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06:笹道の入学式、前編

感想とブックマーク25件、ありがとうございます!

今回は黒髪の跳ねた彼視点です。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 僕の名前は笹道(ささみち) 冬喜(とうき)

 (よろこ)びの中、冬に産まれたからという安直な名前ではあるが、気に入っている。

 ついに僕は今日から、どこにでもいる普通の高校生男子だ。

 僕が今日から通う私立福余高校はおもしろい生徒や教師が沢山いるらしい。まず、入学試験のうちに雑談試験なるものがあり、とても驚いた。試験官の小太りの男の人が「きみは、苦労しそうだなぁ」と言っていたのが妙に気にはかかったが。



 制服を着て鏡の前へ。特に変わったところのない顔に、軽く跳ねた黒髪で学ランを来たピカピカの一年生だ。期待が昂まり意味もなくスキップしてみる。


「兄さんなにしてるの……」


 妹に見られた。少し恥ずかしかったが、まぁいいや。スキップはやめない。


「今日から高校生になるからな。ワクワクしてるんだ」

「スキップやめて。あと、楽しみなのはいいけどもう時間だよ」

「あっ、ほんとだありがとう小夏(こなつ)。じゃ、行ってくる」

「いってらしゃい。って! スキップやめて!」


 荷物を持ち、リュックを背負って家を出る。スキップの楽しさに魅了されつつあるが、朝っぱらから危ない男になりたくはないので自重した。

 

 家から近くの駅まで歩き、電車に乗って学校近くの駅に。その駅から学校は歩いて数分という嬉しい近さなのだ。



 現在、学校最寄りの駅から学校に向かって歩いている。

 信号が赤になったので周囲を見回して見る。


 ……何か悪い企みを心に秘めた風の笑顔をした男子生徒と目が合った。

 濃いネズミ色の髪をした彼は、愉快なことでも思いついたかのように笑みを深めた。ひょっとして、目をつけられた?! やばいよ……なんだあの悪そうな人……」


 信号が青になり、黒いロードバイクで走り去っていく彼の姿は僕にとっては死神そのものだった……。心なしか、笑みを浮かべた彼の周りの空気が暗くなったように見えたのは、僕の先入観だろうか。


 学校が近づくにつれて竹林が目に付く様になった。

 ざわざわと揺れる竹は僕の心を不安にさせた。が、校門の横に立っていた教師の


「おはよう!元気だせ!」


 という言葉で僕の不安は吹き飛んだ。僕は「ありがとうございます!」と返事をして、高校生活の記念すべき第一歩を踏み出すことができた。いい先生だ。


 校門を通ってすぐ左に駐輪場がある。近くに生徒会の腕章をつけた女子の先輩が立っていたが、様子がおかしい。まだ時間もあるし、心配だから声をかけてみた。


「あ、あの顔色が悪いですけど大丈夫ですか?」

「は、はい。心配してくれてありがとう……やっぱ、顔色が悪いですか?」

「なんか、青褪めてる感じです。……やっぱ? 何かあったんですか?」

「はい。実はさっきここでとても胡散臭い笑顔の新入生と話したんですが……」


 それはきっと、信号で見かけた彼の事だろう。僕にしては珍しく自信があった。というか、浮き足立った感じが無かったからてっきり上級生かと思ってた……。


「ひょっとして、濃いグレーの髪の男子ですか?」

「は、はい。それで、見るからに何か企んでるその人に、悪いことしないでくださいって言ったら……バカにしたように『はい?』って言って……」


 あの男にそんな事を言えるなんて、きっと学校が好きなのだろう……


「先輩、無理して話さなくても……」


「いえ、頑張って最後まで教えてください」


 いつのまにか近くに、生徒会の腕章をつけた和風の黒髪美人が立っていた。


「か、会長……。分かりました、頑張ってみます」

「え? 生徒会長ですか?」

「えぇ、生徒から金折(かなおり)さんが具合悪そうだからと聞いて来たのですが……新入生くん、金折さんを心配してくれてありがとう」

「い、いえそんな……え、えっと先輩。『はい?』のあとどうなったたんですか?」


 美人にお礼を言われるのは照れくさい、早く話題を元に!


「え、えっとたしか、『私は何もしません』『中学でも処分を受けたことはない』って……」

「あぁ……」「それは……」

「先輩、それって多分、私()何もしないで人にやらせるって事ですよね?」

「たぶんそうね……中学で処分を受けたことがないのは、自分の手口に自信があって、処分できるものならしてみろ、ということでしょうか……」

「は、はい。私もそう思って名前だけでも聞いておこうと思ったのですが、急に聞いたら怪しまれそうで私から名乗りました。彼は一紙 氷野(ひの)という名前だということは分かったんですが……」

「金折さんの名前も知られてしまったと、」

「はい」


 すごい勇気だ。僕ならきっと直ぐに話を切り上げて、逃げるだろう……。


「一紙 氷野ね、ありがとう金折さん。ちょっと調べてみる。そういえば、一紙って女子剣道部の主将と同じ苗字よね」

「まぁ、一紙 夕娘(ゆうこ)さんとは関係なさそうですけどね……」


 その後少し会話して、時間もおしてきていたので下足箱に急いだ。



 クラス表で、同じ2組に一紙という苗字を見つけた僕は、終わった……と呟いた。僕のワクワク高校生ライフはいったいどこに……。

 

 

 




読んでくれてありがとうございます。

次回は、日曜までに書けたらいいなぁ……。


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