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打ち合わせ色々。

「何があったのか、話してもらえる?」

 こちらも表情を険しくした遊木にうながされ、有樹は少し考えるような間を取った。

「はっきりと言えるのは、私が階段から落ちた時、背後に――確実に私を突き飛ばせる位置に人がいた事、その人が何か言っていた事、私が倒れてる横をけっこうな勢いで走り降りて行った女性がいた事、くらいです」

「つまり、後ろから突き飛ばされて相手の顔は見てない、そして現場にいた人間が逃げる速度でいなくなった、ってわけか」

「まぁ、単に急いでいただけ、という可能性もありますけどね」

「だとしても、人が突き落とされるのを目撃して何もせず走り去る、ってなると、犯人でなくとも後ろ暗いところがあるとしか思えないねぇ」

「もしくは面倒事に関わりたくない至極日本人的な日本人であった、とか?」

 余程腹を立てているのか、疑わしい者は全て犯人と決めつけ、話を進めようとする遊木をたしなめるように発言をすると、軽くにらまれてしまった。

「有樹さんは相手をかばいたいの?」

「いえ。ただ、今の段階ではあくまでも推定犯人でしょう? 限りなく黒に近くても、確証がない以上はグレーです」

「それはそうだけどっ」

「それに、警察に話していない以上、あまり踏み込んだ発言はしたくないんですよ」

「……は?」

 小さく肩をすくめるふりをすると、遊木が間の抜けた声を上げた。せわしくまばたきをした後、今までとは違う理由で眉をよせる。

「……警察が来て、事情聞かれたんだよね?」

「はい」

「突き落とされたらしい、って話したんだよね?」

「いいえ?」

「……なんでっ?!」

「私、職業だけで見知らぬ他人を信頼していいと思える程、素直じゃないんです」

 満面の笑みでさらりとすごいセリフをはいてみせると、遊木が絶句する。

 何か言おうと口を開いたものの、結局言葉が見つからなかったのか、開いたままの口からはため息がもれただけだ。

「それに、遊木さん絡みとしたら、警察に訴えたとなればややこしい事になるだけの可能性もあるじゃないですか。相手がそれなりの影響力にある立場にいるとしたら、頼るべきなのは見知らぬ他人じゃなくて遊木さんだと思いましたし」

 しれっと言われた言葉の意味がじわじわと脳に浸透してくると、遊木の表情が照れたような困ったような、あいまいな笑みに変わっていく。

 階段から突き落とされる、などというめにあったのに、そこまで考え警察には何も話さない、という選択をするのは並大抵の事ではない。他人から明確な害意をむけられるというのは恐ろしいものだ。こと、暴力を伴えばなおさらである。そんな状況下で冷静な判断ができることに感心するし、頼るべき相手として自分が選択されたのが何よりも嬉しい。

 けれど、有樹が口にしたように彼女に危害を加えられたのは自分のせいである可能性が高い。それを思うと申し訳なくて、複雑な内心がそのまま表に出てしまった、というところだろうか。

 もっとも当の有樹は、なんか照れてるのかな、程度にしか感じていないのだが。

「本当、君の肝のすわりっぷりはすごいなぁ」

 ずいぶんと感心したような遊木の声に有樹は微苦笑で首をふった。

「小心者で心配性だから、あれこれ考えすぎるだけですよ。――ひとまず警察には、階段から落ちた前後の記憶が少しあいまいで、誰かいたような気はするけど、突き落とされたのか自分で転んだのか断言できない、とだけ言っておきました」

「そっか。匠君の話だと、警察は有樹さんが突き落とされたのを目撃した、って通報の真偽を確かめに来たんだし、そういう聞き方してきたんだね?」

「はい。最初、むこうは階段から落ちた時の事を聞きたい、としか言わなかったんですけど、なんでそんな事をわざわざ確かめに来たんですか、って切り返したら、不審な通報があった話をしてくれました」

「なるほどねぇ」

 目撃者がいなければ、有樹が突き落とされたと申し立てない限り今回の件はただの事故でしかない。彼女が警察の登場を不自然に感じるのは当然の事だ。そして、警察側としては有樹に通報者の心当たりがある事を期待した面もあるだろう。

「なので、通報者に関しては、心当たりがない、って言っておきました。知り合いならそんな回りくどい事しないで駆けつけてくれるだろうし、ストーカー被害も受けてないから、って」

「確かにそうだね。じゃあ、特に不審に思われた様子はなかった?」

「ないと思います。一応、何か思い出したら連絡してくれとは言われましたけど、一人はくだらない仕事言いつけられて不満たらたら、って感じでしたし、もう一人は女性の病室って事でついてきただけの事務職の人みたいでしたから」

 こちらから調べて欲しいと言わなければ事件にはしたくなさそうでした、と訪れた警官に抱いた印象を締めくくる。

 渡した情報をどう判断したのか、遊木は一つうなずく。

「あ、一応名刺もらっておきました。ええと、確かそこのサイドテーブルの上か、引き出しに入ってると思います」

「これかな? 撮影させてもらっていい?」

「そのためにもらったものなので、持って行ってもらってもかまいませんよ?」

「ありがとう。でも、もらった以上手元にないのもまずいと思うから」

 有樹としてはなくても困らないものだが、その辺の扱いは営業職である遊木の判断の方が正しいだろう。忠告を受けいれて、名刺は捨ててはいけない物に分類する。少なくとも今回の件が解決するまでは処分しない方がいい。

 遊木がスマートフォンで名刺を撮影し終わるのを待ち、会話を再開する。

「まぁ、通報者はたぶん、遊木さんか弘貴(ひろたか)さんの関係者でしょう?」

「俺が手配した警備ではないね。たぶん弘貴さんじゃないかな?」

 最初からその可能性を考えていた有樹の確認に、遊木が返す。有樹の自称婚約者はあれで案外過保護のようだから、遊木と会う前後の様子は確認している可能性が高い。無関係な人間だと思うより、余程確率が高い。

「遊木さんに電話した後、弘貴さんにもメールを入れておきました。来られると迷惑だし、遊木さんに連絡してください、って勝手に丸投げしちゃいましたけど、大丈夫ですよね?」

 やはりさらりとした言葉に、遊木がふき出す。

 遊木と弘貴が個別に動くより、協力した方が話が早いだろうが放って置いたら絶対に協力はしなそうな二人だ。少々強引でも自分がしむけてしまった方が早い、と考えての事だろう。彼女に言われれば弘貴はしぶしぶでも遊木に手を貸してくれるに違いない。

「なので、通報者に関しては弘貴さんに直接聞いてみてください。遊木さんの許可が出たら病院にならお見舞いに来てもいい、って書いておいたので、たぶん協力的だと思いますよ」

「あっはっは! そりゃいいね。あの人、絶対協力してくれるわ」

 予想外の援護だったのか、遊木が声を上げて笑う。

 前回の顔合わせの様子から二人の仲がいいとは思わなかったのだろうが、これはなんとも、だ。しかも病院になら、という条件がついている以上、彼女の入院中に遊木が求めるものを渡さなければ会う機会を逃す事になる。期限を切ってあるだけでカードの価値が数倍かそれ以上に跳ね上がった事に有樹は気付いているのだろうか。

 そんな事を考え、すぐには収まらない笑いをかみ殺している遊木を見て、有樹も笑う。

「私としても犯人はさっさと捕まえて欲しいんで、二人が協力してくれた方がありがたいですから」

「なるほど、ね。――ところで、有樹さんとしては自分で転んだんたと思う?」

「自分で転んだならこんな怪我しませんよ」

 そう言って有樹がため息をつく。

「故意か偶然かはともかく、背中を思い切り押されたのは確かです」

 そう前置いて、有樹は事件当時の記憶をたどる。


――――――――


 その日、珍しい事に飲み会に参加して遅くなった有樹は、普段より数時間遅い電車に乗っていた。飲み会の席自体は嫌いではないが、親しくもない人間に酔った姿を見せるのが嫌い、という理由で彼女は一滴も飲まなかった。昨今、バスがなくなるから地元の駅から運転する、といえば強く勧められる事もないのでありがたい。

 地元の駅は各駅停車しか停まらない小さな駅だからか、ホームで立ち止まってのびをしている間に人がいなくなってしまう。

 人混みの中を歩くのがあまり好きではない有樹にとっては願ったりの状態だが、人気の少ないホームというのはどこか薄気味悪い。

 足早に改札へと続く下り階段にむかう途中、場に不似合いな質の良さそうな――つまるところぱっと見でわかる程高そうなコートを着た女性をが視界に入ったが、有樹は特に気にもとめなかった。ホームですれ違うだけの人間など、ほとんど風景の一部と変わらない。

 ちょうど階段の降り口近く、進路上にいる高そうな障害物のわきを通りすぎた時――。

「――――のよ」

 はっきりとは聞き取れなかった言葉に、声かけられたのかも知れないと思った次の瞬間、上半身に来た衝撃に体が傾ぐ。丁度体を支えていた右足は、予定外の勢いを支えきれずに砕けた。そのフォローにと次の一歩を踏み出す形で前に出た左足も、しかし、体勢が崩れて重心が前にずれてしまったせいか、勢いを殺しきれなかった。

 ただでさえ有樹の制御下にあるとは言い難い部分のある右足は、立ち直れず砕けたまま。そのまま硬いホームに転ぶ――事にならなかったのは不運だった。

 有樹が倒れこもうとするその先にはホームは存在せず、下り階段が口を開けてる。

 うっわ、階段転げ落ちとか勘弁っ。

 そして、頻繁に転ぶだけにもはやリカバリーがきかないと悟った有樹の思考は、どこかずれていた。


 転んで露骨に怪我をした――それも確実に通院が必要なレベルに違いないとわかる痛みにうめきながらも、階段に倒れたままの有樹はかたわらをかけ降りていった相手を観察する事は忘れなかった。

 痛みが過ぎて吐き気がするほどだったので現実逃避もあっただろうが、高そうな上みがきあげられたピンクのパンプスはとても通勤用には思えなくて印象に残ったというのもある。

 それに、こんな状況で気を失うのが危険なのは想像がついた。各駅停車しかとまらない小さな駅で通勤時間を過ぎているとなれば、次の電車が来ても誰もこの階段を使わない可能性もあるのだ。自力で助けを呼ばなければ、と悠長に気絶する余裕もなければ、幸いにして怪我自体も意識を持っていかれるほどではなかったのだろう。

 しかし、病院に運ばれ一通りの検査が終わって、駆けつけてくれた家族の顔を見たとたん、緊張がゆるんでしまったのはしかたがないだろう。鎮痛剤の影響もあったのか、うつらうつらしては目を覚ます、というのを繰り返していて、遊木との約束を思い出したのも、家を出る時間を知らせるアラームがなってからの事だった。


――――――――


「とまぁ、だいたいそんな感じでした」

 長くなった説明をそう締めくくると、有樹は遊木の方をむいて頭を下げる。

「連絡遅くなってごめんなさい。ずいぶん待たせちゃいましたよね」

「いいよ、そんな事。匠君からも少し聞いたけど、大変だったんだから緊急度の低い予定なんてすぐに思い出さなくて当然だよ。――でも、そうやって気にしてくれたのは嬉しいや。ありがとう」

 謝罪を笑顔で受けた遊木の言葉に、有樹の頬に朱が登る。確かに、相手が遊木であろうとなかろうと他のタイミングで思い出した可能性は低い。直後の来客といい連絡できない理由があったのも事実だが、それでも遊木が事情をくんで気にしないと言ってくれたのだけでも充分ありがたい。それなのに、続いた言葉はけっこうな反則だ。

 有樹にとって、遊木がごく当たり前にしめす厚意はなんとも心臓によくない。嬉しいのだが対処に困る、というのが正直なところだ。

 こういう人だから面倒な人にまで好かれちゃうんだろうなぁ。

 自分が自称婚約者からどう思われているのかなどまったく知らない有樹が、同じ感想を目の前の男に感じるのだから面白い。

 ただ、面倒な人、に自分も含めてしまっているのには無自覚なあたりは業が深い。

「そういえばさ、仕事は大丈夫なの? 入院、長くなりそうなんだよね?」

「あ~……。たぶん、一部で阿鼻叫喚だと思いますけど、どうしようもないので休みます」

 有樹自身も心配していたが、どうする事もできないので芸のない返事をする。せめて歩けるようにならなければ通勤は不可能だし、有樹のデスクは二階にあって、階段の上り下りが必須という悪条件が重なる。そもそも一ヶ月という入院期間も、入浴やトイレの他、自室が二階なので上り下りの問題もあっての事だ。

「つまり、生活面――主に移動の面での介助があるなら、もう少し早く退院できそうなんだ?」

「今朝聞いた限りでは、そういう話でした」

「なるほど。――じゃあ、俺が手配する、って言ったら有樹さんは嫌かな?」

「……はい?」

「だから、着替えとか移動の手伝いなんかのための人員を、俺が手配したら嫌?」

「金銭的な意味で遠慮させて欲しいですねぇ」

 紹介するからヘルパーを雇ったらどうだ、という意味に理解した有樹が苦笑いで応じると、遊木が頭をふる。

「そうじゃなくて、経費は俺が――っていうか、責任持って犯人からふんだくるから、警備を兼ねて人を側に付けさせて欲しいんだ」

「そこまで大げさな問題ですか?」

「この位最小限の処置だよ」

 予想外の申し出に首をかしげると、応じる遊木が苦笑いになる。

「有樹さんの感覚だと警備なんて大げさにすぎる、って思うのもわかるよ。でもね、犯人は十中八九、俺が君と親しくするのが面白くない人間だから、うちにけんか売ったらどうなるか、しっかり思い知らせてやらないと他の家族の周りも危険になるんだ。だから、迷惑なのはわかるけど譲ってくれないかな?」

「つまり、私だから、じゃなくて、遊木さん達家族と親しい人間が危害を加えられた時の対処マニュアル通り、という事です?」

「そういう事になるかな」

 遊木の返事に有樹は考え込むように眉をよせる。

 警備はともかく、ヘルパーをただで雇えるのはありがたい。入院していればなんだかんだ来てもらうようで家族に負担をかける。家に他人がいるのは多少落ち着かないだろうが、それを差し引いても恩恵がある。

 通勤だって付き添ってくれる人間がいればいくらか早く再開できるだろう。

「……でも、犯人から経費を徴収できなかった場合はどうなるんです?」

「その場合はうちでかぶるよ。そもそも、俺達と関わったせいで被った被害だし、仮にそうじゃなかったとしてもこっちの都合でやらせて欲しいって頼んだ事なんだから、お金を請求したりしないよ」

 笑って応じる遊木に、しかし有樹は眉をよせたままだ。

「なら経費の問題は棚上げするとして……。でも、会社にそういう人がついたと知れるといらない誤解を受けそうで怖いんですが……」

 自分の金銭でヘルパーを雇ったとなればそれだけの余裕があると思われるし、加害者が雇ったといえば事件に巻き込まれた、と尾ひれのついた噂になるだろう。さりとて知り合いが、などと言ったら余計ややこしくなるのは目に見えている。

「あ~、そっか。そういう問題もあるかぁ」

 有樹の懸念を聞かされ遊木が頭をかく。確かに、人ひとりを雇うとなれば相応の金額が動く。その出どころは興味を引かずにいられないだろう。

「この件の詳細は持ち帰りでいいかな? 正直、俺が考えるよりもその辺の対処になれてる人達に相談した方がいい案が出そうだし」

「はい。あ、あとうちの親になんて説明するかっていうのもついでに考えてもらっていいですか?」

「了解。確かに俺、有樹さんの家族からしたら得体の知れない男だもんなぁ。何かきちんとした説明をしないとまずそうだ」

「というか、いきなり警備をつけたいとか言われたら、一体どんな凶悪事件に巻き込まれたか、って心配になると思うんですよね。でもなんか、熱のせいかそういう細かい事考えるのがおっくうで」

 だるそうにつぶやいて有樹がペットボトルのお茶をあおる。しばらく体を起こしていたせいか軽いめまいがする気がしてきた。眉間をもみたいところだが、右手はそんな事ができる状態ではないし、左手はふさがっている。なんとなくペットボトルを持つ手に軽く力を込めては緩めるのを何度かくり返す。

「あぁ、持つよ。貸して?」

 何気なく手を差し出され、左手に持っていたペットボトルを遊木に渡す。そのまま空いた手で存分に眉間をもんでからふと気づく。

「……私、口に出しましたっけ?」

「ん? いや、口には出てないよ。でも、なんとなく? ちょっと疲れてきたのかな、と思ったから。ベッド倒さなくて平気?」

 何でもない事を言う口調で言われ、有樹は目をまたたく。あまり不調が表に出ない方だと思っていたのだが、なぜ遊木は気づいたのだろう。

「有樹さん、疲れてくると必ず手をグーパーしてるの、気づいてた?」

「……え? そんな癖ありました?」

「うん、あるんだよね。――というわけで、ばれてるんだから無理しないで。横にならなくて平気?」

 笑顔での種明かしに有樹は苦笑するしかない。確かに、仕事中にしても手芸をしている時にしても、手と目を酷使しがちなので指や肩、首をほぐす動きは意識的にもしている。けれど、無意識にまでやっていたのには気づいていなかった。

「返事してくれないと勝手に倒しちゃうよ?」

 少しばかりいたずらっぽく言われ、有樹は慌てて同意する。すると待ち構えていた遊木がベットを水平に戻した。

「怪我人はおとなしく回復に努めてくれないとね。匠君と約束したから誰か来るまでいるけど、疲れて来たなら遠慮しないで眠っちゃって。それに、院内にうちの警備がいるから安心してて大丈夫」

 先手を取った提案に有樹は少し悩んだものの、結局は甘える事にする。今無理をしたら体調が悪化するのは目に見えていたし、昨夜から頭の隅に引っかかっている、犯人がまた現れたら、という不安と痛みのせいであまりしっかりは眠れていないのだ。

 けれどそんな不安を見越していたらしい遊木の言葉に緊張の糸が切れたのだろう。疲れたとは思っていたが、唐突に襲ってきた眠気にあくびをもらす。

「寝ちゃいなよ。俺も久々にアプリやり倒せて楽しいし」

 笑い混じりに言いながら立ち上がった遊木が窓に近づきカーテンを引く。そして、さっき匠が使っていた枕元から離れた椅子に腰を下ろすと、スマホを取り出して落ち着き込む体勢になった。

 何よりも雄弁に、寝ろ、と示された有樹の口元がゆるむ。自分に気を遣わせないためだろうが、こうして先に落ち着きこまれてはおとなしく寝るしかない。

「おやすみ、なさい」

「うん、おやすみ」

 くすぐったいような気分でつぶやくと返事を聞きながら目をふせた。

お読みいただきありがとうございます♪

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