04:入学式
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次話は木曜までに。
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さて、私は今、大勢の新入生と共にパイプ椅子に座り、体育館で入学式の開始を待っている。どこを見ても新入生がソワソワしていて、体育館の空気は期待とか不安とかいった初々しいもので溢れている。特に僕の両隣に座っている2組の1番さんと3番くんなんて、ソワソワどころか……ガタガタ……。うん、私のせいだね……。
おぉっと!入学式が始まるみたいですよ!
まずは校長先生の挨拶から。一体どんな人だろうと目を凝らすと……あれ? なんだか見たことがあるような気が…………はっ! あの雑な感じの空気を纏った小太りの男は、間違いない、試験官のおじさんだ!
そう、雑談試験の日に生徒会長がこわいと愚痴をもらしていたダメそうなおじさんが、実は校長先生だったなんて……まあ、教師だろうくらいは思っていたけどまさか、である。というか、校長が会長コワイっておかしくないか?
「はい、皆さんご入学おめでとうございます。福余高校の校長をやってます田軒です。在校生にはたぬきと呼ばれていますね。えーと、悪いことはあんましないでね。ーー以上です」
短っ! 、雑っ! それでいいのか校長先生?
……なんだろう、元から冷たい体育館の気温がより下がったような?
「つ、次は、生徒会長挨拶です」
なるほど。生徒会長であるらしい彼女が、凍てつくような視線を校長に送っていた。会長は凛々しい和風の乙女という外見をしていたが、今はニコニコとしながら冷気を放っている。こわい。駐輪場で生徒会の金折先輩が、会長がいるから悪いことは出来ないと言っていたのも納得の怖さです。
とはいえ、私のように年がら年中人を怯えさせるという事もないだろう。どうやら校長の挨拶は会長的にもアウトだったらしい。
会長が演台に立つと同時に冷気が止んだ。オンオフ機能すごい。
「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。生徒会長の冴前 銀です。若葉の芽吹きを感じる今日の日に新入生150名を迎えられたことを大変嬉しく思います。さて、本来私の仕事ではありませんが、校訓と重要なことを少し説明させていただきます」
校長の仕事だったんだろうなぁ……。お疲れさまです。
「本校、私立福余高校は今年で創立45周年を迎えます。校訓は『七転八起』、何度つまずいても諦めずに頑張ってほしいという思いがあります。本校の校歌は福余高校創立時の先輩方が作られた歴史ある歌です。ぜひ、覚えてくださいね。また、本校の食堂の料理はとてもおいしいので、一度行って見てください。本校には三年間クラス替えがないので、時間をかけて交流を深めることができます」
食堂かぁ、姉さんが裏メニューがどうとか言ってたような……。
「いくらでも紹介はできますが、後は自分の目で確認してください。さて、私が皆さんに言いたいことは一つ。皆さんには良識を持って、三年間の高校生活を思う存分謳歌する権利があります。ぜひ、有意義な三年間を過ごしてくださいね。ーー以上です」
なんだか頑張ろうという気になった。しかし、校長が職員席で怯えているのが気になって仕方ない。ん? 今、生徒会長が校長の前を通り過ぎざまチョップかましたような……。まぁ、多分見間違いだろう。校長が頭抑えてるのも見間違いに違いない。
このあとは校長の頭を心配しながらなんとなく聞き流していたのだが、一年生の担任紹介が始まったので意識を向ける。1年5組までの担任5名と学年主任1名の計6名が私たちの前に並んだ。
学年主任の紹介は普通に終わったのだが、担任の教師はランダムに並んで、担当のクラスについては言わず自己紹介をした。誰がどの組の担任か分からなくしているらしい。なるほど、確かにおもしろい考えだ。
……問題なのは今朝校門の横に立っていた筋肉がそのうちの1人だという事だ……。どうやら数学の教師らしいが知ったことではない。とにかく、2組の担任でないことを祈る。クラス替えがない以上、担任も3年間基本同じだろう。まぁ、確率は五分の一だし心配することもないか……。
緊張の瞬間。5組はサラリーマン風の教師だった。なぜ逆から発表する! これで四分の一。 4組はおばあちゃん先生だった。これで三分の一。 3組は若いイケメン。……これで二分の一……。 2組は……
筋肉だった。
筋肉。






