樹が唐突にそんな呟きを漏らした。

「ちょっ?! 唐突に何っ?!」

「なんでよりにもよって私を選ぶかなぁ、と」

「いや、自分に対してよりにもよって、とか言っちゃ駄目でしょ」

「だって悪趣味ですよ? それとも実家への反抗心の現れか何かですか?」

「いやだから……、何で君は自分の性格が好かれるって発想に行き着かないかなぁ?」

 反射的につっこみを入れる遊木と、ことごとく論点のずれた返答をする有樹。

 ここまで自己評価が低いというのは、過去に一体何があったのだろうと心配になり、思わず遊木はため息を吐いてしまう。

「わがままで、ひねくれてて、自己中心的な上に小賢しいとか、最低じゃありません?」

 指折り数えながら話を向ける有樹に対し、遊木は首を横に振りながらその言葉を否定する。

「字面だけだと確かに酷いけど、有樹さんはその最低、と呼ばれるタイプじゃないよね?」

「そういう人間ですよ。基本的に自分の事しか考えてませんから」

 笑顔で返され、盛大なため息をつく。

 大抵の女性であれば否定して欲しいからこその卑下の言葉だが、彼女に関しては本気でそう思っている節がある。

 この件に関しては何度話したところで有樹が自説を曲げる事はなさそうだ。ひとまずあきらめるしかないかな、と遊木は思うが、本当に彼女が自分で言うような人間であれば、弘貴(ひろたか)や遊木、久本と言った見る目の厳しい男から評価されるはずがない、という事実はどう考えているのだろう。

「だいたい、遊木さんがどこまで考えているのか知りませんけど、現状ならともかく実際に結婚だの婚約だのという話が上がってきたらそちらの家族は大反対だと思いますよ?」

「そうかなぁ。うちの親、最低限の常識さえわきまえてる相手なら誰でもいい、って言ってたし、兄貴もそうだと思うけど」

「……あのですねぇ?」

 一度釘を刺しておこうと思って口にした言葉に、予想以上に脳天気な言葉を返され有樹が深々とため息をつく。

 軽く眉間をもんでから遊木にむけた表情はあきれを隠そうともしていない。

「ちゃんと日本語をよく考えてくださいね。常識をわきまえている相手、っていう言葉は、目に着く異端の要素がない相手、っていう意味なんです。障害持ちなんて論外なんですよ」

「俺の家族はそんな差別するような人達じゃないよ」

 有樹さんはいいところ見てないからわからなくて当然だけど、と言われた感じがして、またしてもため息をつく。

 頭が悪いわけでもないのにこの男はどうにも現実が見えていないところがある。きっとこういう所が心配なんだろうな、と一度会ったきりの悪印象しかない相手に少しばかり同情しているあたり、有樹は冷めているのか違うのかよくわかりにくい。

「差別とかそういう問題じゃないんです。たとえばですね、相手がギャンブル中毒であれば親は反対しますよね?」

「そりゃ当たり前だよ。苦労するの目に見えてるし」

「だ・か・ら、そういう事なんですよ。

 障害持ちなんて、結婚したら余計な苦労するに決まってるから反対されるに決まってるんです。

 差別でも何でもなく、親として、家族として、ごく当たり前の事ですよ? こと、お兄さん夫婦に障害のある子供がいるのならなおさらです。どれだけ大変な事なのか実体験として知っているんですから、わざわざそんな変なオプション付いてる相手なんて選ばせたくないでしょう」

 なんで私がこんな説教をしないといけないんだろう、と思いつつもごく当たり前の理屈を説明する。

 そう。障害を抱えていればそれに応じた不自由が発生するし、それに応じて対処せざるを得ない。

 その為には時間もかかるしお金もかかる。精神的な負担だって発生するのは目に見えている。

 有樹としても弟の匠が障害のある相手を選んだらきっと反対するだろう。そんな苦労するとわかってる相手を選ぶなんてとんでもない。

 だからこそ、自分が同じ言葉を言われる立場なのもわかっていたし、反対されなかったらむしろ相手の家族仲を疑ってしまう。

「なんか、有樹さんに言われると不思議というか……。君はそんな理不尽に怒る立場じゃないの?」

「どこが理不尽なんです? 身近な人間が苦労するとわかりきっている相手と結婚したがったら反対するのは真っ当な反応なんです。

 理由がギャンブル癖であれ、暴力であれ、浮気癖であれ、障害であれ、苦労させられるのがわかりきっている、という事実は変わりないんですからね?」

「……いや、確かにそうかも知れないけど、でも……」

「じゃあ言い方を変えます。将来あなたの甥が重度の障害を抱えた相手と結婚したいと言ったら諸手を挙げて祝福できますか? 本当にその相手でいいのかよく考えろ、って言わずにいられますか?」

 本人としてではなく、身内の立場になってよく考えてみろ、とばかりに切り口を変えると、案の定遊木が言葉につまった。

 自分が敢えて苦労の多い道を選ぶのは許容範囲でも、身近で大切な相手がそうしようとしていた時に見過ごせるかは別問題だ。

「それに遊木さん自分で言ってたでしょう? 恋愛中は脳がまともに働かない、って。あなたが今、障害持ちの相手でもいい、って思っているのがその誤作動ではないという保証はありますか?」

 立て続けての問いにはやはり返事がない。もっともここで安直な返事を投げてくるような相手であれば、引導を渡してやろう、と思っていた有樹にとっては多少とはいえ評価できる反応だった。

「私はそういった部分を考慮した上で、自分の人生設計に恋愛だの結婚だのという要素を組み込まない事にしました。

 それに対して遊木さんがどう思おうと変えるつもりはありません。

 少なくとも、障害持ちを抱え込む事で生じる不利益を正しく理解して、まわりも完全に納得させられる相手でなければ自分の主義を曲げてでも相手と付き合うかどうかを検討するつもりなんてありませんので」

「……なんか、すっごいハードル高いねぇ」

「これで最低ラインに立てるんですよ?」

 他に言葉が見つからなかったのか、苦笑いでつぶやいた遊木にさらりと冷たく返す。

 別に嫌いな相手でなかったし、友人としては付き合いやすく楽しい相手だったのでついあいまいなままにしていたが、この男は恋愛脳に浮かされているにしてもそれ相応に本気であるようなので、そろそろ現実を見てもらう時期と判断したのだ。

「あ~、うん。……まぁ、とりあえず、冷静になれ、って意味で友達付き合いもアウト、って意味じゃない、よね?」

「あなたのご両親じゃないですけど、三年たってから出直してこい、的なところですかねぇ」

「了解。じゃあとりあえず、三年――実際にはあと二年ちょい、かな? その間にお互い相手の事をよく知って、それでも俺が君と結婚したくて、有樹さんが俺との事検討してもいいかな、って思ってくれてたらその時に改めて、って事にさせて?」

 この返事には有樹が目をまたたく。

 自分の口にした言葉が実質的な断り文句という自覚はある。それでもはっきりと食い下がってくる程の熱量があるとは正直思っていなかったのだ。

「それは遊木さんが決める事で、私が決める事じゃないですよ。私はそもそもそんなつもりないんですから」

「うん、わかったから何度も言わないでくれるかな? 一見地味だけどじわじわ効いてきて辛いから」

 さらりと告げると、苦笑いの遊木が頭をかきながらぼやく。

「俺はさ、本当に有樹さんが好きだよ。――でも確かにその言葉を君に信じてもらえるだけのものを示せてない。だから、執行猶予をありがとう」

 本心の見えない言葉だが、どこかすっきりした風でもある言葉に有樹は小さく首をかしげる。

 本当に変な人だ、などとかなり酷い事を考えたのはしかたがないだろう。

「あ、そういえばさ。姪が有樹さんにお見舞いというか、おもちゃのお礼というか、まぁともかくそんな感じのものを渡したがってるんだけど、預かってきても構わないかな?」

 この会話を長引かせたくなかったのか、まったく違う話に変えられわずかに苦笑する。

 けれど、遊木と手分けして作ったボールを届けたという話を聞いたばかりで、そのお礼、という話が出てもおかしくはない。

「高価なものでなければ受け取りますけど」

「姪が渡したがってるのは、リハビリがてら作った毛玉? 一応りんごのつもりらしいけど」

 何気なく酷い評価にふき出したのは不可抗力だ。その言葉だけでおおよその完成度がうかがい知れるというあたり的確なのだが、手に麻痺のある幼稚園児の作ったものへの評価としては手厳しいものがある。

「なんかね、あのケーキとかあれこれ俺と有樹さんが作ってくれたものとか見て、手芸に興味が出てきたらしくてさ。

 指先を使うからリハビリにもなるし、ってんで最近なんか毛玉量産してるんだよね」

「毛玉連呼しないでくれます?」

「けどあれは毛玉にしか見えないって。

 まぁ、あれだ。極太の毛糸で組紐的なものを作っててさ。俺ももらったけど、はっきり言って肉親補正ついてないとただのゴミかなぁ、って感じなんだよ。

 いびつだし、編み目もがたがたで部屋の片隅に転がしとく以外どうしようもないというか……ね?」

 どうやら受け取った後で有樹が処遇に困るのでは、という配慮もあっての言葉らしい。しかし、子どもの手作りなどそんなものだ。

 なんでもとっておく癖のある母親から、幼稚園時代に作った紙粘土のおにぎりやこんがらがった毛糸にしか見えない編み物らしき物体を見せられてげんなりした経験のある有樹は、そのくらい折りこみ済みである。

「まぁ、部屋のどこかに転がしておいていいのなら受け取るのはかまいませんよ。せっかく頑張って作ってくれたんですし」

「いいの? ああいうのって捨てるに捨てられなくて困らない?」

「どうしても困ったら遊木さんのマンションに飾らせてもらいます」

 しれっと言うと、今度は遊木がふき出した。有樹の言葉は裏を返せば、処遇に困ったら遊木に押し付ける、という意味であり、けれど、甥姪が遊びに来たりはしないマンションの部屋に、という辺り贈り主に対する配慮がないわけでもない。

「わかった。じゃあそういう事でお願い。……あ、でも受け取ってから毛糸が高いの使ってそうだから、っていう理由での返品はやめてね?」

「あ~……。まぁ、遊木さんの家ですし、安い毛糸は使ってないでしょうねぇ。

 でもまぁ、ことさら高い物を押し付けようとする意図があるわけでなし、かまいませんよ」

 冗談めかした遊木の言葉に苦笑いで応じてからふと思い立つ。

「だからといって、毛玉にお菓子だのアクセサリーだのトッピングするのはやめてくださいね?」

「やらない、やらない。有樹さんにけんか売るメリットなんて何にもないし、ちゃんと兄貴達に釘は刺しとくから」

 これだけじゃなんだからお菓子でも一緒に、とつぶやく兄の言葉でもあったのか、遊木がいくらか引きつった笑いで応じる。

 有樹もその反応から何があったのかおおよそわかったが、まだ実害が出たわけでもないので気づかないふりで流しておく事にする。

「そういえば、もうしばらく手芸は再開できそうにないんですけど、大丈夫ですか?」

「あぁ、それは気にしないで。みんな事情は知ってるし、そもそも期限のあるお願いじゃないから無理しないで」

 包帯は少なくなってきたものの、まだ痛々しい指先を見る限り手芸を再開するにはしばらくかかるだろう。

 そろそろアプリ程度ならだいぶやれるようで、頻繁にログインしている様子があるが、仕事の再開はもう少し手が良くならないと辛いに違いない。

「そういえば、有樹さんは今のスマホどのくらい使ってるの?」

「たぶんまだ三年はたってないと思いますけど、……なぜ急に?」

「今度有樹さんのスマホにも、俺が使ってるのと同じ警備用のアプリ入れて欲しいんだけどさ、あれ、常駐させるから結構バッテリーくうんだよね。古い機種だとバッテリー的にきついかな、って思ってさ」

「あ~……。それは結構きついかもしれないですね。最近バッテリーがへたってきた感があるので」

 アプリをやりまくっている割には古いスマートフォンを使い続けている有樹が苦笑いになる。

 二年を過ぎた頃からたまに新しくしようかとも思うのだが、何処も壊れておらず、充電も不便なほどもたないわけでもない。となると、機種変更の手間を考え、面倒だからもう少しこのままでいいや、と先延ばしを続けていた。

 有樹の行動パターンだと、出先でスマートフォンを使うのは通勤中に音楽プレーヤー代わりにする時くらいのものである。

 職場内で使わないのは、勤務時間外であってもデスクでのスマートフォンの使用が情報管理の名の元に禁止されて以降、ロッカーにしまいっぱなしという事情もある。

 食事中は同僚と話しているし、食堂の椅子は背もたれがないので有樹には辛い。

 勢い食べ終わると早々に席を立つのだが、他に座れるところというと着替え用の椅子を置かせてもらっているロッカールームしかない。

 けれど、冷暖房なしの窓辺というのは通年を通していつくのには適さない気温の事がほとんどで、結果、有樹は自分のパソコンの前で本を読む、という選択をしたのでスマホに触る機会がない。

 なので日常的に不便を感じるほど充電のもちが悪い事もなく、大抵のアプリもまだ動く、となれば出不精な有樹がそのまま使い続けていたのはほぼ必然かもしれない。

「今、朝フル充電しておいて、帰ってきて残り二十パーセント前後ですね」

「それだとたぶん一日もたなくなっちゃうな。

 変えたばっかりでも残業やら何やらあるとやばくなる時あるし」

「……それ、辞退するわけには……」

「予備のバッテリー持ち歩くのと、機種変、どっちがいい?」

 面倒だなぁ、と思いつつ尋ねたら、笑顔で嬉しくない返事が帰ってきた。

「さすがにうちで契約したのを使ってもらうのは嫌だよね?」

「嫌ですねぇ」

「そうしたら、機種変にかかる費用――本体代と手数料、基本料の差額が発生したらそれも加害者に払わせるから、機種変か、予備のバッテリーを渡すか、費用うち持ちでバッテリー交換してもらうか、になるんだけど」

 出された選択肢に眉をよせる。

「というか、どのみちそろそろ機種変更せざるを得ない時期なので自腹でかまわないですし」

 昨今、下手にバッテリー交換などしても新しいバッテリーの寿命より先に本体が壊れる確率が高い。

 ならばいっそ下取りに出してまるごと買い換えた方が手っ取り早く、そこまで愛着のある機種でもないし、新機種の発表からそろそろ半年。もう待たずとも希望通りの機種が手に入るだろう。

「でもなんか悪い気がするんだよね。だって、こんな事にならなければまだしばらく使うつもりだったんでしょ?」

「まぁ、そうですけどね。仕事帰りにすぐ寄れるので、壊れてからでいいや、と思ってたのは確かです」

「だから、有樹さんに身銭切ってもらうのは違う気がするんだよね。なんだかんだ言って落としたり水没したりがなければ四~五年使えたりするしさ。

 そう考えると、結果として一台余分に買ってもらう事になっちゃう上、購入はともかくとしても維持費で負担が発生するかもしれないからね」

 確かに壊れるまで使うと仮定すると、短いスパンで買い換えるのとそのくらいの違いは出てしまう。

 しかし、自分でも買い換えようかと悩み始めていたのにこれ幸いと治療費に上乗せするのは気が引けてしまう。

 しかし、充電が一日もたないスマートフォンでは話にならないし、別にバッテリーを持ち歩くのも面倒くさい。かといって有樹が自分で負担するのを遊木に納得させるのもなかなか難しそうだ。

 さてどうしたものか、と頭を悩ませていると、じゃあさ、と遊木が口を開いた。

「今と機種変後の料金の差額を折半でどう?」

 遊木の提案に、それなら今の機種でも困っていないし型落ちの安い機種を選べば差額もたいしたものではないだろう、と心を決める。

 自分で買い変える予定だった物を支払わせるのは気が引けるが、落とし所としてはこんなところかもしれない。

「……まぁ、そのくらいなら……」

「ん、じゃあそれでお願い。退院したら一緒に選びに行こうか」

「……え? なんで一緒に?」

 さらりと口に出された言葉に目をまたたくと、遊木がいたずらっぽく笑う。

「有樹さんが変に気を回して安い機種にするのを防ぐために決まってるじゃない。

 それなりの性能がある機種にしてくれないとこっちも困るんだし、その辺チェックはしておかないと」

「……ばれてるし」

 思わず視線をななめ下に逃がして舌打ちをすると、遊木が派手にふき出す。

「あっはっはっ。やっぱそれ狙いだったんだ? でも、何もわざわざ旧世代機に変えなくてもいいと思うよ? だいたい、有樹さんの使ってるの機種、もう正規ショップだと旧世代機なんて買えないと思うし」

「……まぁ、それもそうですね……」

 有樹の使っている機種は国産機種ではなく、虫食いりんごで有名な海外メーカーの機種だ。出不精な有樹が修理にはわざわざ直営の修理センターに持ち込まなくてはいけないという面倒な機種にしたのかというと、たまたま以前使っていた携帯電話が壊れた時、キャンペーン中で本体代金が一番安かった、というどうしようもない理由だったりはする。

「そういえば遊木さんは普通のスマートフォンですよね。なんか、こっち使ってそうなイメージがありますけど」

 スマートフォンが普及し始めた頃にもっともシェアを持っていた機種でもあるので、オンラインゲームをやりこんでいる遊木はその頃に手を出していそうなイメージがあるのだが、実際には国内メーカーの物を使っている。

「あぁ、これ、親父の会社の製品だから。さすがに経営者一族が他社のもの愛用してるとかまずいし」

「……あぁ、なるほど」

 まったく予想していなかった理由を聞かされ、有樹が手を打つ。

 確かに平社員ならともかく、経営者一族が他社製品を使っていては自分達の製品がそちらに劣ると認めるようなものになってしまう。

「そんな訳で、俺としてはこの機会にこのシリーズに乗り換えて欲しかったりするけどね」

「いや、私無関係な他人ですし?」

「ほら、社員割引効くし?」

「……うっ」

 何を狙っているのかわかりにくい勧誘だが、割引と言う響きに小市民の有樹がうなる。

 安く買えるならそれに越した事はないのだが、基本となるソフトが違うので乗り換えとなるとアプリの引き継ぎが非常に面倒くさい。果たしてそこまでの価値があるか、悩ましい問題に頭を抱える。

「というか社割を理由に格安提供されそうで、嫌なのでお断りしますっ!」

「あ、ばれた?」

 断ってしまわないと誘惑に負けそうな気がして断言すると、遊木が悪びれる様子もなく笑う。

「市販前のモニターテスト中の機種があるの思い出したからさ、金額が気になるならそれを使用感の報告してもらう代わりにただで提供しようかな、って思ったんだ」

「……そんな機種を使ってるなんて、理由を周りに聞かれたら困るので本当に勘弁してください」

 ため息をついたものの、内心では発売前の機種を使えるというのにぐらついたのはここだけの話である。

お読みいただきありがとうございます♪

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